映画『エマの瞳』(Il colore nascosto delle cose) レビュー

【画像】映画『エマの瞳』(Il colore nascosto delle cose) メインカット

映画『エマの瞳』(Il colore nascosto delle cose)

「見えない」を体験する場所で知り合った大人の恋のゆくえ

第74回ヴェネチア国際映画祭のアウト・オブ・コンペティション部門で世界初ワールドプレミア上映された、イタリアの名匠シルヴィオ・ソルディーニ監督の最新作『エマの瞳』(原題:Il colore nascosto delle cose)が3月23日(土)より全国公開された。

イタリア・ローマを舞台に自立して生きる盲目の女性・エマと典型的なプレイボーイのテオ。2人の恋愛を盲目の人々のリアリティ溢れるエピソードを織り交ぜて描いた本作は、本国イタリアでもスマッシュヒットを記録。日本での劇場公開に先立ち上映されたイタリア映画祭2018(朝日新聞社主催)でも好評を博した。

実績あるスタッフ・キャストが「見ること」「見えること」の意味を問う野心作となっている。

【画像】映画『エマの瞳』(Il colore nascosto delle cose) 場面カット6

《ストーリー》

イタリア、ローマ。広告代理店に勤める一人暮らしのテオ(アドリアーノ・ジャンニーニ)は、典型的なプレイボーイ。自分が会いたい時だけ恋人や愛人と一緒に過ごし、普段は仕事中心の生活を謳歌している。ある日テオは、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」(DID)のワークショップに参加する。健常者のテオにとって、杖だけを頼りに聴覚や嗅覚を駆使する体験は刺激的だった。真っ暗な会場で出会ったのが、アテンドスタッフとして働いていたエマ(ヴァレリア・ゴリノ)だ。エマは思春期に視力を失った女性で、オステオパシー(理学療法士)の施術者として働いていた。ハンディを負いながらも自立した生活を営むエマに惹かれ、テオは二人の関係を深めていく。だが、エマと買い物をしている時、恋人の一人、グレタと鉢合わせしてしまう。テオの口からとっさに出た「ボランティアをしている」という言葉に深く傷ついたエマは、テオとの連絡を絶ってしまう。テオは、エマと過ごした日々を振り返り、今まで疎遠にしていた大切な人たちに向き合う決意をするのだった。

【画像】映画『エマの瞳』(Il colore nascosto delle cose) 場面カット4

《みどころ》

オープニングは、暗がりの中で人々が何やら楽しげな会話をしているシーン。ダイアログ・イン・ザ・ダークのワークショップ風景のひとコマだ。暗闇の中では健常者と盲目の人との差はない、というメッセージが伝わってくる。

監督はイタリアの名匠、シルヴィオ・ソルディーニ。2000年に公開された『ベニスで恋して』が第53回カンヌ国際映画祭の監督週間での上映をはじめ多くの国際映画祭へ出品されたほか、世界各国で配給され、第45回ダヴィッド・ドナテッロ賞9部門受賞、第50回イタリア・ゴールデングローブ賞(Globi d’Oro)2部門受賞など、ヨーロッパでは知名度が高い。

2013年に視覚障がい者の生活を追ったドキュメンタリー『多様な目』を公開。この時の経験が『エマの瞳』を撮影するきっかけとなったそうだ。障がいのある人は、悲劇の人生を送っているわけではなく、我々と同じように日常生活を堂々と楽しんでいる事を映画にしたかったという。

【画像】映画『エマの瞳』(Il colore nascosto delle cose) 場面カット7

エマを演じたヴァレリア・ゴリノは、ヴェネチア国際映画祭で2度の主演女優賞に輝いた演技派女優。撮影前に「方向感覚と移動性向上」の講習を受け、市街地の歩き方や白杖の使い方、どうやって新しい空間を知るか、などを徹底的に教わったそうだ。さらに瞳を濁らせるためのコンタクトレンズを装着している。白杖を見事に使いこなし、あちらこちらに躓きながら歩く様子には、目が釘付けになる。エマが自分の与えられた現実をしっかりと“見つめられる”自立したチャーミングな女性として描かれている。

【画像】映画『エマの瞳』(Il colore nascosto delle cose) 場面カット2

それに対しテオは、目は“見えている”のに現実は“見えていない”、もしくは“見ようとしない”男性として登場する。場面に応じて調子よく振る舞うテオは、自分にとって都合の良いことには積極的だ。いざ責任を取る段になると雲隠れするような人物。そんな無責任男のテオが、最初に好奇心からエマを訪ねたはずなのに、エマの拒絶に感情を揺さぶられ、自分の恋心をどう扱えばよいのか途方に暮れる。

