- 2019-11-2
- イベントレポート, 日本映画, 第32回 東京国際映画祭, 舞台挨拶
第32回 東京国際映画祭(TIFF)
シネマ歌舞伎『女殺油地獄』特別上映 舞台挨拶
TIFFでシネマ歌舞伎が初上映!
十代目松本幸四郎が舞台挨拶に登場!!
11月2日(土)、第32回東京国際映画祭(TIFF)にて、シネマ歌舞伎『女殺油地獄』(おんなごろし・あぶらのじごく)の特別上映がTOHOシネマズ 六本木ヒルズで行われた。
上映前、主演の松本幸四郎が舞台挨拶に登壇し、この作品や、シネマ歌舞伎というジャンルについて熱く語った。司会進行は笠井信輔アナウンサー。
TIFF初登場の「シネマ歌舞伎」とは?
シネマ歌舞伎『女殺油地獄』が上映されますが、東京国際映画祭で上映されるのは初めてです。シネマ歌舞伎とは、舞台で上演した歌舞伎を映像で撮り、それにいろいろな手を加えることで新たに生まれ変わったものです。実際にお客様がご覧になっている公演を撮影したものなのですが、スクリーンで観ていただけるような演出にしているので、生での舞台とは違う、映像でないと観られない歌舞伎です。
舞台とシネマ、どこが違う?
シネマ歌舞伎にはいろいろな作品がありますが、今回の作品に関しては、まず昨年7月、大阪松竹座で実際にお客様が入った公演を撮影しています。それとは別に、お客様がいらっしゃらない状態でも全部撮影しました。そして、部分的には舞台にカメラを上げて撮ったシーンもあります。
特にクライマックスの殺しの場面は、カメラが3台、4台と舞台に上がりました。また公演中の録音だと、通常はセリフの他に音楽やお客様の反応など、全ての音が同時に録音されてしまいます。今回はそれとは別に、お吉と与兵衛の息づかい、着物が摺れる音、そういうものも録音したいということで、殺しの場面はお客様もいれず義太夫の音楽もなしの状態で撮影しました。
300年前に実際に起きた事件を基にしているって本当ですか?
この作品は歌舞伎の中でも異色の作品で、初演は途中で打ち切られたということです。お客の不入りが理由とも言われますが、油屋さんからクレームがついたのではといううわさもあります。そして、現代ほどこの作品が演じられている時代はないので、近松門左衛門は、書くのが300年早かったということでしょうか。
どんな気持ちで与兵衛を演じていますか?
演じていての精神状態を言いますと、クライマックスの殺しの場面は、最初は恐怖もありながら、それがだんだん快楽に変わっていくんです。
与兵衛という男は確かに破綻した男ですが、逆に本能のままに生きているとも言えます。非人間的で、でもそこが魅力でもある。彼は遊ぶ時でも怒る時でも、嘘をつく時も謝る時100%で、そういう意味では人間的なんです。中途がない。ですから、どの瞬間も与兵衛でいられるように、演じる時は100%出し切ることを心がけています。
これからシネマ歌舞伎を観る人へ一言
作品自体は歌舞伎の演出に則って演じていますが、自分としては映画を撮っているような気持ちでした。ご覧になる方も、始まりは、舞台を撮影しているんだなという感じが強いでしょうが、だんだん映画の世界に入っていき、最初はみんなで一緒に観ていたはずなのに、途中から1人で事件を観ているような感じになってくると思います。終わった時には不思議な感覚になるのではないでしょうか。
この作品を作るにあたって井上監督と、シネマ歌舞伎の可能性について随分話し合いました。その中で、今やれることは最大限のことをしたつもりですが、まだまだ歴史が浅いので、いろいろ実験的な取り組みは始まったばかりです。これからが歴史の始まりです。
皆さんには歌舞伎が映画になったことで、伝統芸能という枠組みではなく、新たなドラマとして楽しんでいただきたいと思います。
[スチール撮影: Cinema Art Online UK / 記者: 仲野 マリ]
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第32回東京国際映画祭(TIFF)
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映画作品情報
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