幸せは人によって様々なカタチが存在する―
これは平凡な叔父と偉才の姪が、笑いと涙を交えて教えてくれる人生の福音です。
《ストーリー》
メアリー(マッケナ・グレイス)はわずか7歳で平方根の暗算をいとも簡単にしてしまうほどの数学(算数ではない)の天才児だ。だが彼女の叔父のフランク(クリス・エヴァンス)は、その才能をひたすら隠し平凡な小学生として生活を送ることを望んでいた。そこには亡き姉ダイアンとのある約束があったのだ。だが、能ある鷹でも子供であればそうそう爪を隠せない。小学校に初登校した日、さっそくメアリーは担任のボニー(ジェニー・スレイト)が出す問題を次々と即答し、やりこめてしまう。
やがてメアリーの異才ぶりは徐々に知られるようになり、フランクは小学校の校長から突出した才能のための教育「ギフテッド教育」で名高い学校への転校を勧められる。だが、あくまでも姉との約束を果たすことがメアリーの幸せにつながると考えているフランクは、その申し入れを即座に拒否した。結局、そのまま学校へ通うことになったメアリーは、徐々に学校へ馴染んでいくようになる。そんなある日、家の前に一人の老女がフランクとメアリーを待ち構えていた。彼女こそ、これまでずっと疎遠であったメアリーの祖母・イブリン(リンゼイ・ダンカン)であった―
《みどころ》
初めて長編映画のメガホンをとった『(500)日のサマー』(2009年)でセンセーショナルなデビューを飾り、アメコミ映画の名作「スパイダーマン」のリブート作を見事に手掛けたマーク・ウェブ監督。そんな彼が復活の狼煙を上げるかのごとく、世に送り出した意欲作が本作『gifted/ギフテッド』だ。平凡な生活を丁寧におうことで、非凡な感動を創り出した手腕はさすがのひとこと。フランクとメアリーを中心に織りなす日常の物語は “家族とは何か?” “幸せとは何か?”― 観る人に問いかけてやまない。そして、観る人の心を掴んで離さない鮮やかな出来栄えだ。
唯一、メアリーの超人的な数学の才能だけは非日常的であるが、このメアリー役をつとめたマッケナ・グレイス嬢がとてもキュートで、ついつい目を奪われてしまう。ピカピカの小学生入りたての児童が次々に難解な問題を解いていくという、非常に難しい役どころであるのだが、それを微塵も感じさせないポップで自然な演技は、末恐ろしい才能と言っていい―まさに演技の「天才」だ。
また、紹介がすっかり後に回ってしまったが、主演は「キャプテン・アメリカ」シリーズで日本でもすっかりお馴染みとなったクリス・エヴァンス。フランクは、厳格で端正な“キャプテン”とは対照的な風貌であるせいか、これまでとは一味違う魅力を醸し出している。映画の中でも枯れてワイルドな風采がかえって女性を虜にするような場面があるが、本作はまさにクリスの新たなセクシーさを見出した作品とも言えよう。
他にも隣人の良き理解者として、映画『ドリーム』(2016年)で人種差別と闘った傑女を演じたオクタヴィア・スペンサーが登場したり、メアリーの祖母役に映画『アバウトタイム~愛おしい時間について~』(2013年)で風変わりな母親役を演じたリンゼイ・ダンカンが配されたりするなど、派手さはないものの堅実なキャスティングが、かえって素朴といっていい本作の良さを引き出してくれる。
キャスト・スタッフが一体となって、身の回りにある材料で極上の物語を創り上げた本作。子の親権や養育権を裁判で争う話は、幾度となく映画の舞台として取り上げられたものかもしれない。だが、善悪はっきりさせるといった単純な法廷譚ではない。登場する人物が皆メアリーの幸福を願いながらも、それぞれ違うアプローチで行動し、そして葛藤してしまう。観ている我々は、その一人一人の思いやりと苦しさがわかるからこそ、涙してしまうのだ。
[ライター: 藤田 哲朗]
© 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
映画予告篇/特別映像 “AccomplishedCast”
映画作品情報
キャスト: クリス・エヴァンス、マッケナ・グレイス、ジェニー・スレイト、リンゼイ・ダンカン、オクタヴィア・スペンサー
全米公開: 2017年4月12日
配給: 20世紀フォックス映画
© 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー!
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