映画『フロントランナー』
主演 ヒュー・ジャックマン来日記者会見
「話し合うべき議論が必ず生まれる作品!」と熱く語る。
日本での興行収入が53億円を超えた映画『グレイテスト・ショーマン』(2018年/原題:THE GREATEST SHOWMAN)で主演を務めたヒュー・ジャックマンが、2月1日(金)公開の主演映画『フロントランナー』(原題:THE FRONT RUNNER)で約1年ぶりに来日し、1月21日(月)に日本記者クラブで記者会見を行った。
映画『フロントランナー』の監督は、『JUNO/ジュノ』(2007年/原題:JUNO)でアカデミー作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞にノミネートされ(脚本賞をディアブロ・コディが受賞)、『マイレージ、マイライフ』(2009年/原題:UP IN THE AIR)ではアカデミー賞6部門にノミネートされ、ゴールデングローブ賞脚本賞を受賞しているジェイソン・ライトマン。そのジェイソン・ライトマン監督に「控えめでありながら、示唆に富む演技ができるたった1人の役者」ということで今回の主人公ゲイリー・ハート役に白羽の矢がたったのが、ヒュー・ジャックマンだった。
実在の政治家ゲイリー・ハートは、アメリカ史上、最年少の46歳で大統領候補となり当選確実と言われていた。ところが、たった3週間後にマイアミ・ヘラルド紙に報じられたスキャンダルによって、大統領選からの撤退を余儀なくされた。このできごとを描いたのがヒュー・ジャックマン主演の『フロントランナー』である。
《記者会見レポート》
ヒュー・ジャックマンの会見前、タレントのパトリック・ハーラン氏が登壇し、ゲイリー・ハートが大統領選に出馬していた頃、自身が18歳(投票権を得られる歳)でリアルタイムに彼の政策やその人気の高さを直に見ていたこと、自分だけでなく周りの友人や若者たちが皆、若くてかっこよくて、世界を変えようとしているゲイリー・ハートに魅了されていたことを話した。
1984年の大統領選の予備選(コロラド州選出)でゲイリー・ハートがモンデールに破れた際に、予備選でアイオワ州やニュー・ハンプシャー州の小さなところを漏れなく遊説してまわったことが、1988年での快進撃に繋がったことを臨場感あふれる語り口でコメントした。
そのあこがれの人ゲイリー・ハートのスキャンダルが報じられた時の打ちのめされるような衝撃を当時のゲイリー・ハートの写真をバックに語った。
実は、今も昔もアメリカ大統領は代々浮気や不倫、不適切な異性関係、果てはDVで訴えられるなどのスキャンダルがあるけれど、なぜか、ゲイリー・ハートだけが許されなかった、といったことをコメントしつつ、ゲイリー・ハートのスキャンダルの波紋は今も続いているし、自分自身そのときの落胆を今も引きずっているとコメントした。
ヒュー・ジャックマン登壇!
「おはようございます」という日本語でのあいさつでスタートした来日会見。ヒューは記者から質問を受けると「ありがとうございます」と日本語で伝えたうえで、にこやかに、そして真摯に答えていた。サービス精神旺盛だと定評のあるヒュー・ジャックマン、通訳の方のコップにお水を注いであげたり、質問した記者の名前を呼びかけてから答えようとしたり、さりげなくソフトな心遣いをみせつつ、和やかな雰囲気で会見がすすめられた。
—— 今回の役を演じたいと思った理由は?
ヒュー:「ジェイソン・ライトマン監督の作品『JUNO/ジュノ』『マイレージ、マイライフ』『サンキュー・スモーキング』といった映画が大好きなんだ。彼の描く作品のキャラクターは複雑なものが多くて興味深いし、様々な題材の作品にチャレンジされている。それらがとても感慨深い作品だということがまずあったし、この『フロントランナー』のストーリーの魅力にひきこまれて、ゲイリー・ハートという政治家に自分とは違う魅力を感じたし、これまでやったことのない役柄へのチャレンジをしたかったんだ」と生き生きと話した。
自身がジャーナリズムに元々興味があり大学ではジャーナリズムを専攻していたことを交えながら、この作品を観た者が様々な疑問を抱かざるを得ないこと、それに対して答えをだしていないというところも気に入ったということも語った。
—— 存命の実在する政治家ゲイリー・ハートを演じることについて
ヒュー:「ゲイリー・ハート自身が自分の話を語るのではなくて、私が彼になって語るということに大きな責任感を感じて、役に取り組むうえで膨大なリサーチをしました。そのリサーチは資料だけにとどまらず、直接ゲイリー・ハート自身とも話したりして臨んだのです」と忠実な役作りを徹底的にしたことを熱弁した。
—— なぜ、ゲイリー・ハートが多くの国民の心をつかんだのか?
