映画『パンとバスと2度目のハツコイ』
主演・深川麻衣インタビュー
xxx誰かの叶えられなかった夢を引き継ぐ為に頑張る人って、優しいなと思うんです。
「私をずっと好きでいてもらえる自信もないし、ずっと好きでいられる自信もない」と独自の結婚観を持つ市井ふみ(深川麻衣)が、中学時代の“初恋”の相手・湯浅たもつ(山下健二郎)とある日まさかの再会、妹や同級生など周囲を巻き込みながらも“恋愛こじらせ女子“の恋愛模様を描いた“モヤキュン”ラブストーリー『パンとバスと2度目のハツコイ』。
『パンバス』で映画デビューにして初主演を務めた女優・深川麻衣さんにインタビュー。本作への出演についてなど話を伺った。
―― 深川さんは本作が映画デビューにして初主演ということで、なかなかそういったケースの方は最近いらっしゃらないですが、最初に本作のお話を頂いた時の感想をお聞かせいただければ。
まず一つ、映画に出演させていただくのが夢でもあったのですごく嬉しいという気持ちと、初めてで主演ということで「大丈夫かな。自分で本当にいいのかな」と思っていました。
グループ(乃木坂46)にいた時に色々お仕事をやらせていただいている中で、MVをはじめ監督と1対1で撮っていただく映像のお仕事がとても多く、そこでもっと演技の勉強をしたいと思ったのがきっかけですね。また、かつて出演した「16人のプリンシパル」は本当にイレギュラーな舞台で、同じ役を初日から千秋楽までやって究めていくというよりも、チャレンジするような舞台だったので、やるからには全部やってやろうということで、結構メンタルが鍛えられましたね(笑)。本当にきつくて。
―― かつて美術をやっていて、そこからパン屋さんになったという主人公の役ですが、深川さんご自身も中学、高校と、美術をされていたと伺いました。今回その経験が活かされたのではないでしょうか?
撮影の少し前に今泉監督と一時間ぐらいお話をする時間があって、自分のことを話させていただいたんですけど、静岡県出身だったりとか、過去に美術をやっていたことなど、過去の私の実体験を監督が市井ふみ役に反映させてくれてくれたんです。
―― 美大出身の方は独特な雰囲気を醸し出している方が多いイメージがありますが、演じられた市井ふみにも似た雰囲気を感じました。そういった方々も演技の参考にされましたか?
私は高校を卒業してからは美術の方面には進まなかったんですけれども、東京で美大に通っている子とか、展覧会をやっている友達などもいますので、美術に関しての役づくりはすごく恵まれていたと思います。途中で絵を描くのを止めてしまったふみの気持ちもわかりますね。そこは自分と近い部分がありました。
―― 役柄と近しいものがあったからこそ、入り込めるというのがあるのですね。ふみの妹・二胡も美術をやっている役ですが、絵を描くことが楽しくないというシーンがありました。そういったところも共感出来るところでしたか?
妹役の二胡が「絵を描き終えるタイミングがわからない」というシーンは共感できました。やっぱり自分で「ここで終わり」という完結するところがわからないというか、もうちょっと何か描き足せる部分があるんじゃないかとか、でも描き足していけばいくほどわからなくなっちゃったり、逆に気に入らないものが出来上がったりしてしまうとか、私は美術を中高で勉強したのでそういったところも理解できるんですけど、それを脚本に反映させてくださっている今泉監督はすごいなあと思いました。
―― 一緒に作品を作っていかれたということが伝わってきました。
たもつ役の山下健二郎さんとは共演されていかがでしたか? 中学時代の初恋相手という設定でしたが。
山下さんもきっとたもつ役をやるにあたって、そんなに共感出来るところばかりじゃなかったみたいなので、すごい苦労なさったりとか、きっと大変だった部分もあったと思うんですけど、でも、山下さんがたもつをやったからこそあの憎めなさ?といういろが出てたのかなと思います。たもつは結構ズバズバ言う役で、それによってふみが傷ついちゃう場面もあったと思うんですけど、結構難しい役だったんじゃないかって。下手すると間違えちゃうと思うんですよね。単なる嫌なやつになっちゃうというか。その不器用さがチャーミングというか憎めない感じになっていて、すごいなあって思いましたね。
―― そんなお二人の関係が絶妙に現れているのがクライマックスの叫ぶシーンだと思いますが、気持ち良さそうでしたね。
何回も撮りなおして時間をかけたシーンでしたね。叫びだしてからは結構長回しだったんですけど、一回じゃなかなか決まらなくて何回も撮影しました。後半声が枯れそうになるぐらいお互い叫んで(笑)、でも回を重ねるごとにヒートアップしていったので、すごく良くなっていくことを感じることができて良かったです。あんなに日常で大声出すことがなかなかないので、すっきりしましたね(笑)。
―― 全編を通じてお気に入りのシーンはありますか?
