映画『護られなかった者たちへ』
完成披露試写会 舞台挨拶
瀬々監督が佐藤健の“命がけの演技”を絶賛!!
極限の中でも生まれうる「人間的な生活」を表したい
「このミステリーがすごい!」受賞作家・中山七里の傑作小説を映画化した『護られなかった者たちへ』が、10月1日(金)より全国公開される。
東日本大震災から10年目の仙台で起きた不可解な連続殺人事件を軸に、その裏に隠された切なくも衝撃の真実を描く、感動のヒューマン・ミステリー。『64- ロクヨン – 前編/後編』(2016年)など力強く且つ緻密な人物描写で知られる瀬々敬久監督がメガホンを取り、佐藤健、阿部寛、清原果耶、倍賞美津子、吉岡秀隆、林遣都、永山瑛太、緒形直人という、豪華演技派キャストの競演も話題となっている。
主演の佐藤健と瀬々監督は、大ヒット作『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(2017年)以来の再タッグ。脚本は『永遠の0』(2013年)の林民夫が務め、音楽は『思い出のマーニー』(2014年)の村松崇継が担当した。
8月15日(日)、完成披露試写会がTOHOシネマズ 六本木ヒルズで行われ、上映後の舞台挨拶に佐藤健、阿部寛、清原果耶、倍賞美津子、吉岡秀隆、緒形直人らキャスト陣、そして瀬々敬久監督が登壇した。
東日本大震災から10年
「今の日本に投げかける意義のある作品」が完成
作品を観終えたばかりの観客の満場の拍手に迎えられ、登壇者が現れると場の空気が一気に熱を帯びた。
まずは主演の佐藤が「東日本大震災がどれほどの被害と悲しみをもたらしたかは、今や世界中の人々の知るところだと思います。けれど、実際には震災そのものだけではなく、そこから波及した問題が僕たちの日常を侵食しました」と同作の事件のきっかけとなった未曽有の大災害について真剣な面持ちで言及。また、生活保護というキーテーマについて「初めて原作を読んだときにさまざまなことを教えられ、考えさせられました。今の日本に投げかける意義のある作品になったと思います。受け取っていただけたら幸いです」と挨拶した。
阿部はコロナ禍での撮影にふれ「この状況で撮影を受け入れてくださった宮城の皆さまに感謝したい。震災後10年経ちましたが、今の社会が抱えるさまざまな問題が作品の中に盛り込まれていますので、ぜひ受け取ってください」
仙台市の福祉保険事務所で働くケースワーカー・円山役を務めた清原は、「今日劇場で久しぶりにキャストの皆さんと再会でき、観客の方に映画を観ていただけることがすごくうれしい」とそれぞれに感謝を伝えた。
被災地で利根と出会い家族のような関係性を築く遠島役の倍賞は、作品鑑賞後の観客に向けて「(観てくれたなら)何も言うことはありません。帰ったら周りの方に宣伝してください」とチャーミングに挨拶。
若手政治家のホープ・上崎を演じた吉岡は奇しくも8月15日(終戦日)での登壇となったことから「困難な日々が続いていますが、困難ではなかった時代なんてなかったのではないかと考えています。この映画を決して過去のものとして終わらせず、少しでもこの国が良くなるよう、今も日々祈りながらみなさんの心に刻み込まれるように祈っています」と静かに想いを伝えた。
福祉保険事務所の元所長で第2の被害者となった城之内役の緒方は、最初に脚本を読んだ時あまりの面白さに興奮したといい「何とか脚本以上の表現をしたいという思いで、仙台に向かったのを覚えています。この状況の中でも多くの方に観ていただきたい作品」と意気込みを語った。
そしてメガホンを取った瀬々監督が、緊急事態宣言に伴い一度撮影が中止になったことを思い返し「五里霧中の中で全く初めての体験として撮影に挑みました。状況はいっそう厳しくなってはいますが『護られなかった者たちへ』というタイトルが実際のものにならないように今後も考えていけたら。そしてこの映画がその力になれたらと思っています」と力強く挨拶し、舞台挨拶はスタートした。
佐藤が阿部主演作への愛を告白
11年ぶり共演も「阿部さんは阿部さん」
まずは11年ぶりの共演となる佐藤と阿部に、互いの印象の変化についての質問が。佐藤は「阿部さんは阿部さんですね」と即答後、阿部が主演を務めたドラマ「トリック」シリーズが役者を志すきっかけなったほど好きだったと告白。実際同作のメガホンを取った堤幸彦監督に直談判し、「トリック」に出演したのが初めての共演だと明かしたうえで「目の前で阿部さんが演じている姿は今でも鮮明に覚えている。それくらい僕にとってはかけがえのない時間だった。そんな阿部さんとさらに高まった役柄でご一緒できて非常にうれしいです」と喜びを伝えた。
阿部は佐藤の集中力を絶賛。今作では佐藤演じる利根を見ながら自身の役作りをしたといい、そこでもやはり集中力が素晴らしかったと伝えた。
阿部が佐藤をマットの向こうまで吹っ飛ばす!?
