- 2018-10-28
- イベントレポート, 日本映画, 第31回 東京国際映画祭, 舞台挨拶, 記者会見
第31回東京国際映画祭(TIFF)
コンペティション部門『愛がなんだ』記者会見&舞台挨拶
岸井ゆきの「私全然こういう部分あるな」
監督と作り上げた、片思い女子の不器用な“愛”の形
直木賞作家・角田光代の傑作恋愛小説を恋愛映画の旗手、今泉力哉監督が映画化した、一途過ぎるアラサー女子の全力片思いラブストーリー。
10月25日(木)から開催中の第31回東京国際映画(TIFF)のコンペティション部門に選出された映画『愛がなんだ』(2019 年春公開)。
10月28日(日)、ワールドプレミア上映が東京・六本木ヒルズにて行われ、併せて上映前に記者会見および舞台挨拶が催された。記者会見には今泉力哉監督と主人公テルコを演じた岸井ゆきのが登壇、舞台挨拶ではふたりに加え、テルコの親友・葉子に思いを寄せる青年ナカハラ役の若葉竜也も駆けつけた。
記者会見レポート
記者会見には今泉力哉監督と主人公テルコを演じた岸井ゆきのが登壇。今までは主にオリジナル脚本の作品を撮り続けてきた今泉監督だが、今回は直木賞作家 角田光代の恋愛小説『愛がなんだ』(角川文庫刊)の映画化となる。原作を映画化するために心掛けた点などについて語った。
本作の主人公・テルコを演じる岸井ゆきのは今年で4年連続での東京国際映画祭に参加となる。今泉監督と一緒に悩んで作ったテルコというキャラクタ―について、自身との共通点について話した。
—— 原作を映画化するにあたって、映画に向いてる部分を抽出したのでしょうか?それとも、映画ならではの視点を後から加えていったのでしょうか?
今泉監督: まず、原作の魅力を忠実に映像化していこうと思いました。
ただ、映像ならではの表現をする必要があると思っており、そのために付け加えたエピソードや、少し原作のストーリーをアレンジした箇所もあります。あと、原作は1人称なんですが、その魅力を映画でどう表現したら良いか迷いました。ナレーションを入れすぎると説明が多くなりすぎますし、そのバランスを調整するのが難しかったです。
また、映画の魅力は役者・登場人物の魅力が伝わることだと思っているので、そのために、カット割りを少なくしています。カットを長くする分だけ、見る人にとっての「選択の豊かさ」に繋がると思っているので、出来る限り作り手側の手が加わらないように、意識して長回しを多用している部分はありますね。
—— 撮影中の雰囲気作りはどういったことを意識されましたか?
今泉監督: 自分の中で決めてしまわずに、一度役者さんに演じてもらって、いろんな可能性やアイデアを閉ざさないように役者さんと相談しながら進めました。あと、よく(感情の)温度の話をしてましたね。「もうちょっと好き度をあげてほしい」とか。
岸井: 最初の頃は監督に「答え」を求めにいってしまってたんですけど、そうじゃないなと。監督と一緒に悩んで、そして、そういった戸惑いや迷いこそが主人公のテルコなんだなと思います。「愛」って答えがないものなので、そこに向かって一緒に迷子になっていきながら“テルコ”を作っていけたのはすごく良かったな、と思います。
—— 岸井さんと主人公・テルコとの共通点は?実生活での片思いでは、どのように気持ちを表現しますか?
岸井: ヒトやモノに対して一直線になるところがあり、そこがテルコと似ていると思います。実際に好きな人ができた時は、もういかに自分をバカにするというか「好き好き!」みたいな(笑)。ちょっとふざけたくらいの気持ちで向かっていってしまったりするのかなって思います。
—— 監督ご自身の経験などは映画に反映されていますか?
今泉監督: 今は結婚していますが、恋人がいなかったり、片思いの時期も結構ありました。恋人がいる人、結婚している人が50%ずつ想いあっている、ということは未だに無いと思っています、嫉妬も込めてですけど(笑)。ですので、「想いの差」というのにずっと興味があって、(この作品でも描かれる)“片思い”はその一つの形だと思います。
[記者: 金尾 真里 / スチール写真: © 2018 TIFF]
舞台挨拶レポート
続くワールドプレミア上映では、上映前に舞台挨拶が行われた。500席が満席となった会場には今泉監督と岸井のふたりに加え、テルコの親友・葉子に思いを寄せる青年ナカハラ役の若葉竜也も合流。原作の存在する物語を映画化するにあたっての今泉監督の想いや、岸井が役作りの際に意識したこと、初めて今泉組に参加する若葉の監督への印象などが熱く語られた。
—— これまでオリジナル作品を手がけられることが多かったと今泉監督ですが、今、原作がある物語を映画化するにあたって、いつもと違う心構えはありましたか?