【画像】映画『エマの瞳』(Il colore nascosto delle cose) 場面カット3

自分の外見は、鏡を通してしか見ることができない。同じように内面も、他者からしか見えないものがあるように思える。自分の知らない自分を見せられたとき、人はどう感じ、どう生きるのだろうか。テオはエマが内面だけを“見る”ことで気に入ってくれたもう一人の自分に気づかされ、それを意識し、突き動かされるように自分の人生と向き合うようになる。

【画像】映画『エマの瞳』(Il colore nascosto delle cose) 場面カット1

演じるのはアドリアーノ・ジャンニーニ。イタリアの名優ジャンカルロ・ジャンニー二の次男だ。父親の主演作品『流されて…』(1974年)のリメイク『スウェプト・アウェイ』(2002年)で、父の演じた役をアメリカの歌姫マドンナと共演している。

【画像】映画『エマの瞳』(Il colore nascosto delle cose) 場面カット8

二人の恋のゆくえと同時に、自分が本当に“見える”のかどうか猛烈に気になってくる映画である。

[ライター: 花岡 薫]

ダイアログ・イン・ザ・ダーク (Dialogue In the Dark / 略称:DID) とは?

日常生活のさまざまな事柄を暗闇の空間で、聴覚、触覚や嗅覚など、視覚以外の感覚を使って体験するエンターテインメント形式のワークショップ。世界41カ国以上で開催され、800万人を超える人々が体験。日本でも20万人以上が体験している。

映画『エマの瞳』予告篇

映画作品情報

【画像】映画『エマの瞳』(Il colore nascosto delle cose) ポスタービジュアル

 
第74回ヴェネチア国際映画祭 アウト・オブ・コンペティション部門 正式出品作品
 
原題: Il colore nascosto delle cose
英題: EMMA
 
出演: 
ヴァレリア・ゴリノ(エマ)
アドリアーノ・ジャンニーニ(テオ)
アリアンナ・スコンメーニャ(パッティ)
ラウラ・アドリアーニ(ナディア)
アンナ・フェルツェッティ(グレタ)
アンドレア・ペンナッキ(パオロ)
ベニャミーノ・マルコーネ(フラヴィオ)
マッティア・スブラジャ(ヴィットリオ)
ヴァレンティーナ・カルネルッティ(ステファニア)
ジュゼッペ・チェデルナ(深夜のタクシードライバー)
ロベルト・デ・フランチェスコ(スーパーマーケットでのタクシードライバー)
 
監督・原案・脚本: シルヴィオ・ソルディーニ
原案・脚本: ドリアーナ・レオンデフ、ダヴィデ・ランティエーリ
撮影監督: マッテオ・コッコ
編集: ジョルジョ・ガリーニ、カルロッタ・クリスティアーニ
美術: マルタ・マッフッチ
衣装: シルヴィア・ネビョーロ
録音: フィリッポ・ポルカーリ
音楽: ジャンルイージ・カルローネ
製作: リオネッリ・チェッリ
製作会社: リュミエール&Co.、ライ・チネマ、ヴェントゥーラ・フィルム、RSI(スイス放送協会イタリア語放送)/SRG SSR(スイス放送協会)
 
2017年|イタリア・スイス|カラー|117分|イタリア語|ビスタ|5.1ch|日本語字幕:林みわ

配給: マンシーズエンターテインメント
後援: イタリア大使館、イタリア文化会館
© Photo by Rocco Soldini
 
2019年3月23日(土)より
新宿武蔵野館、横浜ジャック&ベティほか全国ロードショー!
 
映画公式サイト
 
公式Twitter: @emmahitomi 
公式Facebook@emmanohitomi

この記事の著者

花岡 薫

花岡 薫ライター

自分にとって殿堂入りのスターは、アラン・ドロン。思い起こせば子どもの頃から、愛読書は「スクリーン」(SCREEN)と「ロードショー」(ROADSHOW)だった。朝から3本立てを鑑賞し、英語のリスニング対策も映画(洋画)から。お腹が空くまで家には帰らなかったあの日々が懐かしい。
今も変わらず洋画が大好きで、リチャード・ギア、ロブ・ロウ、ブラッド・ピットとイケメン王道まっしぐらな性格も変わらず。目下の妄想相手はアーミー・ハマー。カッコいい俳優さんたちが、人生の好不調に耐えて充実した50代を迎えられる姿を、陰ながら応援をしていきたい。

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