最愛の娘を失った哀しみと焦燥の連鎖が、怒りの炎と化す!
卑劣なテロリストを全て焼き尽くす、圧倒的なアクションを1秒たりとも見逃すな!
「こんなジャッキー・チェンは観たことがない!」映画を観終えた人は、口を揃えてそう叫ぶだろう。ジャッキーは言うまでもなく、香港映画でカンフーアクションのスターとしてキャリアをスタートさせ、やがてハリウッドでも大きな成功をおさめた、アクション映画界きってのスーパースターだ。
もちろん、本作『ザ・フォーリナー/復讐者』でもその片鱗を魅せてくれる。…いや、片鱗どころではない。ややカンフーは封印しているものの、我々の期待通りにスクリーン狭しとたっぷり暴れまくってくれる。だが、それだけで留まらないのが本作の大きな特長だ。
無差別テロによって罪もない娘の命を奪われた父親の苦衷。心ここにあらず。呆然としながらもまるでストーカーのように犯人を捜す執念に脱帽。これまで、ある種の陽気感を漂わせながら、時にコミカルに敵をなぎ倒し続けてきたジャッキーとは、まるで別人だ。陰ある亡者のような姿に戦慄すら覚える。
作品の中盤からは、いよいよ本領発揮。犯人像が徐々に明らかになっていく中で、ジャッキー演じるクァンの闘争本能も徐々に点火していく。完全無敵のヒーローでなく、時に敵に追い込まれながらも打ち払っていく様は「60歳を過ぎた元特殊工作員」という設定を忠実に再現したものだろう。より臨場感が増すというものだ。このあたりの切替えと巧みさは、本作随一のみどころと言って良い。
そして、共演は日本でもおなじみのピアース・ブロスナン。『007/ゴールデンアイ』(1995年)で5代目ジェームズ・ボンドに任命され、シリーズの人気を中興させた立役者だ。かつて武闘派で鳴らした現北アイルランド副首相という役どころだが、これが実に見事にマッチ。枯れ感のある老政治家ぶりを見せつつ、瞳の奥から放たれる眼光の鋭さはただならぬモノがあり、常にミステリアスな存在。彼を軸に次々と拡がっていくストーリーに、観ている者はドンドンと緊迫した世界へ惹き込まれていく。もう一人の主役と言っても過言ではない、キーになるポジションだ。
こうした快作を創り上げた功績は、無論制作スタッフの力も大きい。とりわけ監督のマーティン・キャンベルの手腕はさすがだ。前述の『007/ゴールデンアイ』でメガホンをとり、ピアースを起用したのも彼だが、その後同じ007シリーズの『007/カジノ・ロワイヤル』(2006年)でもダニエル・クレイグを起用し、新たなボンド像を創り上げ世界中から喝采を浴びた名監督だ。『007/カジノ・ロワイヤル』も最後にどんでん返しが二転三転と繰り返され観客を魅了したが、本作も負けていない。登場人物は多岐に渡るが、裏切りの連続でとにかく最初から最後までハラハラさせられる。
従来のアクション映画らしい王道テイストを踏襲しつつ、新たなカラーをしっかりと取込み、結果斬新な娯楽大作となった一本。映画ファンはさらに進化した“成龍(=ジャッキー・チェンのこと)”像を楽しむことができる作品だ。
映画『ザ・フォーリナー/復讐者』予告篇
映画作品情報
《ストーリー》怒らせてはいけない人を怒らせてはいけない。 |