(原題: Собибор)
アウシュヴィッツ以外にもナチスの絶滅収容所があった!
歴史に隠されていた反乱を描く
第二次世界大戦下にナチスが建設した絶滅収容所としてアウシュヴィッツが知られているが、ナチスはほかにも5か所作っており、その1つがソビボル絶滅収容所である。9月8日(土)に公開される映画『ヒトラーと戦った22日間』はソビボル絶滅収容所で実際に起こった脱出劇を史実に沿って描いた。
主演はコンスタンチン・ハベンスキー。<世紀のアイコン>と言われるロシアの国民的俳優で、本作で監督デビューし、脚本も担当した。ナチスの司令官フレンツェルには『ハイランダー』シリーズ、『ゴーストライダー2』のクリストファー・ランバート。その存在感と冷酷なまなざしで収容者に恐れられる司令官を演じた。ほかにもミハリーナ・オリシャンスカやマリヤ・コジェフニコワ、ダイニュス・カズラウスカスなど、人気俳優陣が出演している。ソビボルで反乱が起こってから75年。2018年5月にロシアで公開されると大ヒットを記録した。
冒頭で大勢のユダヤ人が列車でソビボル絶滅収容所に連れてこられる。音楽隊による歓迎の演奏が流れ、そこに悲壮感はない。きちんとした身なりのユダヤ人も多く、やっとシャワーを浴びられると喜ぶ姿もあった。収容所で何が行われるかを知っているだけに、彼らの安堵に心が潰れそうになる。
一堂に集められ、手に職を持つ者に仕事が割り振られていく。仕事を受けなかったものは感染症予防のためのシャワー室に連れて行かれた。しかし、その先に待っていたのは、やはり毒ガスによる大量虐殺だった。
ここから一気に雰囲気が変わる。ナチス将校たちが絶えず行う壮絶な虐待。仕事を得てガス室を逃れた者にも地獄のような日々が待っていたのだ。ナチスの支配による緊迫感が伝わってくる。やがて列車は想像を絶するほどの人数の死体を運んできた。あまりにも大量で、死体には見えなかったほどだ。収容者たちはその死体を片付けながら、自分たちの近い将来を悟る。そしてある夜、ナチス将校たちは宴を催す。そこで収容者を家畜同然に扱い、尊厳と誇りを踏みにじった。
脱出劇のリーダーとなったのは、ソ連の軍人サーシャことアレクサンドル・ペチェルスキー。彼はドイツ軍の捕虜となり、ミンスク捕虜収容所に送られ、その後、ソビボル絶滅収容所に送られた。それからわずか22日間で脱出計画を練り、反乱を率いたのである。
ラストは数百人が一気に柵の外に向かって走り出す。収容所生活で喜びの感情を忘れてしまったのか。次々にスクリーンに映し出される彼らの顔は能面のよう。それでも撃たれて動けなくなっているナチスの司令官フレンツェルの横を通り過ぎるとき、会釈をしていた。刷り込まれた習慣とは恐ろしい。
ペチェルスキーは終戦まで最前線で戦い続けて、80歳で永眠。本作の製作にあたり、彼の娘や孫に助言を仰いだという。ほかの収容者についてはエンドロールで触れている。復讐に走った者もいるようだ。収容所生活はそのときだけでなく、その後の人生にも大きな影響を与えてしまった。二度と繰り返してはいけない。
映画『ヒトラーと戦った22日間』予告篇
https://youtu.be/9Wf8cZkJ3Ec
映画作品情報
《ストーリー》アウシュヴィッツと並ぶ絶滅収容所ソビボル。死が待つとは知らず、多くのユダヤ人が国籍や貧富の差関係なく列車で送り込まれ、ガス室で大量殺戮されていった。残った者には虐待と屈辱の日々が続く。そんな中、秘かに脱出を企てるグループがあった。しかし彼らには強力なリーダーがいない。そこに1943年9月、ソ連の軍人でサーシャことアレクサンドル・ペチェルスキーが収容者として移されてくると、彼と仲間は、緻密な計画のもと前代未聞の反乱を計画する。それは収容者“全員の脱出”だった。これまで歴史に隠されてきた“絶滅収容所で起こった最大の反乱”は、一体どのように成し遂げられたのか。 |
ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他にてロードショー!