映画『禅と骨』(Zen and Bones) レビュー
映画「禅と骨」(Zen and Bones)

映画「禅と骨」(Zen and Bones)

日系アメリカ人禅僧ヘンリ・ミトワの破天荒な一代記
ドキュメンタリーの概念をぶち壊した渾身の異色作!?

横浜生まれの日系アメリカ人禅僧ヘンリ・ミトワ

京都嵐山の天龍寺に一風変わった青い目の禅僧がいた。僧侶たちからは、仙人や風流人、煩わしさを超えた人、禅僧らしからぬ禅僧と称賛されている。その名は、ヘンリ・ミトワ。1918年に横浜でアメリカ人の父と新橋の芸者だった母の間に生まれた日系アメリカ人。1940年に単身渡米し、戦時中は適性外国人として、日系人強制収容所を転々とする。戦後はロサンゼルスで幸せな家庭を築き、1961年に帰国する。母の生まれ育った日本文化を愛し、茶道や陶芸、文筆にも優れた才能を発揮する。古都で多彩な文化人たちに囲まれながら、悠々自適な晩年を送るはずだった彼のハートに、突如として「赤い靴をモチーフにした映画作り」という情熱の火がついた。彼の映画を撮りたいという強引で純粋な思いが、家族や周辺の人々を巻き込み、映画人も巻き込んでゆく。

どんな仕事をしていても、その道を極めていけば、全ては禅に通じていく

『禅と骨』は、2006年に公開され大ヒットしたドキュメンタリー長編映画『ヨコハマメリー』が初監督の中村高寛(たかゆき)監督の第2作目の長編作品として、第1作目から11年ぶりに、8年もの歳月を費やして完成させている。本作は、ドキュメンタリーにドラマやアニメなど、様々なジャンルを縦横無尽に駆け巡る異色の映画となっている。ドキュメンタリーとは何か、映画とは何かという命題に、これまでのドキュメンタリーの概念の全てを一旦ぶち壊して、再合成する中村監督の姿は、映画という道で禅を追求しているようだ。

ドキュメンタリーでは、晩年映画作りに奔走するヘンリ・ミトワとその家族の日々を追う。ドラマパートでは、青年時代のヘンリをウエンツ瑛士、母親を余貴美子が演じる。挿入されたアニメーションは、今日マチ子がキャラクター原案を行い、ナレーションは仲村トオルがつとめる。他にも、錚々たる俳優やアーティストたちがサポートを行っている。

『禅と骨』は、日系アメリカ人ヘンリ・ミトワという破天荒な京都の禅僧の一代記がテンポ良く楽しめて、ドキュメンタリーや映画とは何かという問答を秘めたとても面白い作品である。

《ストーリー》

1918年、アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれた日系アメリカ人のヘンリ・ミトワ。単身渡米して、戦時中は適性外国人として、日系人強制収容所を転々とする。戦後はロサンゼルスで幸せな家庭を築き、1961年に日本へ帰国。日本文化をこよなく愛して、茶道や陶芸、文筆にも優れた才能を発揮する。天龍寺の禅僧として、古都で多彩な文化人たちに囲まれながら、悠々自適な晩年を楽しむはずが、突如として赤い靴をモチーフにした映画を作りたいと、80歳を前にして、夢の実現化へ動き出す。彼の強引で純粋な映画への熱意が、家族や周辺の人々を巻き込んでゆく。

[ライター: おくの ゆか]
 

映画『禅と骨』予告篇

映画作品情報

監督/構成/プロデューサー: 中村高寛
プロデューサー: 林海象
ドラマパート出演: ウエンツ瑛士、余 貴美子
ナレーション: 仲村トオル
音楽: 中村裕介×エディ藩・大西順子・今野登茂子・寺澤晋吾・武藤イーガル健城
挿入曲:「赤い靴」岸野雄一×岡村みどり×タブレット純、「京都慕情」岸野雄一×重盛康平×野宮真貴
エンディング曲:「骨まで愛して」コモエスタ八重樫×横山剣(CRAZY KEN BAND)
2016 年 / 127 分 / HD 16:9 / 5.1ch
配給: トランスフォーマー
© 大丈夫・人人 FILMS
 
2017年9月2日(土)より、
ポレポレ東中野、キネカ大森、横浜ニューテアトルほか全国順次公開!
 
映画公式サイト
公式Twitter: @zenandbonesfilm
公式Facebook: www.facebook.com/zenandbonesfilm/

この記事の著者

おくの ゆかライター

映画好きの父親の影響で10代のうちに日本映画の名作のほとんどを観る。
子どものときに観た『砂の器』の衝撃的な感動を超える映像美に出会うために、今も映画を観続けている。

★好きな映画
『砂の器』[監督: 野村芳太郎 製作: 1974年]
『転校生』[監督: 大林宣彦 製作: 1982年]
『風の谷のナウシカ』[監督: 宮崎駿 制作:1984年]
『硫黄島からの手紙』(Letters from Iwo Jima) [監督: クリント・イーストウッド 製作: 2006年]

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