- 2016-11-30
- ヴェネツィア国際映画祭, 映画レビュー, 映画作品紹介, 第29回 東京国際映画祭
映画『ビッグ・ビッグ・ワールド』
(英題:Big Big World / 原題:Koca Dünya)
あまりにも大きくて、小さな世界へ
青年アリは、離れて暮らす妹を気にかけるが、里親が会わせてくれない。業を煮やしたアリは妹の奪回を企み、極端な行動に走る…。
2013年の第26回東京国際映画祭に同時出品された前々作『Jin』(ワールドフォーカス部門)、前作『歌う女たち』(コンペティション部門)に続き、第29回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品されたトルコの鬼才監督レハ・エルデムの新たな傑作『ビッグ・ビッグ・ワールド』(英題:Big Big World / 原題:Koca Dünya)を紹介する。
“画が綺麗だ” と、観た人はまず思うだろう。後半の森のシーンは言うまでもない。
しかし冒頭から続く夜の街並みも、それに負けないほどに儚くも美しく映る。まるでその闇に浮かび上がる夜景の向こうに、求めている世界が続いているかのような、そんな美しい光を捉えている。
その闇の中をひとりバイクで走る主人公のアリを空から捉えつつ夜空が映り、そのままタイトルバックに繋がるカットは、思わず息を飲む美しさがある。
監督のレハ・エルデムは、2010年に第23回東京国際映画祭の「アジアの風」部門で特集(躍進トルコ映画の旗手 レハ・エルデム監督全集)が組まれたこともあり、過去作品すべてが東京国際映画祭で上映されている気鋭の監督。過去作に度々出てくるの描写の美しさ、その繊細さにも定評がある。
今回の『ビッグ・ビッグ・ワールド』は、狭い世界から広い世界への逃避行。そんな物語だと思う。
主人公のアリはバイクで移動する。故障してもそ森れを修理する技術を持っている。
だからこそなのか、そのバイクが動く限りどこまでも行くことができると、そう思っていたのだろうか。
しかし、アリが避難した森の中は二人の少年少女が生活するには過酷な環境。逃げだすはずの世界は皮肉なことに次第に小さくなっていき、心の拠り所は自分の内面へと向かっていく。
“ルーツの喪失感”
この物語のテーマともいえる、現代社会でも誰もが持ち得る問題を、監督がどう切り取ってみせるのか是非確かめてもらいたい。
第29回 東京国際映画祭(TIFF) コンペティション部門
映画『ビッグ・ビッグ・ワールド』記者会見
コンペティション部門 『ビッグ・ビッグ・ワールド』 記者会見
Big Big World [ Koca Dünya ] Press Conference
■開催日: 2016年10月31日(月)
■会場: TOHOシネマズ六本木 スクリーン6
■登壇者: レハ・エルデム(監督/脚本/編集)、オメル・アタイ(プロデューサー/プロダクション・デザイナー)
映画『ビッグ・ビッグ・ワールド』(Big Big World) 予告篇
映画作品情報
第29回 東京国際映画祭(TIFF) コンペティション部門 出品作品
英題: Big Big World
原題: Koca Dünya
プロデューサー/プロダクション・デザイナー: オメル・アタイ (Ömer Atay)
撮影監督: フロラン・エリ (Florent Herry)
音響監督: エルヴェ・ギヤデール (Herve Guyader)
主題歌: ニルス・フラム (Nils Frahm)
出演: ベルケ・カラエル、エジェム・ウズン、メリサ・アクマン、ムラト・デニズ、アイタ・ソゼリ
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