映画『余命10年』今村圭佑 カメラマン インタビュー

なるべくシンプルにして、主人公2人の話に集約させた

【画像】映画『余命10年』場面カット

—— 今村さんはまず脚本を読み、そこからイメージを得ていくタイプとのことですが、この作品はいかがでしたか。

脚本の最後の方に夢のような部分があり、そこに向かって前半部分をどのような映像にすればいいのか、最初に脚本を読んだときに悩みました。 この作品は原作者の小坂さんの実体験の一部がベースにある小説が原作です。ただ彼女は小説と同じ恋愛をしたわけではありません。生きた証としての恋愛を自分の小説の中で叶えたのです。そこに映像としての拠りどころがあると気がつきました。

—— 藤井監督とは今回の撮影コンセプトをどのように相談されたのでしょうか。

お互いに脳内にはどういう映像になっていくのかがあると思うのですが、あえて、すり合わせはしません。ずっと一緒にやってきたので、自分たちの中で好きなものとか、“こうなったらこうなるよね”というのが何となくわかるのです。それを始まる前に確認してしまうと毎回、同じようなものになってしまい、新しいものが生み出せない。僕は僕で藤井さんがイメージしていないであろうことを考えて出すし、藤井さんもそうだと思います。お互いに大きいところは共有するけれど、細かいところは共有しない。これが新しいことをやってこられた秘訣です。

【写真】映画『余命10年』今村圭佑カメラマン インタビュー

—— 今回はどのようなことを共有したのでしょうか。

これまでの作品は特徴的なことをして、映像に自分たちの名前を残すようなところがありました。今回は「僕たちの画です」という映像にするのは止めようと話しました。

—— それはある意味、チャレンジですね。

『ヤクザと家族 The Family』は色味やカメラワークにわかりやすく特徴的な映像部分があります。それを今回はあえてせず、なるべくシンプルにして、主人公2人の話にしっかり集約させたい。だからこそ何もしない。チャレンジしないというチャレンジです。

【画像】映画『余命10年』場面カット

—— 冒頭の病室からの桜のシーンはそれの象徴でしょうか。これまでの作品では見たことがないくらい明るい色調でしたね。

見た目に近いというか、次からの落差みたいなものがあるといいなと思ったので、最初はわかりやすく明るくしました。

—— 確かに次のシーンとの落差に驚きました。

最後の夢のようなシーンに向けて、始まりも夢っぽい空気感が出ればいいなと思いました。

—— 全体的に動きのあるカメラワークが多かった印象を受けました。

主人公の2人が近づいていったり、離れていったりする話なので、カメラワークもそれに共鳴させる狙いがありました。

【画像】映画『余命10年』場面カット

—— ガラス越しに撮影したシーンが何度もありましたが、そちらにも何か意図があったのでしょうか。

最初の頃はドキュメンタリー風に撮りたいという気持ちもあったので、ちょっと離れたところから客観性を持って撮ろうと思い、ガラス越しに撮ったカットがいくつかありました。

しかし、1年通して四季折々に撮っていたので撮影期間が空くこともあり、その間に考え方や距離感が変わっていったのです。それはお芝居における茉莉と和人の関係性や小松さんと坂口くんの距離感だけでなく、僕たちと小松さん、僕たちと坂口くんの距離感も含めて変化し、それがそのまま出ていった気がします。

特に冬のコテージでのシーンを撮影しているときに、“この2人を遠くから客観的に見ていてはダメなのかな”と明確に感じたのを覚えています。それ以降、カメラも2人にどんどん寄っていった感覚があります。

★NEXT: 四季折々の美しさがそのまま主人公の茉莉が生きた10年に

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