映画『ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~』レビュー
映画『ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~』

映画『ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~』

豪華絢爛な食材と華麗なる調理の映像美に目を奪われ、
門外不出の伝説のレシピがつむぐ壮大な愛の物語に心を奪われる!

《ストーリー》  

「一度食べた味は決して忘れない」 孤高の天才料理人・佐々木充(二宮和也)は、かつて自らが主宰した創作料理レストランの借金を返済するために“人生の最期に食べたい料理”を忠実に再現し、依頼人から破格の報酬を受け取っていた。孤軍奮闘で必死に仕事を続ける充。レストランで共に料理を創り充の幼なじみでもあった柳沢健(綾野剛)から、二人の恩人の訃報を知らされても葬儀に顔を出すことはなかった。そんなある日、充の元へ一本の電話がかかってくる。「仕事を頼みたいから、北京まで来てほしい―」突拍子もない依頼に戸惑いながらも、充は中国へ渡った。そこで受けた依頼は、贅の極みを尽くした料理・満漢全席をも上回る幻のレシピの捜索と再現であった―

【画像】映画『ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~』

《みどころ》 

料理を題材に扱った日本映画は意外と多い。『かもめ食堂』(2005年)や『南極料理人』(2009年)など…これらの映画の欠点は、汁も滴るような数々の料理がそのまま大迫力のスクリーンに描かれているため、観ている人たちは上映中ずっと空腹感に耐えながら観賞しなければいけないことだ。そんな名料理映画(?)にまた一つ至高の一品が誕生した。数々の新鮮な食材から始まり、それを調理する所作、そして完成した一品一品の料理まで…観ている人の胃袋と心を掴んで離さない、珠玉の映像美が堪能できる作品だ。それもそのはずで、料理界の重鎮・服部幸應が全面協力を行い、一皿一皿丁寧に監修を行っている。ちなみに原作を書いた田中経一氏も料理に所縁が深い方で、その昔料理バラエティ番組「料理の鉄人」で演出を手掛けた経歴を持つ人だ。

【画像】映画『ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~』

そして要である監督をつとめたのは映画『おくりびと』(2008年)で世界にその名を轟かせた滝田洋二郎。『天地明察』(2012年)以来、久しぶりにメガホンをとった意欲作だ。料理映画の枠から飛び出し、壮大な年月を経る大河ドラマへと昇華させた手腕はさすがといったところ。随所に滝田組らしいほのかな優しさと人情と愛が感じられる作品となっている。

バラエティ豊かなディレクション・スタッフに対し、キャストも負けていない。本作は、現代と戦時中の二つの時代を行き来する、いわば時空のクロスオーバー作なのだが、キーとなる食の名匠に、現代に二宮和也、過去に西島秀俊という重厚な配置をとり、まさに万全の布陣で臨む。二人の猛々しくも繊細な調理姿に、ある時は魅せられ、ある時は酔いしれることだろう。脇を固める配役も前述の綾野剛はじめ、宮﨑あおい、竹野内豊などそうそうたる名前が連なる。大日本帝国陸軍が権勢をふるった1930年代から戦後の混乱期を経て現代まで、スケール感あふれる舞台に相応しい個性派が激動の時代を盛り上げてくれる。

【画像】映画『ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~』

日常ではお目に掛かれないような豪勢な料理を目で楽しみながら、その裏に隠された哀しみと優しさが交錯する物語。幾歳の時を経て明らかになっていく真実の愛を、是非心で味わってほしい。

[ライター: 藤田 哲朗]

© 2017 映画 「ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~」 製作委員会 © 2014 田中経一/幻冬舎

映画『ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~』予告篇

https://www.youtube.com/watch?v=mJfQ0JOePFU

映画作品情報

映画『ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~』

出演: 二宮和也、西島秀俊、綾野 剛、宮﨑あおい
西畑大吾、兼松若人、竹嶋康成、広澤 草、グレッグ・デール、ボブ・ワーリー、大地康雄、竹野内豊、伊川東吾、笈田ヨシ
 
監督: 滝田洋二郎 
企画: 秋元康 
原作: 田中経一(幻冬舎文庫) 
脚本: 林民夫
2017年 / 日本 / カラー / 126分
配給: 東宝
日本公開日: 2017年11月3日
© 2017 映画 「ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~」 製作委員会
© 2014 田中経一/幻冬舎
 
全国東宝系にてロードショー!
 
映画公式サイト
 
公式Twitter: @lastrecipe

この記事の著者

藤田 哲朗映画ライター・愛好家

大手出版取次会社で20代後半より一貫してDVDのバイヤー/セールスの仕事に従事する。
担当したクライアントは、各映画会社や映像メーカーの他、大手のレンタルビデオチェーン、eコマース、コンビニチェーンなど多岐にわたり、あらゆるDVDの販売チャネルにかかわって数多くの映画作品を視聴。
プライベートでも週末は必ず都内のどこかの映画館で過ごすなど、公私とも映画づけの日々を送っている。

この著者の最新の記事

関連記事

カテゴリー

アーカイブ

YouTube Channel

【バナー画像】日本アカデミー賞
ページ上部へ戻る