- 2017-7-27
- アカデミー賞, ゴールデングローブ賞, 映画レビュー, 映画作品紹介
映画『ハクソー・リッジ』
(原題: Hacksaw Ridge)
過酷な訓練で、そして苛烈な戦場で、非武装の信念をつらぬいた男!
実話に基づいた感動の英雄物語が今明かされる!
《ストーリー》
時は第二次世界大戦の最中。ヴァージニア州の青年デズモンド(アンドリュー・ガーフィールド)は陸軍へ志願することを決意する。だが、無事入隊を果たした彼を待っていたのは多くの試練であった。
デズモンドは、幼い頃の体験やその信念から武器を持つことはせず、衛生兵として戦場に出ることを望んでいたが、上官や仲間の訓練兵はその姿勢を到底受け入れることができない。事あるごとに、皆から責められ、非難され、いじめ抜かれた。が、それでもデズモンドは断固として銃をとろうとせず、ついには軍法会議にまでかけられる事態となる。懲罰必至のデズモンドであったが、父親のトム(ヒューゴ・ウィーヴィング)の助けなどもあり窮地に一生を得る。
そして、ついに希望を認められ衛生兵としてデズモンドは沖縄のハクソー・リッジへ赴く。そこは、アメリカ軍がなかなか陥落をさせることのできない難攻不落の地で、沖縄決戦の中でも稀にみる激戦地であった。
《みどころ》
ハクソー・リッジとは、沖縄県の前田高地と呼ばれた日本軍陣地のことで、アメリカ軍がつけた別称だ。ハクソーは「弓鋸」という意味で、その戦いがいかに峻烈であったか伺い知れる。
太平洋戦争の末期、日米両軍の大兵力は沖縄に結集し、あちこちで決死の戦いが行われ凄惨を極めた。本作は、良心的兵役拒否者として初めて名誉勲章を受章した実在の英雄の物語だが、同時に“実在した”沖縄戦の苛烈さを知ることもできる。映画後編の大半を占める「ハクソー・リッジ」の激戦は圧巻のひとことだ。限界までリアルに描いた殺戮シーン。何もここまでリアルに表現しなくても…と目を覆いたくなるが、戦争の悲惨さを余すことなく描いてこそ、戦没者へのレクイエムとなり、そして未来の平和につながると考えたのだろうか。創り手の熱い魂が伝わってくるような一本だ。
そして、衛生兵としてのデズモンドの活躍ぶりも凄まじい。軍法会議で認められたとはいえ、戦地に着いてからも仲間から受ける白眼視は変わらなかったが、それをモノともせず、鬼人のような働きで次から次へと負傷者を救う。銃こそ持たないが、戦場の誰よりも彼は強く勇猛果敢であった。人の真価とは窮地に立たされた時こそわかるものだが、デズモンドの一点の曇りもない勇気と良心に友軍の誰もが目を奪われる。名優メル・ギブソンが監督をつとめた本作だが、まさにもう一つの「ブレイブハート」だ。
終戦を迎えてから70年以上経つが、社会の記憶が年々薄れていくことは否めない事実だ。映画とは、大衆娯楽でありエンターティンメントである。皆で楽しむのが基本的な存在意義なのであろうが、時にこうした記憶を呼び起こしてくれる教本にもなってくれる。そのような多様性も、映画の持つ魅力の一つだろう。ぜひ様々な角度から本作を堪能して、そして感じ入って頂きたい。
[ライター: 藤田 哲朗]
映画『ハクソー・リッジ』予告篇
映画作品情報
第74回 ゴールデングローブ賞(最優秀作品賞他3部門ノミネート)
原題: Hacksaw Ridge
配給: キノフィルムズ
2017年 / アメリカ・オーストラリア合作 / 139分 / カラー / PG12
劇場公開日: 2017年6月24日
© Cosmos Filmed Entertainment Pty Ltd 2016
TOHOシネマズ スカラ座ほか全国ロードショー!
公式Facebook: @hacksawridgeJP