ヒュー: 「ゲイリー・ハートは、当時も今も理想主義者であって若者をインスパイアする才能や技術に長けていたんだ。常に10年先、15年先を見据えた真の変革ができる政治家であったし、スティーブ・ジョブスがまだガレージでコンピューターをつくっていた時代(1981年)に、お昼ご飯を一緒に食べながら「これからはコンピューターが必要な世界になるから、すべての学校の教室にコンピューターを入れるようにしよう」と発言していたり、1983年にはアメリカがあまりに石油に執着していることが中東での戦争を起こしかねないと発言していたりといったことからも、彼は優れた先見の明があったんだ。彼は非常にグローバルで、それがすべての国に影響を及ぼすかもしれない、影響を考えなくてはいけない、というような発言をしていて、もし、彼が大統領になっていたならば、今とは全く違う世の中になっていたと思う」と自身の見解を語った。
—— 表面的には失ったものばかりにみえるが、逆にこの出来事によって彼が得たものはあったと思うか?
ヒュー:「ジョン・F・ケネディの再来とまで言われて期待を背負っていた若きカリスマ政治家ゲイリー・ハートが、たった1つのスキャンダルで大統領選からの撤退を余儀なくされることになる。ゲイリー・ハート氏に直接会ったとき、『あの3週間の出来事は、自分にとってほんとうに辛く酷いものだった』と語られて、彼が大統領選からの撤退を決断したその背後には、『家族を守りたかった』ということが一番にあったし、『選挙制度そのものの神聖さを守りたかった』ということもあったんだ。そして、この1987年の出来事は公職にある政治家とジャーナリズムとの関係が大きく変わっていくターニングポイントとなったんだ」とゲイリー・ハートの想いを代弁した。
—— SNSがなかった時代とSNSがある今の時代とでジャーナリズムはどう変わったと思うか?
ヒュー:「とてもよい質問を“ありがとうございます”。ゲイリー・ハートのスキャンダルがおきた時代のシチュエーションは、ちょうどいろんなことが変わりつつある時代だったんだ。この出来事が現在の政治やジャーナリズムにも続いていて、政治家は単なる政治的リーダーとして思想を持った政策を行っていくだけでは通用しない時代になっている。現代の政治やジャーナリズムは、とにかく早くやらなければいけない時代になっていると思うし、反省する時間とか、何かを考え直すといった時間さえない。私は、ジャーナリストになろうという気持ちもあったのですが、経験豊富だからといっていいものを書けるかとは限らない。質のいいものを書くのがどれだけ大変かということもほんとうにわかっています」と自らの進路を考えた時代に思いを馳せつつ、ジャーナリストへ敬意を表した。
ヒュー・ジャックマン氏は、終始一貫して、この3週間の出来事が、大きくその後の政治家とジャーナリズムの関係性を変える岐路となったことを力説し、ゲイリー・ハート氏が常にグローバルにものごとを捉え、アメリカだけにとどまらず世界への影響も視野にしていたことを鑑み、もし彼が大統領になっていたならば、彼は「よりよい世界を築けた人」ではないか思っている。と深いリスペクトを込めて語った。
[記者: 神原 貴子 / スチール撮影: 坂本 貴光]
イベント情報<映画『フロントランナー』主演 ヒュー・ジャックマン来日記者会見> |
映画『フロントランナー』予告篇
映画作品情報
《イントロダクション&ストーリー》全てを変えてしまった―1988年 1988年、米国大統領選挙。コロラド州選出のゲイリー・ハート(ヒュー・ジャ ックマン)は、史上最年少にして最有力候補《フロントランナー》に躍り出る。 知性とカリスマ性を兼ね備えた彼は、ジョン・F・ケネディの再来として大衆 に愛され、当選は確実視されていた。しかし― マイアミ・ヘラルド紙の記者 が掴んだ“ある疑惑”が一斉に報じられると事態は一変する。勝利を目前 にして、ハートの築き上げた輝ける未来は一気呵成に崩れ去り、一つの決 断を下す時が訪れる…あの日、一体何が起きたのか―。 選挙キャンペーンスタッフ、報道の信念をもったジャーナリスト、トクダネ が欲しい記者、ハートの妻と娘、それぞれの視点で描かれるドラマは、圧倒的なスピード感と臨場感で、観るものをまるで、自分がその中の一員で あるかのように引き込む。 |
原題: The Front Runner監督: ジェイソン・ライトマン
脚本: マット・バイ、ジェイ・カーソン、ジェイソン・ライトマン
原作: マット・バイ著「All the Truth is Out」
TOHOシネマズ 日比谷他全国ロードショー!