今泉監督: 原作の小説のお話は、プロデューサーの方からいただいたのですが、小説を読んで、自分が今までオリジナルで作っていた片思いや想いの差みたいな物語と非常に近いものを感じました。なるほど、それで自分に話をいただいたのだなとわかって、ぜひやりたいとお返事をしました。
一方で、自分が作っていた映画は恋愛の温度が低い、思いの強くない人たちを描いていたのに対して、本作の登場人物はすごく思いの強い人たちです。思いの強い人を描いたのは、やはり原作をいただいたからというのがあります。今回コンペに選んでいただいたことも含めて、その部分が強さになっているんだとしたら、この原作とやれてよかったなと思います。
—— 本作はとても強い愛を貫く女性を描いた作品です。岸井さんはこの役へのアプローチはどのように取り組まれましたか?
岸井: テルコという人物は自己犠牲をしてまで好きな相手に向かっていってしまう女性なんです。原作を読んで、会社を早退してまで好きな人に会いに行ったりとかすごいな、これはどうしようと思ったんですが、自分がやると思って自分に重ねて読んだときに、「私全然こういう部分あるな」って思って。会社を早退したりとか誇張はされていますけど、好きなものに向かっていく強さっていうのは私にもあるので、そういう部分を自分の中で肉付けしながらテルコと重ね合わせて作っていった部分があります。
—— 先行して行われた東京国際映画祭のオープニングレッドカーペットでの挨拶で、若葉さんは「自分も同じような経験をしたことがある」と自らが演じるナカハラ役について話していましたが、今泉作品への参加のいきさつは?
若葉: 今泉さんのことはずいぶん前から知っていて、ぜひ作品に参加したいなと思っていた監督の一人だったので、すごく光栄に思いました。企画書を読んで、「面白いです、絶対にやりたいです」ってマネージャーに言ったのを覚えています。
原作はあるのですが、ちゃんと今泉さんのカラーが出ていて、素晴らしい作品になっていると思いました。
—— 最後に、監督からこれからご覧になる方に一言お願いします。
今泉監督: 映画には芸術的な側面や社会的な役割があり、世界の映画を見ることで社会を知ることができます。ですが、“娯楽”という部分もあると思っていて、個人的なことを描くことも世界を知ることにつながっていったりすると思います。
すごく個人的な、小さな一人の女性を軸にした恋愛の話ではありますが、これも社会の世界を描いていると思うので、楽しんでいただければと思います。
[スチール撮影: Cinema Art Online UK / 記者: 金尾 真里]
《イベント情報》第31回東京国際映画祭(TIFF) コンペティション部門『愛がなんだ』<記者会見>■開催日: 2018年10月28日(日) <舞台挨拶>■開催日: 2018年10月28日(日) |
第31回東京国際映画祭(TIFF) コンペティション部門
映画『愛がなんだ』記者会見
第31回東京国際映画祭(TIFF) コンペティション部門
映画『愛がなんだ』舞台挨拶
映画『愛がなんだ』予告篇
https://youtu.be/oXc_JlCqQE4
映画作品情報
《ストーリー》28歳のテルコ(岸井ゆきの)はマモちゃん(成田凌)に一目惚れした5ヶ月前から、生活すべてマモちゃん中心。仕事中でも、真夜中でも、マモちゃんからの電話が常に最優先。 けれど、マモちゃんにとっては、テルコはただ都合のいい女でしかない。マモちゃんは、機嫌良く笑っていても、ちょっと踏み込もうとすると、突然拒絶する。今の関係を保つことに必死なテルコは自分からは一切連絡をしないし、決して「好き」とは伝えない。 仕事を失いかけても、親友・葉子(深川麻衣)に冷たい目で見られても、マモちゃんと一緒にいれるならテルコはこの上なく幸せ。テルコの唯一の理解者は葉子に思いを寄せる青年ナカハラ(若葉竜也)。葉子との友達以上恋人未満の関係を壊したくないナカハラは、テルコと同じ悩みを抱え、互いを励ます関係だ。 ある日、朝方まで飲んだテルコはマモちゃん家にお泊まりすることになり、2人は急接近。恋人に昇格できる!と有頂天になったテルコは、頼まれてもいないのに家事やお世話に勤しんだ結果、マモちゃんからの連絡が突然途絶えてしまう。それから3ヶ月が経ったころ、マモちゃんから突然電話がかかってくる。会いにいくと、マモちゃんの隣には年上の女性、すみれさんがいた。 |