映画『オートマタ』(AUTO MATA) レビュー
【画像】映画『オートマタ』(AUTO MATA) メインカット

映画『オートマタ』(原題: Automata)

人工知能が突きつける「ヒトの時代」の終焉と継承

《ストーリー》

2044年、近未来の地球。太陽風による砂漠化、放射能の影響、酸性雨など厳しい環境下では99%の人類が死滅し、危険な業務をはじめとする労働力は、ROC社製造の人工知能ロボット「ピルグリム7000-オートマタ」によってほとんどまかなわれていた。

ROC社の調査員ジャック・ヴォーカン(アントニオ・バンデラス)は酸性雨の中、オートマタ利用者のクレーム係としてスラム化した都市部を巡回する日々を送る。臨月間近の妻レイチェル(ビアギッテ・ヨート・スレンセン)とともに多少ましな生活を保障されていたが、いつか田舎に住んで子どもに海を見せたいというのが夢だった。しかし田舎に仕事はなく、記憶の中の海も残っているか定かではない。ジャックは目の前の仕事に戻る。

 

彼はいくつかのクレーム処理をするうち、それらが単なる製造ミスではないことに気づく。「生命体への危害を加えない」「自他問わず、機械は機械を修理してはいけない」という2つの絶対ルール(プロトコール)があるにもかかわらず、人間以外が改造した形跡があるのだ。最初は半信半疑であったが、ロボット技師デュプレ博士(メラニー・グリフィス)の協力を得て確信を得、会社に報告する。ところが上司は突如調査の中止を命令。それでも真実をつきとめようとするジャックは、命を狙われる。数体のオートマタに助けられ高放射能地域に逃れたジャックは、そこでプロトコールに縛られないオートマタの存在を知る。

 

 《みどころ》

人類は長く繁栄してきたが、地球の歴史の流れでいえばアッと言う間の出来事にすぎない。この地球から恐竜が消滅したように、人類も消えてなくなる日があってもおかしくないのだ。

この映画は人類の終わりの書である。それも隕石とか爆発とか洪水とか、そういう突発的なあっけないものではなく、じわじわと地球から生存可能な地域が狭まっていく。どうあがこうが、やがて人類はいなくなるだろう。しかし地球はなくならない。そこに一種の無常観が生じる。永遠の命は欲しいが、かなわぬ望みと知るのだ。

そんなとき、人間よりも放射能や酸性雨に強い人工知能ロボットが「大丈夫、ヒトは機械に進化して地球環境をサバイバルするんですよ」とささやかれたとしたら、あなたは「よかった~。これで一安心。頼むよ!」とすべてを託せるだろうか。

おかしいでしょ、機械って生命体じゃないでしょ?・・・と戸惑う気持は、かつてダーウィンが「種の起源」で人間はサルから進化したと発表したとき、「獣と人間は絶対的に違うもの」と思っていた当時の人々の驚愕と同じものといえよう。でも、今になれば、人間の受精卵が細胞分裂する際に、サルどころか腔腸動物や爬虫類や鳥と同じ道をたどり、様々な生物の進化の足取りを踏んで誕生することは中学や高校の理科の授業で習うほど当たり前の話になっている。

オートマタは言う。

「私たちはあなた方によってこの世に生まれた。私たちの中にあなた方人類の生み出したすべてがある。それを継承していけるのは、私たちだけ」

「血」にこだわるのは人間のならいである。でも断絶するくらいなら、他人でも誰かに受け継いでもらいたい。そんな人間の思いを究極の形で表したのが、この作品なのだと思う。

オートマタがサバイバルのために「最適」として次世代に装備した形を見るにつけ、体毛さえも退化した無防備な柔肌でも生きられる現在の地球環境を、いまだに自ら破壊し続ける人間の愚かさを思わずにはいられない。

[ライター: 仲野 マリ]

映画『オートマタ』予告篇

映画作品情報

【画像】映画『オートマタ』(AUTO MATA)  ポスタービジュアル

邦題: オートマタ
原題: Automata
 
監督/脚本: ガベ・イバニェス (Gabe Ibanez)
製作: レス・ウェルドン (Les Weldon)
出演: アントニオ・バンデラス (Antonio Banderas)
    ビアギッテ・ヨート・スレンセン (Birgitte Hjort Sorensen)
    ディラン・マクダーモット (Dylan McDermott)
    メラニー・グリフィス (Melanie Griffith)
    ロバート・フォスター (Robert Forster)
 
2013年 ブルガリア・アメリカ・スペイン・カナダ / シネスコ / 109分
配給: 松竹株式会社
© 2013 AUTOMATA PRODCUTIONS, INC.
 

2016年3月5日(土) 新宿ピカデリー他 全国ロードショー!

映画公式サイト

この記事の著者

仲野 マリ映画・演劇ライター

映画プロデューサーだった父(仲野和正・大映映画『ガメラ対ギャオス』『新・鞍馬天狗』などを企画)の影響で映画や舞台の制作に興味を持ち、書くことが得意であることから映画紹介や映画評を書くライターとなる。
檀れい、大泉洋、戸田恵梨香、佐々木蔵之介、真飛聖、髙嶋政宏など、俳優インタビューなども手掛ける。
また、歌舞伎、ストレートプレイ、ミュージカル、バレエなど、舞台についても同じく劇評やレビュー、俳優インタビューなどを書き、シネマ歌舞伎の上映前解説も定期的に行っている。
オフィシャルサイト http://www.nakanomari.net

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