“全員の誤算”となった撮影ハプニングとは
女性陣2人は印象に残っている場所やシーンを聞かれると、清原は「気仙沼の街並みや風景」と回答。
倍賞は「ロケを行った一軒家でのんびりと撮っていたのが印象深い」と話し、ロケ地の空気感や人々の温かさを感じながらの撮影だったことを感じさせた。
『64- ロクヨン – 前編/後編』以来の瀬々組での仕事となった緒方は、現場の雰囲気について改めて聞かれると、「コロナ禍に加え梅雨だったことでスタッフのバタバタした雰囲気を感じながらも、変わらずいい緊張感を感じていた」と回答。
同じく『64- ロクヨン – 前編/後編』以来となった吉岡も「独特な緊張感」と同意した上で「護衛されている場面で健くんが(自分に)向かってくるときに、阿部さんに突き飛ばされてマットを越え吹っ飛んでいった。『ちょっとやりすぎでは?』と阿部さんに言ったら『いや、本人が思いっきりきてくれって』と言われて…」と撮影時のハプニングを披露。
それを聞いた佐藤が「そこまで飛ぶとは自分でもおもっていなくて、全員の誤算だったと思う」と話し、阿部が「どんなにぶつかってもしっかりこなしてくれるだろうという信頼関係があって、遠慮なくぶつかったんですけど…」返して笑い合う一幕も見られた。
被災地は悲惨なだけの場所ではない
映画へと託した喜怒哀楽
佐藤自身は印象に残っている場面として、永山瑛太演じる三雲に怒りをぶつけるシーンを選択。「今回理不尽なことに対する悔しさや怒り、やるせなさを作品を通して見ている人に共感してもらうのが僕の使命かと考えていた。あの場面は台本を読んだ時点で自分にとって大切だと考えていたので、瑛太さんに何度も付き合ってもらって撮った」と同場面にかける想いを語った。
そんな佐藤の演技にかける姿勢に向けて、瀬々監督は「横にいるので褒めるのははずかしいけれど…」と照れながらも「健くんは命がけで演じている。そこが健くんを尊敬しているところでもあり、好きなところでもあります」ときっぱり。
また、自身が今作に込めた想いについては「震災の時、ドキュメンタリー撮影の手伝いで石巻の小学校の避難所に行った。その時の印象が強くあります。避難所は悲惨なことばかりかと思われがちだけど、実はそこにも出会いや別れ、喜怒哀楽がある。どんな場所にも人間の生活はあるのだとすごく感じた。そういう感情をこの映画にも託したい。どんな状況でも人間的な生活を表してていきたいと」と語り、キャスト一同は思い思いの面持ちで聞き入る様子が見られた。
”誰かが誰かに生きていてほしい気持ち”が胸を打つ
「大切な人がいる幸せをかみしめて」
最後に瀬々監督と佐藤から登壇者を代表してのメッセージが。
瀬々監督は、ロケを引き受けてくれたロケ地である宮城県の人々に改めて感謝を伝えると同時に、「今日は終戦の日。今後もみなさんに平和な日々が続いていけばいいと思いますし、この映画がそうした皆さんの生活の支えになるようにと思っています。エンターテインメントもあるし、フィクションの面白さもある。この映画と一緒に走ってもらえれば。よろしくお願いします!」と力強く挨拶。
佐藤は、「僕が完成した映画を観た時に一番胸に残ったのは、命の重さとかよりも“誰かが誰かに生きていてほしいと思う気持ち”。そこに心を打たれました。大切な人がいるということ、そんな日常の幸せをかみしめると同時にみんなでより良い生活を目指して、そのためにどうしたらいいかを考えるきっかけとなる映画ではないかと思う。たくさんの方に観ていただきたいです」と噛みしめるように伝え、会場からの惜しみない拍手を受けてイベントは終了した。
[スチール撮影: Cinema Art Online UK / 記者: 深海 ワタル]
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イベント情報
映画『護られなかった者たちへ』完成披露試写会 舞台挨拶
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映画『護られなかった者たちへ』予告篇
映画作品情報
《ストーリー》【容疑者】佐藤健 VS【刑事】阿部寛 東日本大震災から10年目の仙台で、全身を縛られたまま放置され“餓死”させられるという不可解な殺人事件が相次いで発生。被害者はいずれも、人格者として知られた人物だった。捜査線上に浮かんだのは、別の事件で服役し出所したばかりの利根(佐藤健)という男。刑事の笘篠(阿部寛)は、利根と被害者たちとの接点を見つけ出し彼を追い詰めていくが、決定的な確証がつかめないまま、第3の事件が起きようとしていた―なぜ、このような殺し方をしたのか? 利根の過去に何があったのか?やがて事件の裏に隠された、切なくも衝撃の真実が明らかになっていく―—。 |