ウィリアム・カムクワンバ × 鈴木福トークイベント
鈴木福「僕らの世代にこそ観て欲しい」
「実話って信じられないくらい、驚きと感動がある映画」
世界23カ国で翻訳された実話ベストセラー『風をつかまえた少年』(原題:The Boy Who Harnessed the Wind)を第86回アカデミー賞® 作品賞受賞『それでも夜は明ける』主演のキウェテル・イジョフォーが初監督で映画化した。8月2日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他全国順次公開となる。
日本でも2010年に出版された1冊のノンフィクション「The Boy Who Harnessed the Wind」(邦題:風をつかまえた少年)は、池上彰氏やアル・ゴア米元副大統領からも絶賛され、大ベストセラーを記録している。干ばつによる貧困で中等学校を退学になった14歳の少年ウィリアムが、人口のわずか2%しか電気を使うことが出来ない、世界で最も貧しい国と呼ばれるアフリカのマラウイで、自分の頭脳と手だけを頼りに風力発電の装置を作り、自家発電することに成功した。彼は家族と村の人々を救うだけではなく、大学へ進学し、様々な活動を通して2013年にタイム誌の「世界を変える30人」に選ばれるという素晴らしい人生も手に入れた。世界を魅了した彼の物語は日本の中学の英語教科書「NEW CROWN 3」にも取り上げられた。
この現代の奇跡に感銘を受けた名優キウェテル・イジョフォーが、10年の歳月をかけて初監督作品として映画化を実現した。2019年にサンダンス国際映画祭を皮切りに、ベルリン国際映画祭でも公式上映され熱い喝采を浴び、NYのプレミア試写会では、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR:The Office of the United Nations High Commissioner for Refugees)特使も務める、名女優アンジェリーナ・ジョリーからも、愛情に満ちた賞賛を贈られている。
日本公開に先立ち、“奇跡の実話”の原作者ウィリアム・カムクワンバ氏(31歳)が初来日!
7月11日(木)にユニセフ・シアター・シリーズとして上映する本作の試写会に登壇し、ユニセフのハンド・イン・ハンド募金キャンペーンにも協力・賛同する鈴木福とトークイベントを行った。
15歳になったばかりの鈴木は、本作に「今日本で不自由なく学ぶことが出来て、暮らせている自分がどれだけ幸せ者かがよくわかる作品でした」(一部抜粋)とコメントを寄せている。
《トークイベントレポート》
鈴木福、目の前にいる奇跡の主人公にワクワク
映画の上映が終わり感動に包まれた会場で、原作者でありこの奇跡の実話の張本人であるウィリアム・カムクワンバ氏と、本日の特別ゲストである鈴木福が、大きな拍手に迎えられながら登壇した。
まずカムクワンバ氏は日本語で「こんにちは」と挨拶をすると会場からも子どもたちの声で「こんばんは」と大きな返事が返ってきた。和やかな雰囲気の中トークイベントが始まった。
カムクワンバ氏から「皆様に映画をご覧いただき大変光栄です。今回の来日では多くの方にお会いしたり、美味しい日本食を楽しんだりしています。ありがとうございます」と観客へ向け丁寧な挨拶をした。そして、2011年ドラマ『マルモのおきて』に友樹役で出演し、国民的子役となった鈴木福は挨拶とともに、本作について「この映画を観て、こうやって飢餓に苦しみながらも、自分の地元マラウイを守りたいという気持ちから、皆んなが協力をすれば何でもできるんだなと驚いています。本当に感動して、とても尊敬しています」と、今回の対談の喜びをカムクワンバ氏に伝えた。
マラウイの14歳と日本の14歳の意識
映画の主人公カムクワンバ氏が風力発電を作った当時は14歳。鈴木は、6月7日に15歳の誕生日を迎えたばかりの同世代だ。本作を観て「日本にいると、学校に当たり前に行けて、たまに「学校イヤだなぁ」という時も僕もたまにあります。そういう中で、世界には同い年ぐらいの子で「学校に行きたい」「学びたい」という人がいて、こうやって世界を変えられる。僕とほぼ変わらない年齢の人でもそういうことができるんだと思うと、本当にすごいなと、カッコイイなと思います」と感想を述べた。「同い年くらいの友だちも、夢がまだ決まっていないという子は多い。だから、僕らの世代にこそぜひ観て欲しい。これが実話ってことが本当に信じられないくらいに、驚きと感動がある映画です」と素直な気持ちを伝えた。
映画からもらえるチャレンジ精神
