- 2021-11-4
- イベントレポート, ティーチイン, 日本映画, 第34回 東京国際映画祭
第34回東京国際映画祭(TIFF)
アジアの未来部門 映画『誰かの花』Q&A
団地をロケ地に“人が住まう横浜”を描く
横浜のミニシアター「シアター・ジャック&ベティ」30周年に向けて企画・製作された映画『誰かの花』。映画『世界を変えなかった不確かな罪』(2017年)に続き本作が長編2作目となる奥田裕介がメガホンをとり、横浜出身の監督ならではの視点で、そこに住まう人と心を真摯に捉え丁寧に描いた物語となっている。カトウシンスケが主演を務め、共演に吉行和子、高橋長英、そして和田光沙、村上穂乃佳、篠原篤、太田琉星らが出演している。
第34回東京国際映画祭のアジアの未来部門に出品され、11月4日(木)、角川シネマ有楽町で行われた上映後のQ&Aに奥田裕介監督、カトウシンスケ、村上穂乃佳が登壇した。
“被害者”と“加害者”どちらのことも考えた映画
上映前の舞台挨拶を終え、観客と一緒に映画を観ていたという奥田監督。まずその感想を聞かれると「前半は緊張してしまって何も情報が入ってきませんでした(笑)。でもだんだんと僕も作品に入れて…。皆さんと観れて良かったです。本日はありがとうございます」と感謝を述べ、同じく映画を観ていた村上も「実は全編観たのは今日が初めてなんです。反省点も多々ありましたが、感激しました」と話した。
奥田監督は続けて映画が製作された経緯についても「ジャック&ベティさんの30周年記念企画ということでお話をいただいて。私は10代からジャック&ベティさんに通っていたので、記念といってもお祭りとか地域おこしとかそういう目線ではなく、ファンとして“ジャック&ベティで流れていてほしい作品”を作りました」とコメント。
さらに「最初は全然別のお話を書いていました。でも5年前くらいに身内が交通事故で亡くなって、一言も書けないという状態になってしまった時期があって、もともと書いていたお話を書くのではなくて、“このことを書かないと前に進めないな”っていうの思い、一度書いたのですが、『交通事故ダメ!』っていう本当にお説教みたいな映画を書いてしまって。だんだんとやっぱり時間がやっぱり薬にもなって、時間が経つにつれて、被害者家族ではありますが『加害者になる方が怖いな』という風に思うようになったんです。もう1回被害に遭うよりも、加害者になったときに心をどこに持っていったらいいのかわからないなと思って。そういった“被害者”と“加害者”、どちらも考えた映画になりました」と詳細の経緯を加えた。
“観光地的ではない”横浜を映す
Q&Aでは、観客からのロケ地について質問が。奥田監督は「私は横浜生まれ横浜育ちなのですが、観光地的な横浜ということ以外に、“人が住まう横浜”っていうのを描きたいなと思って。(ロケ地は)団地なんですけども、そこの団地がすごく魅力的だなと思って、たまたま父親の友人が団地に住んでいたので『ここで撮影したい』とお伝えして。大変なロケ地ではありましたが、皆さんの許可をいただいて撮影することができました」と回答。
村上は続いて「団地が小さな町のようになっていて、商店街のようなものもあって。お店がたくさんあったので寄ってみたかったのですが、コロナ禍のせいか多くの店が閉まっていて、それは残念でしたね。住んだら楽しそうな場所だなと思いました」と感想を語った。
カトウも「僕は東京の出身ですが、高校が神奈川にあったので、横浜は“友達が住んでいる場所”というイメージがついていて。なので、この映画で描かれる横浜というのがそもそも僕の持っていた横浜に対するイメージそのものだったので、それを思い出しました」と昔を振り返りつつ答えた。
★上映前に行われた舞台挨拶のレポートはこちら
フォトギャラリー📸
イベント情報
第34回 東京国際映画祭(TIFF) アジアの未来部門
|
映画『誰かの花』予告篇🎞
映画作品情報
《ストーリー》鉄工所で働く孝秋は、薄れゆく記憶の中で徘徊する父・忠義とそんな父に振り回される母・マチのことが気がかりで、実家の団地を訪れる。しかし忠義は、数年前に死んだ孝秋の兄と区別がつかないのか、彼を見てもただぼんやりと頷くだけであった。 強風吹き荒れるある日、事故が起こる。団地のベランダから落ちた植木鉢が住民に直撃し、救急車やパトカーが駆けつける騒動となったのだ。父の安否を心配して慌てた孝秋であったが、忠義は何事もなかったかのように自宅にいた。だがベランダの窓は開き、忠義の手袋には土が…。 一転して父への疑いを募らせていく孝秋。「誰かの花」をめぐり繰り広げられる偽りと真実の数々。それらが亡き兄の記憶と交差した時、孝秋が見つけたひとつの〈答え〉とは。 |