映画『あなたの旅立ち、綴ります』
(原題: The Last Word)
最低の人生が最高の“最期”に変わる!?
老年の終活を愛とユーモアで綴った人間賛歌が今鳴り響く!
《ストーリー》
かつてビジネスで大成功をおさめ、悠々自適な老後を送っているハリエット(シャーリー・マクレーン)。経済的には十分すぎるほど豊かであったが、夫と離婚し娘とは何年も音信不通で孤独な生活を送っていた。そんなある日、ハリエットは新聞の訃報記事に目を止める。大勢の人に惜しまれつつ、この世を去る人々。全ての事において完璧にこなそうとする彼女は、自分が生きているうちに自分の訃報記事を書き上げてもらい、内容を確認しておこうと考える。
さっそく地元新聞社の編集長ロナルド(トム・エヴェレット・スコット)にかけ合い、半ば強引に訃報記事を担当するアン(アマンダ・セイフライド)へ執筆を依頼した。アンはやむなくハリエットの友人リストを元に取材を始めるが、自己中心的で辛辣な彼女を良く言う人は皆無であり、出来上がった原稿はハリエットの理想とはほど遠い内容であった。彼女は、アンを責めるが「その原因はあなたにある!」と切り返され――
《みどころ》
最近「ヒュッゲ」という言葉を良く耳にする。デンマーク発祥の言葉で心地よい時間や空間を意味し、例えば「暖炉の前でホットワインを飲む」「ふわふわのブランケットに包まり映画や読書を楽しむ」「家族や友人と集まってゆったりとした時間を過ごす」などヒュッゲな暮らしというそうだ。本作は、人生を急ぎ過ぎた主人公がヒュッゲな生活の価値に気づく―― そんなほっと一息つくような物語だ。
親愛なる人を創らず、仕事に没頭し、潔癖症がごとく完全なる成果を至上とする。そうした人生を積み上げた結果は、何とも淋しく儚いものか。ハリエットは訃報記事を創作していく過程で悟ることになる。今からでも遅くない。これまでの生活をリセットしてリノベーションしよう。そんなハリエットの決意が様々な登場人物を交えながら、とても爽やかに描かれており、ほっこり心が温まる作風となっている。
主人公を務めたシャーリー・マクレーンは、御年(おんとし)83歳。だが、チャーミングな演技は相変らず健在だ。映画『LIFE』(2013年)や『イン・ハー・シューズ』(2005年)など数々のハート・ウォーム・ムービーで味のある脇役を演じ、それぞれの映画が放つ感動の一翼を担ってきたが、本作では堂々の主役。―と言っても肩はることなく、クセのある富裕階層の老女をごく自然に演じ切るあたりはさすがであろう。
もう一人の主役アマンダ・セイフライドは、そのシャーリーとは孫くらいの年齢が離れている。美人にして華麗…今を時めくハリウッドの華だ。その名のとおり、いわゆる綺麗どころの役が多い彼女だが、今作ではキャリアに悩める地味なライターを演じており、これまでのイメージとは一線を画している。これから役者として円熟味を増し、演技派としても益々大成していくであろう彼女だが、本作はそのターニングポイントとなる一作かもしれない。
その他、愛嬌たっぷりのおませな少女ブレンダ(アンジュエル・リー)の存在も良いアクセントとなっているし、BGMもクラシカルなロックのオンパレードで最高だ。特に音楽は、ラジオ局が物語の大事なプラットホームとなっていたり、ハリエットがDJをつとめたり…と本作の魅力を増幅する重要なファクターとなっている。
ヒュッゲのような人生にとってかけがえのないモノ― 人との交流をおろそかにし、仕事の多忙を極める人は、とかくどこかに忘れがちだ。ハリエットは人生の今際の際にそれを取り戻した。同じような境遇の人には特に観賞をお勧めしたい。きっと一番大事な時間を呼び起こしてくれるに違いない。
映画『あなたの旅立ち、綴ります』予告篇
映画作品情報
提供: ポニーキャニオン・東北新社
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シネスイッチ銀座、新宿ピカデリーほか全国公開!