第29回 東京国際映画祭(TIFF)
アニメーション特集「映画監督 細田守の世界」
映画『おおかみこどもの雨と雪』
細田守監督×是枝裕和監督、作品に影響を与えた家族観を語る!!
10月26日(水)、第29回東京国際映画祭(TIFF)の特集企画である「映画監督 細田守の世界」にて『おおかみこどもの雨と雪』(2012年)が上映され、終了後、細田守監督と『海街diary』(2015年)などを手掛けたゲストの是枝裕和監督による対談形式のトークイベントがTOHOシネマ六本木ヒルズにて行われた。
2人の対談はこれが初めてではないということで、最初から腹を割った内容の深いトークが繰り広げられ、前半では両監督作品に共通する“父親の不在”というテーマで語られた。
是枝監督は、「父親がいないほうが自分にはリアルで、ほっておくとそういう話を書いてしまう。父親がいない話をずっと書いてますねって言われたりすると、そろそろ違う話を書かなきゃなって想い始めるが、どうしてもそんな話になってしまう。存在感が希薄な父親で、姉2人と母と、女の中に囲まれて育ってきたんだけど、その環境が居心地良いと感じてしまっていたんだよね。最後まで父親は良くわからないという対象でしかなかった。父と2人で酒を飲んだり、飯を食べたりとか、そういう経験をすることがなかったんだよね」と語った。
それを受けて細田監督も「僕も父親と飲んだりとかそういう経験をしていない。きちんと話せていたらよくわからないという存在ではなかったのかもしれない。自分の中で父親が不在のまま止まっているのは居心地が悪くて、宙ぶらりんの状態になっている。その思いが作品に出ているのかもしれない」と続けた。
また、細田監督は本作『おおかみこどもの雨と雪』について「母がサマーウォーズの仕上げの途中で亡くなったんです。自分が母と過ごした時間を違う形で表現したかった。映画を通して母に謝りたかったというか、自分としては作らざるを得ないと思った。これ以外の題材がないという気持ちでできている作品です」と母への思いが込められていることを明かした。
是枝監督が「実在する風景をアニメーションにするとき、何を省略して、何を描くのか、その判断はどういった基準でされているのか」と問いかけると、細田監督は「写真はそのままを写しますが、絵は印象に残った部分を強く描け、印象に残らない部分を省いたり存在感を薄くできる。絵は描く人の主観が色濃く出るので、綺麗な風景だから綺麗になるというわけではなく、それをどう見ているかが絵になる。実写の場合もトリミングしたりとか、どこにフォーカスを合わせるとか、ある程度できるとは思いますが、アニメーション映画も絵だとした場合、この絵がどうして存在しているのかとか、この部分に興味があるとか、ダイレクトに主観を伝えることができる」と回答した。
最後に両監督とも、次回作について言及。是枝監督は「全然違う話を書いているつもりだったんだけど、今度も父親がいない話なんだよね、、、」と会場の笑いを誘った。
また、是枝監督は細田監督の次回作が気になったようで、「父親出てくる?」とストレートに質問。細田監督は「あ、父親出てきますね」と答えた。
[スチール撮影: Cinema Art Online UK / 記者: 堀越 健介]
イベント情報<第29回 東京国際映画祭 (TIFF) アニメーション特集「映画監督 細田守の世界」>
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映画『おおかみこどもの雨と雪』予告編
映画作品情報
第45回 シッチェス・カタロニア国際映画祭 アニメーション部門(Gertie Award) 最優秀長編作品賞受賞
第29回 東京国際映画祭(TIFF) アニメーション特集「映画監督 細田守の世界」上映
監督/原作/脚本: 細田 守
脚本: 奥寺佐渡子
キャラクターデザイン: 貞本義行
作画監督: 山下高明
美術監督: 大野広司
衣装: 伊賀大介
CGディレクター: 堀部 亮
音楽/主題歌: 高木正勝
主題歌: アン・サリー
出演: 宮﨑あおい、大沢たかお、菅原文太、黒木 華、西井幸人
2012年 / 日本 / 日本語 / 117分 / カラー
配給: 東宝株式会社
映画公開日: 2012年7月21日
©2012 「おおかみこどもの雨と雪」 製作委員会
公式Twitter: @ookamikodomo