映画『キャロル』(CAROL) レビュー
映画 キャロル

映画『キャロル』(原題: Carol) 

美しき50年代、「本当のわたし」はキャロルの愛が教えてくれた

《ストーリー》

舞台は1957年、クリスマスを目前ににぎわうニューヨーク。テレーズ(ルーニー・マーラー)は、高級デパートの玩具売り場で働く平凡な女の子だ。テレーズは、娘のクリスマスプレゼントを買いにやって来たキャロル(ケイト・ブランシェット)を一目見て、その美しさに魅了される。キャロルもテレーズに惹かれ、二人の仲は急速に縮まっていく。同性を愛することが今より遥かに困難だった時代、二人の女性のラブストーリー。

© NUMBER 9 FILMS (CAROL) LIMITED / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2014 ALL RIGHTS RESERVED
 

《みどころ》

この映画は問いかける。「今、あなたは本当の自分を生きていますか?」

1950年代、女性の多くが自分を押し殺し、家庭に尽くすことを強いられた。恋人からの求婚に乗り気でないテレーズは、家と職場の往復、時には恋人や友達との飲み会・・・・・・毎日を繰り返し、ただ何となく生きていた。

そんな時に出会ったキャロルは確固たる自分を持つ美しい女性だった。そんな彼女も復縁を求める夫と溺愛する娘を前に、離婚に踏み切れずにいたのだ。キャロルとテレーズは二人、しがらみから逃れるように期間限定の自動車旅行に出掛ける。道中二人は更に惹かれあい、その関係は肉体的なものにまで及んでいく。

自分を卑下するテレーズに、キャロルが才能とは何かを諭すシーンがある。「才能とはあなたではなく、人が決めるもの。ただあなたは懸命に頑張ればいいのよ」その言葉をきっかけに、テレーズは漠然としていたフォトグラファーの夢に向け自ら一歩を踏み出す。

本当の自分を今、私は生きているのだろうか。その答えは「私らしさ」を愛する人との出会いで、初めてわかることなのかもしれない。

[ライター: 宮﨑 千尋]

© NUMBER 9 FILMS (CAROL) LIMITED / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2014 ALL RIGHTS RESERVED

 

映画『キャロル』予告篇

映画作品情報

第68回 カンヌ国際映画祭 主演女優賞[ルーニー・マーラ]
第88回 アカデミー賞 9部門ノミネート
第73回 ゴールデン・グローブ賞 4部門5ノミネート
 
邦題: キャロル
原題: Carol
監督: トッド・ヘインズ (Todd Haynes)
脚本: フィリス・ナジー (Elizabeth Karlsen)
製作: エリザベス・カールセン (Elizabeth Karlsen)
製作: スティーブン・ウーリー (Stephen Woolley)
製作: クリスティーン・ベイコン (Christine Vachon)
原作: パトリシア・ハイスミス (Patricia Highsmith) 「The Price of Salt(よろこびの代償)」
 
出演: ケイト・ブランシェット (Cate Blanchett)、ルーニー・マーラ(Rooney Mara)、サラ・ポールソン(Sarah Paulson)、カイル・チャンドラー(Kyle Chandler)、ジェイク・レイシー (Jake Lacy)
 
2015年 / アメリカ / 英語 / カラー / DCP / ビスタ / 118分 / 映倫区分 PG12
配給: 株式会社ファントム・フィルム
劇場公開日: 2016年2月11日
© NUMBER 9 FILMS (CAROL) LIMITED / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2014 ALL RIGHTS RESERVED
 

映画公式サイト

この記事の著者

宮﨑 千尋ライター

一番古い映画に関する記憶は、姉と「天使にラブソングを...」ごっこをして遊んだこと。
10代後半でひとり暮らしを始めてから、ひとり映画にどっぷりはまっている。
映画館の独特な雰囲気を好み、休みの日にはミニシアターや小さなカフェで行われる自主上映にも足を運んでいる。

★好きな映画
『天使にラブソングを...』 (Sister Act) [監督: Emile Ardolino 製作:1992年/米]
『アバウトタイム~愛おしい時間について~』 (ABOUT TIME) [監督: Richard Curtis 製作: 2013年/英]
『シックスセンス』 (The Sixth Sense) [監督: M. Night Shyamalan 製作: 1999年/米]

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