- 2017-10-28
- イベントレポート, トークショー, 第30回 東京国際映画祭
第30回 東京国際映画祭(TIFF) マスタークラス
河瀨直美監督スペシャルトークイベント開催!
映画『東の狼』特別上映
「心がざわっと動く瞬間がある映画」と語る河瀨監督と、
村人として暮らした1ヶ月を振り返る藤竜也。
第30回東京国際映画祭(TIFF)マスタークラス「河瀨直美監督スペシャルトークイベント」が10月28日(土)、六本木アカデミーヒルズにて開催された。
TIFFマスタークラスとは、国際的に有名な映画監督が若い映画ファンや若手の映像制作者へ向けたセミナー形式のトークイベント。
今回は、最新作『光』(2017年)が第70回カンヌ国際映画祭でエキュメニュカル審査員賞を受賞し、若手育成にも力を注いでいる河瀨直美監督によるスペシャルトークイベントが行われた。
河瀨監督作品のファンや俳優など、映画を愛する人達で満席。このイベントを楽しみにしていた様子が伝わる熱気あふれる会場。イベントの前半は、河瀨監督がエグゼクティブ・プロデューサーを務めた映画『東の狼』の特別上映と主演の藤竜也とのトークショー、後半は現在に至るまでの過程を河瀨監督が映画作家ならではの視点で伝えるセミナー、最後に来場者からの質問に答えるという充実した内容であった。
『東の狼』は、河瀨監督がエグゼクティブ・ディレクターを務める、なら国際映画祭の映画制作プロジェクトNARAtive(ナラティブ)で、奈良県の魅力を届けるために生み出された作品。キューバ生まれのカルロス・M・キンテラ監督が、河瀨監督最新作『光』でも出演している藤竜也を主演に迎え、メインロケ地の奈良県東吉野村にて完成させた。
映画『東の狼』河瀬直美 ✕ 藤竜也 トークショー
『東の狼』の上映後、エグゼクティブ・プロデューサーを務めた河瀨監督と主演俳優の藤竜也との対談が行われ、映画制作の裏側話に会場全体が聴き入った。
映画の中で存在感を与えていた幻のオオカミについて熱く語る2人。
河瀨監督: オオカミは、映画の中でどういう存在だったのでしょう?
藤竜也: カルロス監督がオオカミは愛だと言っていた。説明しようと言葉にすると本当のことが崩れてしまう気がします。
河瀨監督: 完成した映画にも脚本にも入っていませんが、藤さんがアキラとして猟師会のメンバーに「オオカミは東吉野の魂や!」と言ったセリフが好きでした。魂とはなにか?愛とはなにか?と説明しようとすると理屈っぽくなってしまう。観る側がいろいろ考えさせられる映画です。
藤は撮影の為に1ヶ月、東吉野村の村営住宅に実際に住んでアキラという役に入り込んでいったそう。夜になると辺りを野生の鹿がウロウロする土地で、最初は住民達も騒いでいたが、1週間も経つと、藤自身も村人の1人になっていったという。
藤は「10km先のローソンが唯一の現実とのつながりで、おかしくなりそうだったけど無事生還できました!」と会場を笑いに包んだ。
藤竜也が実際に自身で作業したという鹿の解体シーンには、河瀨監督も驚いた。
藤竜也: 魚はさばいたことがあるけど、鹿はさばいたことがなかった。まさか四肢を取るところまでカットがかからないとは思わなかったよ。
河瀨監督: カルロス監督は、説明をあまりせずに、俳優の表情をじっとワンショットで追う監督。今は情報をできるだけ多く詰め込む映画が多いけれど、ずっと見つめさせる体験は貴重だと思います。その中でざわっと心が動く瞬間があるんです。
心が動く瞬間は、心に残る体験になる。
河瀨監督は、一番心に残っている体験は、「今年の桜は、東吉野で見ます」と藤が『東の狼』への出演を決めた時の言葉だと言って、対談を締めくくった。
《TIFFマスタークラスの続き(後篇)はこちらから》
《イベント情報》<第30回 東京国際映画祭(TIFF) マスタークラス「河瀨直美スペシャルトークイベント」>■開催日: 2017年10月28日(日) |
《河瀨直美監督 プロフィール》映画作家。生まれ育った奈良で映画を創り続ける。大阪写真専門学校映画学科卒業。『につつまれて』(1992年)、『かたつもり』(1994年)で、山形国際ドキュメンタリー映画祭国際批評家連盟賞等を受賞。『萌の朱雀』(1997年)でカンヌ国際映画祭カメラドールを最年少受賞し、『殯の森』(2007年)で審査員 特別大賞グランプリに輝く。その後も同映画祭で、数々の賞を受賞し、2017 年には『光』がエキュメニュカル審査員賞を受賞した。 |
映画『東の狼』予告篇
映画『東の狼』作品情報
《ストーリー》奈良県東吉野村の山の中に住むアキラは、地元猟師会の会長を長年務めるベテラン猟師。 |
監督: カルロス・M・キンテラ(キューバ)
出演: 藤竜也、大西信満、小堀正博ほか
エグゼクティブプロデューサー: 河瀨直美
脚本: カルロス・M・キンテラ、ファビアン・スアレズ、アベル・アルコス
撮影: 山崎裕
配給: HIGH BROW CINEMA