映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』大ヒット公開記念!ロバート・ハリス トークショーレポート
映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」大ヒット公開記念トークショー ロバート・ハリス

映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(Manchester by the Sea)大ヒット公開記念トークショー開催!

ハリウッドよ、よくこの映画を通した!
ハリウッドらしくない映画が、アカデミー賞2部門を堂々受賞!

6月10日(土)シネスイッチ銀座にて、映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』の大ヒット公開を記念してトークショーが行われた。

本作は、第89回アカデミー賞主演男優賞・脚本賞を受賞し、日本国内での興行収入が1億円を突破、公開5週目を迎えた今なお人気がじわじわと広がっている話題作である。

応援団長として映画批評を雑誌『pen』にも寄稿しているロバート・ハリス氏(DJ・作家)(以下ハリス氏)が、その魅力をたっぷりと語ってくれた。

映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」大ヒット公開記念トークショー ロバート・ハリス

ハリウッド映画には「悲劇、悲しみは乗り越えられる」というメッセージがあると思うんですが、この映画はそうではなくて「乗り越えられない悲しみもある。それでも人間は生きていかなければならなくて、ちゃんと生きている人がいる。心の空白状態でも、愛情を人は示せるんだ」ということを静かに語っている、そこがとても美しいとハリス氏。

よくこの映画の企画がハリウッドで通ったなと思います。わかりやすい起伏やドラマのない、静かな映画。この企画を本当に愛したプロデューサーのマッド・デイモンの働きが大きいでしょう。アメリカの器の大きさを感じましたね、と頷いた。本作は当初、マッド・デイモンが主演を務める予定だった。しかし、ハリス氏は主演がケイシー・アフレックでよかったと思う、と言う。なぜかというと、ケイシー・アフレックの映画を昔からたくさん観ていて、彼は秘めた怒りやバイオレンス、孤独といったものを先天的に持っている俳優だと思っているからだ。それをこの映画で十分に発揮し、観る者に、時に怖くなるような怒りを感じさせ、時には泣きたいようなハグしたくなるような気持ちにさせる、孤独を抱えた男を自然に演じている。映画の舞台である「マンチェスター・バイ・ザ・シー」についても、ケイシー・アフレック演じるリー・チャンドラーの心の中を街が表していたような気がします、と振り返った。

映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」大ヒット公開記念トークショー ロバート・ハリス

自身も物書きであるハリス氏は、小さなディテールに感情を上手く表しているのがすばらしいと、ケネス・ローガンの書いた脚本を称賛する。例えば、ケイシー・アフレック演じるリーがいつも大切にしている3つの写真がある。そこに何が写っているのか、観客は実際に見ることはないが、写っているものを何となく想像できる。そういったディテールの上手さは、さすが劇作家であり、演出家のケネス・ローガンだというハリス氏は、細かいところを大切にすることの意味が、観ながら徐々にわかってくる映画だ、と本作を語る。ハリス氏自身、はじめは冷たそう、協調性がないと思っていたリーという人物に対し、映画を観進め彼の悲劇がわかっていく内に、彼の傍にいる自分に気が付いたという。

映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」大ヒット公開記念トークショー ロバート・ハリス

第二の主人公とも言えるリーの甥、パトリック(ルーカス・ヘッジス)については、まともで普通な存在である彼に救われた、とハリス氏。現代っ子でドライ、しかし叔父であるリーへの優しさがある。パトリックがいたことで主人公のリーは救われ、パトリックとの関係性が未来を示唆している。監督の目線だろうか、この映画全体に感じた優しさ・思いやりが救いだと思う、とハリス氏は言う。

派手なアクションもなく注目をあびにくい映画ではあるのに、これだけ受け入れられているのはどうしてだろうか。テーマが「悲しみはどうやって乗り越えるのか。乗り越えられなかった悲しみを抱えてどうやって生きていくのか」という不変的なものであること。加えて日本においてこの映画は、若者向けの映画が作られる傾向が強くなっている日本で、大人が感銘するようなヒューマンドラマをつくるきっかけになってくれるのではないかと思う、とハリス氏は期待をにじませる。

映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」大ヒット公開記念トークショー ロバート・ハリス

終わりに、ハリス氏にとってトークイベント当日は『マンチェスター・バイ・ザ・シー』二回目の鑑賞となった。一回目よりも細かいディティール、主人公のリーの心の機微、繊細なところがよりみてとれたという。DVDが出たら、DVDでも何回も観るつもりだと笑顔を見せた。

[スチール撮影: 坂本 貴光 / 記者: 宮﨑 千尋]

 

イベント情報

<映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』大ヒット公開記念トークショー>

■開催日: 2017年6月10日(土)(13:20の回上映終了後)
■会場: シネスイッチ銀座
■登壇者: ロバート・ハリス(DJ・作家)

映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』予告篇

映画作品情報

映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(Manchester by the Sea)

第89回アカデミー賞主演男優賞、脚本賞受賞!

マット・デイモンがプロデューサーを務め、『ギャング・オブ・ニューヨーク』の脚本でアカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞にノミネートされたケネス・ロナーガンが監督・脚本を務めた珠玉の人間ドラマ。
ボストン郊外で便利屋として生計を立てている主人公が、兄の死をきっかけに故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーへ戻り、16歳の甥の面倒を見ながら過去の悲劇と向き合っていくー。

映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(Manchester by the Sea)

原題: Manchester by the Sea
監督/脚本: ケネス・ロナーガン
出演: ケイシー・アフレック、ミシェル・ウィリアムズ、カイル・チャンドラー、ルーカス・ヘッジズ、カーラ・ヘイワード
2016年 / アメリカ / 英語 / カラー / 137分 / ユニバーサル作品
配給: ビターズ・エンド / パルコ

© 2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved.

シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか大ヒット上映中!!
 
映画公式サイト
 
公式Twitter: @mbts_jp
公式Facenook: @ManchesterByTheSea.jp

この記事の著者

宮﨑 千尋ライター

一番古い映画に関する記憶は、姉と「天使にラブソングを...」ごっこをして遊んだこと。
10代後半でひとり暮らしを始めてから、ひとり映画にどっぷりはまっている。
映画館の独特な雰囲気を好み、休みの日にはミニシアターや小さなカフェで行われる自主上映にも足を運んでいる。

★好きな映画
『天使にラブソングを...』 (Sister Act) [監督: Emile Ardolino 製作:1992年/米]
『アバウトタイム~愛おしい時間について~』 (ABOUT TIME) [監督: Richard Curtis 製作: 2013年/英]
『シックスセンス』 (The Sixth Sense) [監督: M. Night Shyamalan 製作: 1999年/米]

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