映画『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』レビュー
【画像】映画『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』メインカット

映画『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』

シーツの穴から覗く、愛と忘却と幽霊の関係

『ムーンライト』(2017年)、『レディ・バード』(2018年)など話題作を続々と配給し続けている北米の映画会社A24。今、世界から最も注目を浴びる同社が選んだ次の題材は、斬新ながらもどこか懐かしさを感じさせるシーツ姿のゴーストが主人公の物語。これまでありそうでなかった、ゴーストの視点から見た「死後の世界」。死んでしまった者の魂は、その悲しみは、いったいどこへ行き着き、どのように消化されるのか?自分のいなくなった世界で、残された妻を見守り続ける、ひとりの男の切なくも美しい物語『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』が11月17日(土)に全国ロードショーとなる。

【画像】映画『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』場面カット

不慮の事故死を遂げ、シーツ姿のゴーストとなって彷徨い続ける夫を演じるのは、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2016年)で第89回アカデミー賞®主演男優賞を受賞したケイシー・アフレック。夫に先立たれ、悲しみに暮れる妻を演じるのは『キャロル』(2015年)で第68回カンヌ国際映画祭コンペティション部門の女優賞を受賞したルーニー・マーラ。本作の監督デヴィット・ロウリーの『セインツ -約束の果て-』(2017年)でも共演した、ふたりの超実力派俳優が再び集結した。

 

第33回サンダンス映画祭の観客賞を筆頭に、世界各国の映画祭でノミネート&受賞、米映画批評サイト「Rotten Tomatoes」では驚異の91%の大絶賛を受けた話題作が、この秋ついに日本公開を迎える。

《ストーリー》

アメリカ、テキサスの郊外。若い夫婦が一軒家で幸せに暮らしていた。作曲家の夫C(ケイシー・アフレック)は、その家をとても気に入っている。かたや妻M(ルーニー・マーラ)は、どこか別の場所に移りたい様子。そんなある日、夫は自宅前で不慮の事故に遭い、死んでしまう。妻は病院で死体を確認した後、遺体にシーツを被せてその場を立ち去る。自宅に戻り、悲しみに打ちひしがれる妻。その様子をじっと見守るのは死んだはずの夫だ。彼はシーツを被ったままの姿で幽霊となり、家に帰って来たのだった。けれども妻は夫の存在に気付いていない。やがて妻は、前を向いて進む決心をする。それを契機に、残された夫は愛する者への思いを胸に彷徨い始める。

【画像】映画『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』場面カット

《みどころ》

この映画は、観た人の想像力や感じ方に解釈が委ねられている、斬新なアート映画だ。そのため、性別、年齢、パートナーの有無により、受ける印象が全く異なってくる。愛と感動のロングセラー絵本「100万回生きたねこ」に似たところがあるかもしれない。つまり西洋版「魂の成仏」について描かれている。自分がこの世から居なくなった後、人生に何を遺せるのかを啓示的、詩的に問いかけてくる。

【画像】映画『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』場面カット

主人公は、シーツを頭からすっぽりと被った若い男性の幽霊。スクリーンは通常の画角ではなく角の取れた四角で、覗き見している気分満点である。自分の愛する人が自分の記憶を忘れ去っていく様子をこっそり、しかもマジマジと見られる。

【画像】映画『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』メイキングカット

感傷的な要素はなく、淡々と切ない音楽と共に描かれている。全体を通じて台詞がほとんどない。よって、次々と頭の中に言葉が浮かぶ人もいるだろう。部屋の隅にピアノが置かれ、幽霊は隅っこに佇むというのが基本の構図で、場面に合わせた音楽が流れるのみ。但し、生活音は聞こえてくる。監督のデヴィッド・ロウリーは、作品を通じて時間と愛、執着と忘却を描いている。この映画を観終った後、パートナーと感想を話し合ってみると意外な相性がわかるかもしれない。

 
[ライター: 花岡 薫]

映画『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』予告篇

映画作品情報

【画像】映画『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』ポスタービジュアル

監督: デヴィッド・ロウリー
出演: ケイシー・アフレック、ルーニー・マーラ
配給: パルコ
© 2017 Scared Sheetless, LLC. All Rights Reserved.
 
2018年11月17日(土) 全国ロードショー!
 
映画公式サイト
 
公式Twitter: @aghoststory_pr
公式Facebook: @aghoststoryJP
公式Instagram:@a.ghost.story1117

この記事の著者

花岡 薫ライター

自分にとって殿堂入りのスターは、アラン・ドロン。思い起こせば子どもの頃から、愛読書は「スクリーン」(SCREEN)と「ロードショー」(ROADSHOW)だった。朝から3本立てを鑑賞し、英語のリスニング対策も映画(洋画)から。お腹が空くまで家には帰らなかったあの日々が懐かしい。
今も変わらず洋画が大好きで、リチャード・ギア、ロブ・ロウ、ブラッド・ピットとイケメン王道まっしぐらな性格も変わらず。目下の妄想相手はアーミー・ハマー。カッコいい俳優さんたちが、人生の好不調に耐えて充実した50代を迎えられる姿を、陰ながら応援をしていきたい。

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