- 2020-11-8
- イベントレポート, ティーチイン, 日本映画, 第33回 東京国際映画祭, 舞台挨拶
第33回 東京国際映画祭(TIFF)
TOKYOプレミア2020部門
映画『ゾッキ』Q&A
竹中直人監督×山田孝之監督×齊藤工監督らが登場!
「夢は持ち続けて」2年で実現した異色映画への熱い思いを語る!!
2020年、ミニシアターでの公開ながら4万人動員のヒットとなったアニメーション映画『音楽』。その原作者で、独特な表現力は唯一無二と称される漫画家・大橋裕之の幻の初期作集「ゾッキA」「ゾッキB」が、日本を代表する俳優であり、クリエイターとしても異能示す竹中直人、山田孝之、齊藤工の共同監督作として実写映画化した。
映画監督として8作目となるベテランの竹中、3作目の齊藤、初監督となる山田。キャリアは異なるものの、映画監督、プロデューサー、クリエイターとしても幅広く活躍中の3人が一丸となり、大橋氏の生まれ故郷・愛知県蒲郡市でロケを敢行。吉岡里帆、鈴木福、満島真之介、柳ゆり菜、南沙良、安藤政信、ピエール瀧、森優作、九条ジョー(コウテイ)、木竜麻生、倖田來未、竹原ピストル、潤浩、松井玲奈、渡辺佑太朗、石坂浩二、松田龍平、國村隼など俳優・ミュージシャン・歌手・芸人といった多彩なキャスティングを、各自のこだわりや人脈を集結させて実現した。
およそ30編の短編作品の中から複数のエピソードを織り交ぜて構成し、舞台演出家・劇作家の倉持裕が脚本を執筆。ありふれた日常が不思議な笑い包まれ、明日が少し楽しくなるようなヒューマンコメディだ。
第33回東京国際映画祭(TIFF)では、TOKYOプレミア2020部門に選出。11月8日(日)、TOHOシネマズ 六本木ヒルズで行われた上映後のQ&Aには、竹中直人、山田孝之、齊藤工の監督陣と出演した松井玲奈、森優作、松田龍平のほか、原作者の大橋裕之、脚本の倉持裕に加え、映画のロケ地となった愛知県蒲郡市の鈴木寿明市長が登壇した。
観た人の日常に少しでも変化があれば
監督・出演者が素直な思いを吐露
映画を観終えたばかりの観客の大きな拍手に迎えられ、制作に携わった8人(鈴木市長を除く)が全員がおそろいの『ゾッキ』トレーナーを着て登場!
まずは、一言ずつの挨拶からイベントがスタートした。今作の旗振り役となったトップバッターの竹中監督はカタコトのおどけた口調であいさつを始め、場内の雰囲気をほぐすと「大好きだった作品を、このメンバーで作れて本当にうれしいです」とシンプルに挨拶。再び「俺が長く話しちゃだめなんだ」と、とぼけ山田監督にバトンを渡した。
今作が長編映画初監督となる山田は「大きなことが起こる映画ではないけれど、観た方の日常に少しの変化が起きてくれたらいいなと思います」と思いを伝え、続く齊藤監督は「公開して終わりではないので、ぜひこの作品に今後も寄り添っていただき、ウィズコロナ、アフターコロナの時代に、『ゾッキ』がどういう作品になっていくかを観てほしい」と今の未曽有の状況への想いを込めて観客へ呼びかけた。
松井は「マネキンを演じていた人間です。そう思って話を聞いていただければ」と話して観客の笑いを誘い、森は「観てくれた方がほんの少しでも日常を愛しく思ってくれたならうれしいです」と挨拶。松田は「同い年で同じ俳優の山田孝之初監督作品に出られ、めっちゃ楽しかったです」と同作参加への喜びを話した。
脚本家の倉持は「人に説明しずらい大冒険がどう受け止められたか、受け止められていくかが楽しみです」と心境を語り、最後に原作の大橋が「十数年くらい前に映画化なんて全く考えずに描いた漫画。映画化されることはもちろん、すばらしい方々に作ってもらえることに驚き、こういう大きな劇場で上映されることに驚き、ずっと驚いています」と率直な思いを吐露した。
松井玲奈は理想通りの“マネキン”
挨拶に引き続き、登壇者それぞれに映画の内容に関する質問が。“マネキン”を演じたという松井は、その特殊な役への感想を聞かれると「初体験の特殊メークができたのは、楽しい経験でした。竹中監督がぜひこの役を私にとおっしゃってくださったと聞いたのですが…そうなんですか?」と逆質問。松井が出演するパートを手掛けた竹中監督は「美しさの中に不思議な匂いがあって、それは松井さんにしか出せないと。原作の中でもとにかく映画にしたかったのが(松井が出演するパートの)“父”というエピソード。マネキン役は松井さんしかいない!と直感しました。実際演じてもらったら理想通り」と絶賛した。
松井はスキンヘッドに白塗りという衝撃的なメークにも「人生何事も挑戦なので、楽しく演じました」と笑顔で語り、「監督は冬の撮影で私の役は結構肌が出ていたので、寒くない?と気遣ってくださったり、顔の型を取る時3~4時間側についてくれて、たくさん心配していただきありがたかったです」と竹中監督の配慮を明かした。
森優作が映れば『ゾッキ』の世界に
齊藤工監督「それだけで“勝ったな”と思った」
森は、自身の出演パートを手掛けた齊藤監督について「本当に丁寧に現場に最後まで寄り添いながらものづくりをされる方」と表現。自身はとにかくできることを一生懸命やっただけと謙虚に語った。対する齊藤監督は森を「事細かにどうしてほしいという以前に、大橋先生イズムを持っている方」と表現。「森さんがカメラの前に立つと、そこに『ゾッキ』の世界が存在する。本当に稀有な役者さんに重要な役を演じていただけて、それだけで“勝ったな”と思いました」と信頼感をにじませた。また、齊藤監督は3人で一つの作品を手掛けたことについて聞かれると「貴重な経験。原作に対する思いは共通していました。竹中さんとは重なってディレクションする場面もあり、メイキングを撮る上ではもめてほしい雰囲気もありましたが、とてもスムーズに進みました。『ゾッキ』に関わる人はみんな向かっている方向は同じだったのではないかと思います」といい協力関係が築けていたことを伝えた。
