- 2015-10-27
- 日本映画, 映画レビュー, 映画作品紹介, 第28回 東京国際映画祭
映画『友だちのパパが好き』
“Je suis folle de papa de ma copine”
純愛は、ヘンタイだ。
《ストーリー》
ごく普通の中年男である主人公の霜崎恭介(吹越満)が、ある日突然、大学生の娘・妙子(岸井ゆきの)の友人であるマヤ(安藤輪子)から猛烈にアタックされる。
霜崎恭介には長年の愛人ハヅキ(平岩紙)の存在があり、結婚生活は破綻しかけていた。自分が入り込む余地がありそうだと感じたマヤは、なにものをも恐れず一直線に純愛を貫こうとする。そして、霜崎家とそれを取り巻く人々を巻き込みながら、まさかと思うような展開で、前代未聞のラブストーリーが繰り広げられていく。
《みどころ》
これまでにはない新鮮なラブストーリーという点で、一見の価値あり。
マヤ役を若手女優の安藤輪子が一途でありながらもあっけらかんとしたキャラクターで演じており、深刻になりかねないストーリーをコメディ風にみせることに成功している。同様に、吹越満が主人公を演じることで、重くなりがちなストーリーをライトなテイストに変化させている。
また、石橋けいが演じる主人公の妻役ミドリのけだるい演技は、終わりかけた結婚生活への喪失感、あきらめや寂しさといったどうにもならない複雑な心もちを如実に表しており、この映画に静かな深みを与えている。
人は、ひとりでは生きられないし、相手を通してでしか自らのことを深くみることも本当の意味で知ることもできない。パートナーは、真の自分を知るためだけでなく互いに成長し分かち合うという意味でも欠かせない存在である。
欠かせない存在でありながら、身近なパートナーシップを継続していくには様々な試練を伴うことが多い。パートナーとの愛が芽生えても、それを互いに育てていき絆を深めていくということをしないかぎり、せっかくのパートナーシップも生かしていくことができない。この映画を通じて、自分とパートナーとの関係やあり方というものを考えずにはいられないだろう。
山内ケンジ監督は、CMディレクターとしてソフトバンクモバイルの「白戸家シリーズ」や「NOVA」などで数々のヒットCMを手がけている。また、劇作家、演出家、映画監督として幅広く活躍されている。映画2作目にあたる本作の脚本執筆の際には、前作『ミツコ感覚』(2011年)での謎めいたシュール感を禁じ手として、万人にわかりやすい映画を目指したという。
[ライター: Takako Kambara]
映画『友だちのパパが好き』予告篇
映画作品情報
第28回 東京国際映画祭(TIFF) 日本映画スプラッシュ部門出品
英題: Her Father, My Lover
監督・脚本: 山内ケンジ
エグゼグティブプロデューサー: 小佐野 保
プロデューサー: 木村大助
撮影監督: 橋本清明
照明: 清水健一
録音・整音: 木野 武
衣装: 増井芳江
ヘアメイク: たなかあきら
編集: 河野斉彦
ユーロスペースほか全国ロードショー!