- 2024-11-3
- イベントレポート, ティーチイン, フランス映画, 第37回 東京国際映画祭
第37回 東京国際映画祭(TIFF) 特別上映
映画『不思議の国のシドニ』Q&A
イザベル・ユペールが日本での撮影を振り返る
「私にとってはとても意味のある、特別な体験」
京都、奈良、直島を舞台に制作されたイザベル・ユペール主演最新作、映画『不思議の国のシドニ』(原題:Sidonie au Japon)が12月13日(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開される。
11月3日(日)、第37回東京国際映画祭(TIFF)にて特別上映され、丸の内TOEIでの上映後に行われたQ&Aに来日した主演のイザベル・ユペール、監督のエリーズ・ジラール、日本からは共演の伊原剛志が登壇した。
映画を観たばかりの観客の温かい拍手に包まれながら入場したイザベル・ユペール、伊原剛志、エリーズ・ジラール監督。まず初めに、なぜ京都、奈良、直島といった日本を舞台にした物語を描こうと思ったのか、フランス人であるジラール監督は次のように答える。
「2013年、最初の監督作品『ベルヴィル・トーキョー』のときに1週間日本に滞在し、いろんな場所を訪問することができました。その際、『不思議の国のシドニ』で皆さんがご覧になった美しい風景を自分自身で体験したんです。そこでインスピレーションを受けました。日本の文化と出会って感じたこと、日本という国に魅了されたという体験が出発点になっています。日本という国とアーティスティックな出会いをしたなと感じました。日本は本当に美しい国だと思ったんです。皆さんが来ている服や建築など、私は本当にこれが大好きだと日本に恋をしてしまいました。日本の持っている二面性、伝統と新しいモダンなものに恋をしたので、本作では京都という伝統的な部分と、直島という現代アート、この二つをきちんと取り込むことが出来ました」。
そんな、本作のオファーを受けた時の心境について、本作で日本にやって来るフランス人小説家の主人公シドニを演じたユペールは、「脚本を最初に読んだときは、とてもシンプルに、この脚本が良いなと思いました。書かれている文章が素晴らしかった。しかもエリーズ・ジラール監督の前作『静かなふたり』(2017年)には、私の娘ロリータ・シャマーが出ているんです。私も映画を観ていて、ロリータが娘ながらとても良い演技をしていて。また、『静かなふたり』では文学という領域が描かれているのですが、今回の『不思議の国のシドニ』もそうですが、映画の中で文学を扱って上手くいっているものはなかなか無いんですね。別な表現方法ですから。そういうわけで、私はこれをやるべきだなと思ったんです」と話し、さらに舞台となった日本について「日本各地を単に観光で巡るというだけでなく、シドニという女性が日本に来ることによって、見失っていた自分を再発見するという深い意味がある点にも惹かれました」と、当時の心境を打ち明けた。
続いて、質問は本作で全編フランス語に挑戦した伊原へ。フランス語での演技という難役に挑んだことについて「日本語で話しますね!」と会場の笑いを取りつつも、「フランス語は全く喋れなかったんです。日本語で意味を理解して、英語とフランス語で照らし合わせて覚えました。コロナで撮影が延期になった後、エリーズ監督とスカイプで直接セリフのやり取りや、このシーンはこんな感じでやりたい、といったことを細かくディスカッションした上で撮影に挑むことができました。“フランス語入門”のような本を読んだわけではないので、セリフしか言えません!」と、笑顔で振り返った。
観客とのティーチインへ
後半は、映画を観終えたばかりの観客から質問を受けるティーチインが行われた。
日本でシドニを演じることによって、もたらされたもの、学んだことや発見したことはあるかという問いに対して、ユペールは「映画を撮るということは何かを学ぶためではないのですが、エキサイティングな体験をしたということは間違いないことです。何回も来日している私でさえも、全然知らない場所がたくさんありました。奈良、神戸、直島は行ったことがありませんでした。それは監督のおかげだと思うのですが、本当にラッキーでした。私にとってはとても意味のある、特別な体験に違いありません。映画を撮るということはすごく大切な体験ですが、それに加えて自分の住んでいる国を離れて異国で撮るという、ダブルで素晴らしい体験でした。日本の素晴らしさを発見しつつ、ミステリアスな部分も残しているので、何度も何度も、また日本に来たいなと思わせるような、そんな体験でした」と、舞台となった日本へラブコールを送った。
最後に、これから映画が劇場公開される日本の観客に向けて、伊原さんは「最初にオーディションを受けたのは2019年だったので、5年前でしょうか。やっとこうやって日本で皆様に観ていただけるのは光栄です。僕にとっても良い体験で、そして映画のタイトルのように不思議な経験で、イザベルやエリーズ監督と一緒に仕事をできたことは僕のこれからの役者人生の中でもきっと生きてくると思います。本当に多くの皆さんに観ていただければ幸いです」とコメント。
ユペールは「伊原さんが先ほど自分のフランス語のことを話していて、ちょっと謙虚すぎるなと思いました。本当に彼の仕事は唯一無二のことで、私にフランス人俳優として日本語で演技をしなさいと言われても、私は多分できませんね。本当に素晴らしいお仕事をしてくださいました。伊原さん演じる溝口健三という人物がおぼつかないフランス語を話すことによってシドニとの距離が縮まって行く、それを彼は見事に体現してくれたと思います。この役は伊原剛志さんしかできないと思っていますし、彼の素晴らしい成果なくしてこの映画は成り立たないと思っています」と、伊原の演技を絶賛。
そして最後にエリーズ監督が「私が今、心から望んでいることは今日の口コミが広がって、たくさんの日本人の方々に観ていただくことです。フランスでは結構ヒットしたんですよ。そういうことが日本でも起こればいいなと心から祈っています」とメッセージを送り、会場は大きな拍手に包まれながらイベントは終了した。
フォトギャラリー📸
イベント情報
第37回 東京国際映画祭(TIFF) 特別上映
|
映画『不思議の国のシドニ』予告篇🎞
映画作品情報
《ストーリー》フランス人作家シドニが、日本の出版社から招聘される。見知らぬ国、見知らぬ人への不安を覚えながらも、彼女は未知の国ニッポンにたどり着く。寡黙な編集者の溝口に案内され、日本の読者と対話しながら、桜の季節に京都、奈良、直島へと旅をするシドニ。そんな彼女の前に、亡くなった夫アントワーヌの幽霊が現れて……。 |
邦題: 不思議の国のシド二
© 2023 10:15! PRODUCTIONS / LUPA FILM / BOX PRODUCTIONS / FILM-IN-EVOLUTION / FOURIER FILMS / MIKINO / LES FILMS DU CAMÉLIA