バスの洗車シーンが好きです。なかなか無かったんですよ!あのおっきい洗車マシーンを近くで見るということが。試写を観たときもすごく印象に残るシーンでした。ふみも初めてだったけど私も初めてだったので、新鮮な気持ちで見ることができましたし、映画の中でも、初めてふみがたもつにちょっとだけ気持ちをこぼすところなので、色んな意味で気に入ってます。結構重要なシーンですね。
―― 演じる前と、クランプアップ後に新たに芽生えたものはありますか?
はじめは映画ってどうやって撮っていくのかわからずすごい不安もあったんですけど、撮影が始まってからは、どうやって進めていくのかという不安は、監督や共演者スタッフの方々もとても温かくて、初めての映画がその空気感で参加させて頂いた事はとても幸せでした。一回目の試写では大きな画面に映っている私自身に耐えられず、冷静にお話を見れなかったんですけど(笑)。ここがこう繋がったんだなあとか、ここはこう使っているんだとか、そういった部分にどうしても目がいっちゃったんです。でもエンドロールでやっぱり自分の名前が出てきたときに、いろいろあったけど、この映像に収まっているんだなあというものを目の当たりにした時に、少し達成感みたいなものがありましたね。
―― 本作は一足先に第30回東京国際映画祭の特別招待作品としてお披露目されましたが、乃木坂46のメンバー達からも反響はありましたか?
映画はまだメンバーの子は誰も観れていないと思うんですけど、出演が決まったときに「観るよー!」って連絡をくれた子はいて、嬉しかったですね。私も一方的に彼女達の活動を見てますし自然と耳にも入ってきますし、よく連絡を取り合ってますので。観ててくれているっていうのは嬉しいですね。
―― 今回初めての映画出演で本格的なお芝居に臨みましたが、次回以降どんな役に挑戦してみたいですか?
ふみもそうなんですけど、今まで結構、自分の気持ちをこう、グーっと秘めるというか、あまり喜怒哀楽が激しくない役が多かったので。それとは真逆の役をやってみたいですね。喜怒哀楽がはっきり出ているわかりやすい役をやりたいです。
―― 女優業以外にも、色んな才能をお持ちなのだと思います。今後は他の才能を活かしてどんなことをやりたいですか?
グループを卒業してから比較的自分のための時間が持てるようになったので、イラストとかは続けて行きたいというのはあるんですけど、好きなものについての知識を深めていくのが今年の目標です。茶道など、淹れ方とか今までそんなに気にしたことがなかったので、ちゃんとした知識を得たいなと思っています。習い事の年にしたいですね。
―― 目標や憧れの女優さんはいらっしゃいますか?
憧れているのは満島ひかりさんです。満島さんが出ている作品は全部追いかけたいと思うぐらいですね。目が離せない、惹きつけられる方です。他の方にはない満島さんだけの魅力を感じていて、憧れますね。東京国際映画祭にもいらしていたんですけど、すれ違うこともできませんでした。まだお会いしたことがないので、いつかお会いできたら嬉しいです。海外の女優さんはあまり詳しくないのですが、韓国映画とかも今すごいので、勉強したいです。
―― 本作の主題歌を手がけたLeolaさんの「Puzzle」がすごく素敵ですね。
あらかじめ映画の脚本を観ていただいて作っていただいたんです。今泉監督が編集したPVも作られて、本当に二人のことだったり、撮影のことをすごく思い出す作品に仕上がっていて。完成披露舞台挨拶の時に生で歌ってくださってとても感動しました。
―― 最後にシネマアートオンラインをご覧の皆様にメッセージをお願いします。
はじめまして。2016年に乃木坂46というグループを卒業して今は演技のお勉強を一からさせていただいてますが、自分自身映画を観るのも好きですし、今後も映画やドラマを観ながら沢山刺激を受けたいなというのがあります。今まで映画を観て影響を受けたり、映画を観た後の余韻で、明日からも頑張ろうと思えたことに結構助けられたことが沢山あります。今は作る側のお仕事をさせていただいていますので、いつかそういう形で映像などを通して皆さんとお会いできたら嬉しいです。
[スチール撮影: Cinema Art Online UK & 坂本貴光]
プロフィール
深川 麻衣 (Mai Fukagawa)1991年3月29日生まれ、静岡県出身。乃木坂46の1期生として2011年8月に加入。 |
映画『パンとバスと2度目のハツコイ』予告篇
映画作品情報
《ストーリー》にこやさとみなどふみを取り巻くキャラクターたちは、二人の恋にどう絡んでくるのか? たもつの「どうやったら、本当に好きな気持ちって伝わるんだろうな」といった言葉や、ふみの「お願いだから、好きにならないで」といった言葉の先に待ち受ける二人の恋は果たしてどうなる? |