破天荒な父と娘から伝わる、まっすぐな愛
ユーゴ・ジェラン監督による、常識はずれな親子愛を描いたフランス映画。
本国フランスをはじめ、ロシア、オランダ、ドイツ、ベルギー、スイスで大ヒットを博すなど、あっという間にヨーロッパ中を感動で包んだ。
この作品の原案は、全米で異例の大ヒットを記録したメキシコ生まれのコメディ映画『Instruction Not Included』(2013年)。フランスの他、アメリカ、ブラジル、中国、トルコなど、すでに世界5カ国でリメイクが決まっている。
《ストーリー》
南フランスで自由気ままに生活していたプレイボーイのサミュエルの元に、突然赤ちゃんを抱えて現れたクリスティンという女性。彼女はその子がサミュエルの娘だと告げ、20ユーロを貸して欲しいとタクシーに乗り込むと2人を置いて去ってしまう。
クリスティンを追って、言葉の通じないロンドンに向かうものの彼女は見つからず、仕事をクビになり、残されたのは小さな娘、グロリアだけ。偶然地下鉄で知り合ったゲイの映画プロデューサー、ベルニーに救われ、困難と戦いながらも陽気な3人の生活が始まる。
スタントマンとして活躍するサミュエルは、不器用ながらこれ以上ない愛をそそぎ、グロリアは8歳の活発でまっすぐな女の子に成長した。そんなある日、再び突然クリスティンが現れ、サミュエルたちの生活が大きく変わっていく・・・。
《みどころ》
グロリアの父親・サミュエル役を演じたのは、日本でも話題になった『最強のふたり』(2012年)のドリス役のオマール・シー。破天荒でありながら、娘のためならどんなこともやってのける父親を見事に演じている。
グロリアを演じた、グロリア・コルストンの笑顔も印象的。自然体そのままで笑う彼女がすごく可愛く、忘れられなくなるはず。作品のストーリーでも彼女の笑顔がキーポイントに。
また、鮮やかでやわらかい色彩もこの映画の魅力のひとつ。赤、青、黄色の原色をベースにどこかやさしいフィルターがかかった世界が、3人のドタバタに満ちた生活と力強い愛情を映すように、最後の最後まで続いていく。南フランスの広大な海やロンドンの活気ある街並みなどロケーションやセットも見逃せない。
特に印象に残る3人が暮らす家は、まさにおもちゃ箱そのもの。等身大のレゴ人形に、子供部屋からリビングに降りるスライダーとボールプール、3mもありそうな大きなゾウのぬいぐるみに、テーマパークのようなルーフトップ。すべてがカラフルでダイナミックなインテリアに圧倒される一方、サミュエルとベルニーがどれだけグロリアを一番に考えて育ててきたか、ぐっと胸が苦しくなるほど伝わって来る。
シリアスなシーンの中にもユーモアが散りばめられていて、コメディアンでもあるオマールの演技が楽しめるのもポイント。英語が苦手なサミュエルがイギリス人相手に対抗する姿は、思わずくすっと笑ってしまう。
グロリア、サミュエル、ベルニーのサーカスのような日常と、まっすぐで少し切ない愛情を鮮やかな色彩で描いたこの世界観をぜひ楽しんでほしい。
[ライター: 桜井 ひかり]
映画予告篇
映画作品情報
原題・英題: Demain Tout Commence
出演: オマール・シー クレマンス・ポエジー アントワーヌ・ベルトラン グロリア・コルストン
2016年 / フランス / カラー / 5.1ch / スコープ / 117分 / G / 字幕翻訳: 星加久実
配給: KADOKAWA
角川シネマ有楽町、新宿ピカデリー、渋谷シネパレス他全国ロードショー!
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