松田龍平が裏話を披露「山田監督は終始現場でニヤニヤ」
翻訳の最中などに時折小さく会話を交わし、普段からの仲の良さが垣間見えていた松田と山田監督。松田は山田監督の現場について「本当に楽しかった」と語るも、表情が変わらず会場からは笑いが。すかさず山田監督が「龍平君は感情があまり出ないじゃないですか。だから藤村(役)は龍平君が絶対にいいなと思ってたんです」とフォローに入るチームプレーを見せた。
松田は「山田君は終始現場でニヤニヤしていて、その顔を見るだけで楽しくなっちゃった。僕に対しての演出はニヤニヤし続けるだけなんですけど、僕が関わる他の役者さんには熱い思いをぶつけていたので、それが山田君のやり方なのかな」と“裏話”を披露した。
山田監督は「長編で初めての監督だったので、モニターに松田龍平が映っているだけでニヤニヤしてしまいました。他の方は龍平君ほどではないので、厳しく…」と返し、会場の笑いを誘った。
山田監督は、“普通”ではない今作への想いを改めて聞かれると、再び「基本的に松田龍平を撮る、と。それ以外の方は初監督で舐めてくると思ったので、やってやるよと。第一印象が大事なんです。まずマウントを取らないとと思ったので、全員恐怖でつぶしてやろう、と。よろしくお願いします!!!って(大きな声で)」と冗談を交えて語り、終始会場を沸かせていた。
短編をつなげるのはスリリングで面白い
原作者もすごく好きな映画と絶賛
脚本家の倉持は、30編から成る原作をおりまぜて1本の映画として再構築した今作の執筆を「つなげるのは難しかったけど、スリリングな体験。一つのストーリーが隣の話の批評になっていたり、”秘密”というエピソードがすべての話のテーマになっているような部分もあって面白かったです」と明かした。
そんな脚本・完成作への感想を問われた大橋は「今現在で冷静に観られていなくて、この話とこの話がつながったんだ…と観てしまうのですが、あと2~3回観れば冷静になれるかもしれません。ただ、すごく好きな映画になっています」と、原作者ならではの心境を語った。
また、ロケ撮影を行った蒲郡市の鈴木市長が途中で登場し、撮影時、市民がお弁当の用意や炊き出しの手伝いをしたエピソードを明かすとともに、大橋の故郷でもある蒲郡を舞台に撮影したことへの感謝を制作者たちに伝えた。
観客との質疑応答
自身も演者の監督3人がキャスティングの決め手にしたのは?
続いて同作を観たばかりの観客による質疑応答が行われ、3監督へは普段演じる側の彼らのキャスティングへのこだわりについて質問が。
竹中監督は「昔から直感。その時浮かんだ人がキャストになります。(鈴木)福君は去年一緒に仕事をした時の印象が良くて、フッと自分に入り込んできた人ですね」と回答。山田監督も同じです、としながらも「原作を何度もジーっと観続けている中であの人だ!と。ただ、南沙良さん以外は全員オーディションをしました。その時も話した瞬間の話し方や声が聞こえた瞬間にこの声だ!という感じでした」と、段取りを踏んでいたことを明かした。
齊藤監督は「(担当した)“伴くん”という作品の大ファンでもあるので、とてもとても慎重にやらないとと思いながら、たまたま番組宣伝のバラエティー番組で出会ったコウテイというお笑い芸人の方のネタを拝見して『あ、伴がいる』と」と予想外の出会いだったことを回想。同じエピソードで重要な役柄を演じた森については「もともと僕もファン。表現の世界にいると、どうしても誇張して背伸びした表現が道筋になりがちですが、(森は)地に足がついていて、そこに日常を生み出せる稀有な俳優さん。化学反応がどうなるかって怖さはありましたが、それこそこの『ゾッキ』の世界なんじゃないかと思います」と丁寧に言葉を選びながら語った。
竹中監督が“震える思い”で惹かれた作品映画化に感謝
「必ずやるって夢はちゃんとかなう」
最後は、登壇者を代表し竹中監督による挨拶が。「2018年に倉持さんと舞台をしている最中、(ゲストで登場した俳優の)前野朋哉の楽屋で原作を見つけました。広げたらとても感動してしまって、大橋さんの言葉もそうですが、どこか切なくて、悲しくて、不思議でデタラメで、ちょっと狂ってて、それに震える思いでした。絶対これを映画にしたい!と思って。でもそれが2年後にこうやって形になると、本気で夢を…必ずやるって夢を持っていればちゃんとかなうんだな、と。夢はずっと持ち続けていた方がいいと深く思いました。皆さん今日は本当にありがとうございました」と強い想いを熱い言葉で語り、締めくくった。
途中竹中監督が声音を変えたり、不思議な動きをしたりと終始笑いの絶えないQ&Aは、出演者全員でのフォトセッションを経て終了。映画『ゾッキ』は2021年春に公開予定。
[記者: 深海 ワタル / スチール撮影: Cinema Art Online UK]
イベント情報
第33回 東京国際映画祭(TIFF) TOKYOプレミア2020部門
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映画作品情報
配給: イオンエンターテイメント