映画『きみはいい子』レビュー
【画像】映画『きみはいい子』メインカット

映画『きみはいい子』

どうか世界をあきらめないで。それをみつけて。  

『そこのみにて光輝く』(2014年)で第38回モントリオール世界映画祭の最優秀監督賞を受賞した呉美保監督が、2013年本屋大賞で第4位にも選ばれた中脇初枝の同名短編小説集を映画化。5つの短編から成る原作から、「サンタさんの来ない家」「べっぴんさん」「こんにちは、さようなら」という3編を1本の映画にした。

真面目だがクラスの問題に正面から向き合えない新米教師や、幼い頃に受けた暴力がトラウマになり、自分の子どもを傷つけてしまう母親など、子どもたちやそれに関わる大人たちが抱える現代社会の問題を通して、人が人を愛することの大切さを描き出す。出演は高良健吾、尾野真千子のほか、『そこのみにて光輝く』に続いての呉監督作となる池脇千鶴、高橋和也ら。

《ストーリー》  

新米教師の岡野(高良健吾)は、ひたむきだが優柔不断で、問題があっても目を背け、子供たちから信用されていない。雅美(尾野真千子)は夫の単身赴任で3歳の娘と2人で生活し、娘に暴力を振るってしまうことがあった。一人暮らしの老人あきこ(喜多道枝)はスーパーで支払いを忘れ、認知症を心配するようになる。彼らは同じ町で暮らしており様々な境遇に心を痛めている。

《みどころ》

さわやかで、純粋で、半人前、主人公高良健吾演じる新米教師が現実味のある色温度のえぐい世界で生きているそのバランスが良い。様々な境遇で心の痛みが増していく。それは非日常や映画の世界の話ではなく私たちのもっともありふれた世界そのものなのが恐ろしい。人はみなそれぞれ自分の環境下で大変だ。そう大変で疲れていて心を亡くしそうになってしまう。人を信じれなくなって嫌になってもうすべて投げ出したくなるくらいに…それでも、人が与えてくれる優しさや温もりによって人は救われるのだろう。この映画は言葉では伝えることができないそれを表している。どんな人にも観てもらいたい本当に素晴らしい映画だ。

[ライター: A.J. Yoshimura]

© 2015 「きみはいい子」 製作委員会

映画『きみはいい子』予告篇

映画作品情報

【画像】映画『きみはいい子』 DVDジャケット

第37回 モスクワ国際映画祭 コンペティション部門出品作品
 
邦題: きみはいい子
 
出演: 高良健吾、尾野真千子、池脇千鶴、高橋和也、喜多道枝、黒川芽以、内田慈、松嶋亮太、加部亜門、富田靖子
 
監督: 呉美保
原作: 中脇初枝「きみはいい子」(ポプラ社刊)
製作: 川村英己
プロデューサー: 星野秀樹
脚本: 高田亮
音楽: 田中拓人
メインテーマ: “circles” (selective records) Takuto Tanaka featuring Vasko Vassilev
配給・製作プロダクション: アークエンタテインメント株式会社
宣伝: シャントラパ / 太秦
劇場公開日: 2015年6月27日
© 2015 「きみはいい子」 製作委員会
 
映画公式サイト
 
公式Twitter: @iiko_movie
公式Facebook: @iiko.movie

この記事の著者

A.J. Yoshimura作曲家、アクター、ライター

アメリカのロサンゼルス生まれ、ワシントン州育ち。
南カリフォルニア大学では音楽と心理学を専攻、21歳で大学卒業。
2006年にロサンゼルスから東京へ活動の拠点を移す。女優としてCM、ドラマ、映画出演やモデルと活動の幅を広げ作詞・作曲も手掛けつつ、翻訳者もライターとしても活躍する。

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