不寛容な時代を生きる私たちの魂を揺さぶる感動作!
今日もどこかで起きている戦争の残虐で非人道的な深い闇の中、かつて国籍や宗教を超えて崇高な女性たちが光をみいだした絆を描いた史実の物語。
第二次世界大戦が集結したポーランドの修道院であった衝撃の事件とは。
『夜明けの祈り』は、1945年のポーランドで実際に存在した女性医師の記録をベースにしている。ワルシャワの廃墟と化したフランス病院のチーフドクターに任命された赤十字の女性医師マドレーヌ・ポーリアックは、ソ連軍が分娩中のみならず、出産直後の女性たちを乱暴していたという産科病棟での恐るべき事実を知る。修道院でも25人の修道女がソ連兵から性的暴力を何度も受けて、20人が殺されて、5人が妊娠していた。中には、40回も襲われた者もいた。公表されていない歴史的な事実を『ドライクリーニング』(1997年)、『ココ・アヴァン・シャネル』(2009年)のアンヌ・フォンテーヌ監督が母性と信仰を追求し、絶望的な状況下での女性たちの内面に情熱をかけて可能な限り近づいた最高傑作である。
際立つ清廉さと崇高さの映像美に、あなたは神聖な美術館で心と魂が大きく揺さぶられる感動を味わうだろう。
苦悩する修道女たちをうつす映像は、闇の中に輝く光のように美しく、どのシーンも美術館に飾られた巨匠の宗教画をみているようだ。
フランスのアカデミー賞と呼ばれるセザール賞で作品、監督、脚本、撮影の4部門にノミネートされたこの最新作は、実際にポーランドの修道院で起こった衝撃的な出来事をベースに、筆舌しがたい苦難に立ち向かった勇気ある女性たちの軌跡を映像美とともに伝えている。
アンヌ・フォンテーヌ監督は、撮影にあたって修道院で修練者として生活をして、信仰と現実の間で苦悩する修道女たちの内側をリアルで繊細に描写した。
『神々と男たち』(2010年)でセザール賞最優秀撮影賞、『ホリー・モーターズ』(2012年)でシカゴ国際映画祭最優秀撮影賞を受賞したカロリーヌ・シャンプティエ撮影監督が魂に響く美しい感動の名画に仕上げている。
マチルド医師役のルー・ドュ・ラージュの医師として生命を救う使命感によって、危険を顧みずに人道支援に身を投じてゆく姿は、みるものに勇気と希望を与えるだろう。
肖像画のように美しいシスター・マリア役のアガタ・ブゼクたちのどんなに悲惨な状況にあっても、誰も責めず、誰も憎まず、ただ神に祈りを捧げる修道女たちの世界へと、私たちをいざなう芸術的作品である。
《ストーリー》
1945年12月のポーランドで、赤十字の施設で負傷兵への医療活動を行うフランス人女性医師のマチルド(ルー・ドュ・ラージュ)のもとに、わらをもすがる思いのシスターが助けを求めにやってくる。
一度は断るものの、マチルドは、凍てつく雪の中のシスターの神への祈りを捧げる献身な姿に心を動かされて、遠く離れた修道院へと出向いてゆく。
そこで彼女は、信仰と妊娠が両立しえないはずの修道女たちがソ連軍のおぞましい蛮行によって身ごもり、崇高な信仰と残虐な現実の狭間で苦悩する様を目の当たりにする。
「人に知られたら修道院は閉鎖され、恥をさらすことになる」と頑なにマチルドの支援を拒絶する院長。
「すべては神の意のまま」と誰も責めず、ただ神の赦しを請う生死の境目にある修道女たちとそのお腹の子どもたち。
唯一、みなが出払っている夜明けの祈りの時間にシスター・マリア(アガタ・ブゼク)のはからいで修道院でこっそり診察をするマチルド。
無心論者で科学者でもあるマチルドは、かけがえのない生命を救う使命感に駆られて、困難に直面しながらも、激務の合間を縫って修道院に通う。
往診中にマチルドを襲ったある事件をきっかけに、修道女たちの葛藤を心から理解して、彼女たちとの距離感を徐々に縮めながら、確実に絆を深めていく。
図らずも母親となったシスターたちとその子どもたち、修道院の未来のために、マチルドとシスター・マリアたちが生きるためにとった驚きの行動とは・・・
[ライター: おくの ゆか]
映画『夜明けの祈り』予告篇
映画作品情報
第33回サンダンス映画祭 公式上映作品
フランス映画際2017 出品
音楽: グレゴワール・エッツェル
撮影: カロリーヌ・シャンプティエ
ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他全国順次公開!
公式Facebook: @yoakeinori