また、鈴木からカムクワンバ氏に「この映画を観ると僕が体験したことのない辛さがあると思うし、想像することすら難しいとは思うのですが、今まで生きてきた中で一番大変だったことはなんですか?」という質問が飛び出した。カムクワンバ氏は「まさに映画で描かれている時期が辛かったです。でも、誰かがやってきて、問題を解決してくれるのを待つのではなく、自分の問題に対して自らが長期的な解決法を見つけたいという気持ちで、希望を持つことができたんです。世界の誰かが作れたのなら、きっと自分も作れるはずなんです」と答えた。
また、「映画を作ることは、ある意味、自分の辛い過去を再び生き直さなければいけないという側面があった。でも同時に、友達と過ごしたあの時間や、風車を作っていたワクワクする気持ちを思い出したりもしました」と、映画が製作されたことについての素直な気持ちを語った。
イマジネーションを駆使した風車作り
さらに、風車を作るにあたって一番困難だったことについて聞かれると 「材料探しが一番大変でした」と告白した。「お金がなかったし、手にした本にも何が必要な材料が描かれていなかったので、イマジネーションを駆使して見つけたガラクタや廃品を集めて作っていきました」と続けた。
さらに、多くの人が「あいつは頭が変になったんじゃないか」と言ったり、僕のやろうとしていることが全く理解できなかったりという中で作っていったのです。そもそも、現地のチェワ語には「風車」という言葉自体が存在していなかったんです。誰も風車を見たことがなかったし」と、映画が伝えているよりさらに困難な驚くべき当時の環境について明かした。
鈴木は、「最後に風車が完成して、皆んなで喜ぶシーンは、観ていて心からホッとしました。胸がぎゅっと締め付けられるようなシーンもたくさんある中で、観ている方も嬉しくなるようなシーンなので、すごく印象に残っています。皆んなが出来ないって決めつけていた中で達成した皆の喜びというのは、すごく胸に残るものがありました」とラストシーンへの感動を伝えた。
カムクワンバ氏、現在の取り組みについて
風車が完成し、電気をつけることに成功し、乾いた畑に水を引けるようになった後、2010年にアメリカの名門ダートマス大学に留学し、自身の体験を描いた「The Boy Who Harnessed the Wind」を出版。感銘を受けたキウェテル・イジョフォーが映画化へと名乗りを上げた。自分の夢を自らの手で切り開いたカムクワンバ氏は、現在マラウイで、若い才能を支援するイノベーションセンターの立ち上げの取り組みを進めているそうだ。
「自分たちの夢や発想を形にしてもらえるような場所を作りたいという思いがあリます。若い才能ある人々に、それを発揮する場所を提供したい。自分自身も風車を作っている時に誰かに相談できたなら、もっとスムーズに風車を作ることが出来たと思っていたんです。アメリカに進学して、世界中の方々と触れ合えて得ることができた知識を、色々な課題の解決に生かしていきたいと思います」と将来のビジョンを語った。
一方で、鈴木も自身の目下のチャレンジについて「僕の家族や親戚と一緒に琴や尺八などの和楽器、けん玉をやっています。カムクワンバさんがマラウイを大事にしているように、僕は日本文化を大事にして頑張っていきたいです」と映画を観ての意気込みを語った。
最後に鈴木からの「やってみることの素晴らしさ、諦めないことの大切さを感じさせてくれる、また、日本で今暮らせている自分が幸せものだなと気づかせてくれる映画。ぜひたくさんの人に見て欲しいです!」という熱いメッセージで締めくくられ、本イベントは大盛況のもとに幕を閉じた。
[スチール撮影・記者: 花岡 薫]
イベント情報
ユニセフ・シアター・シリーズ「子どもたちの世界」
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原作者プロフィール
ウィリアム・カムクワンバ (William Kamkwamba)1987年、アフリカ・マラウイ生まれ。 |
映画『風をつかまえた少年』予告篇
映画作品情報
《ストーリー》2001年、アフリカの最貧国マラウイを大干ばつが襲う。14歳のウィリアムは飢饉による貧困で学費を払えず通学を断念するが、図書館で一冊の本と出会い、独学で風力発電のできる風車を作り、乾いた畑に水を引くことを思いつく。いまだに祈りで雨を降らせようとする村で、最愛の父でさえウィリアムの言葉に耳を貸さない。それでも家族を助けたいという彼のまっすぐな想いが、徐々に周りを動かし始める。 |
第69回ベルリン国際映画祭 公式上映
ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他全国順次公開!