- 2023-10-28
- アニメ, イベントレポート, 日本映画, 第36回 東京国際映画祭, 舞台挨拶
第36回 東京国際映画祭(TIFF)
アニメーション部門
映画『駒田蒸留所へようこそ』舞台挨拶
早見沙織、小野賢章、内田真礼、吉原正行監督が登壇!
どんな仕事でも、選んだ自分を3年は信じて!と若者にエール
「働くこと」をテーマに、日々奮闘するキャラクターを描いてきた、P.A.WORKSによる”お仕事シリーズ”の最新作、映画『駒田蒸留所へようこそ』が11月10日(金)より全国公開される。
舞台は、世界でも注⽬されるジャパニーズウイスキーの蒸留所。経営難の蒸留所の再建に奮闘する駒⽥琉⽣と、転職を繰り返してきたニュースサイト記者の⾼橋光太郎。ウイスキーを通して出会った2⼈は、ぶつかり合いつつも、それぞれの「お仕事」に向き合っていく。
若くして駒⽥蒸留所の社⻑となり、ウイスキー業界では気鋭のブレンダーとしても注⽬されている駒⽥琉⽣の声を早⾒沙織。やりたいことも、やる気もないまま、駒田蒸留所の連載記事を担当することになった若手記者・⾼橋光太郎を⼩野賢章。琉⽣の親友で、駒⽥蒸留所の広報を務める河端朋子を内⽥真礼が演じる。
アヌシー国際アニメーション映画祭2023 コントルシャン部門、第56回シッチェス・カタロニア国際映画祭 アニメーション部門にも正式出品され、10年、20年と…、今を⽣きる⼈々の⼼に⻑く沁み渡るクラフトアニメーションが誕⽣した。
そして、第36回東京国際映画祭(TIFF)アニメーション部門に出品され、10月28日(土)に行われた角川シネマ有楽町での上映前の舞台挨拶には、早見沙織、小野賢章、内田真礼らメインキャストに加え、吉原正行監督が登壇。司会は東京国際映画祭 アニメーション部門プログラミング・アドバイザーの藤津亮太が務め、上映を心待ちにする観客を前に、制作の裏側や作品にかける熱い想いを語り合った。
「できあがるまでに最低3年」のウイスキーは、今の若者にふさわしい舞台
満場の観客に出迎えられたキャストと監督。全員が一言挨拶を終えた後、まずは吉原監督から今作のキーとなるウイスキーを題材に選んだ理由についての話が。
吉原監督は当初に、群像劇かつ若者のビフォアアフターがメインの作品を作りたいと考えたといい、そこから「どういう舞台が今の若者にふさわしいか?」を考えたそう。「ウイスキーは成果物が手に入るまでに最低3年かかる。いいものができあがるのには時間がかかり、そこに向き合う姿というのはいい題材だと感じました」と明かした。
実際に多数の蒸留所を取材したという吉原監督。現場で参考になった点について聞かれると、「結構若い人がいるんですよね。ウイスキー大好きでものすごくマニアックなことも説明してくれる。それだけ夢中になって話してくれることはうれしかった」と顔をほころばせた。
早見沙織「家族のウイスキー巡る母親との会話には胸を打たれた」
各キャストがお気に入りシーンを告白
続いて、各キャストに自身のキャラクターの出演場面で印象に残ったシーンへの質問が。
早見は「たくさんあるけど、一つは蒸留所に取材にくる高橋さんとのやり取り。最初は距離があるけど、とある場面をきっかけに心の距離や展開が変わるんです。そこにもウイスキーが関わっていて、印象的なやり取りでした」と物語にとっても重要な場面を回答。さらに「もう一つは幻となった家族の絆を表すようなウイスキーがあって、それを巡っての母親とやり取りは本当に胸を打つ素敵な場面でした」と、本作のもう一つのテーマでもある家族の場面に言及した。
小野は、自身の演じた光太郎を「琉生とは正反対。仕事への向き合い方もそうだし、代々受け継がれているものを守ることを仕事にしている琉生と、仕事転々としている、熱も入らない光太郎」と思い返し、その人物の性格を強く表している場面として、光太郎が居酒屋で友達と話しているシーンをセレクト。「ちょっとしたミスで『俺にはこの仕事向いてないかも』と愚痴をこぼす。居酒屋の隣の席で見たことあるような会話です。僕は小さい時からこの仕事をしていて、やめようと思ったことないけど、観た人にすごく共感してもらえるんじゃないかなと思います」と、場面のリアリティを推した。
内田が演じたのは、喜怒哀楽がはっきりしているキャラクター。主に光太郎に怒っているシーンが多いものの、それは「大事に思っていなかったらできないと思う」と回想。「琉生との友情を感じられるシーンが好き。社員の一員として働いているけど、そこまでお仕事を大事に思っている。何かあったら怒って会社を守ろうとするくらい。彼女の熱意が感じられるそのシーンが好き」と笑顔で語った。
根拠は薄くとも仕事を選ぶのは自分
成功するってどういうこと?を伝えたい
そんなリアリティあふれるキャラクターづくりについて聞かれた吉原監督は、自身なりのこだわりについて、「あんまり現実離れしても観客に伝えられないと思うんです。実際のところ『これをやる』と決めて仕事に就く人はごく一部。大抵の人はすごく薄い根拠で仕事に就いていると思う。でも、それでも選んだのが自分。その自分を3年は信じてほしいという想いから逆算して作品をつくりました。光太郎の仕事は他人が介在していかないといい記事は書けない。あるいは目的がはっきりしている人も苦労があるという感じで決めた」と明かした。
若手アニメーターの育成担当も行っているという吉原監督。スタッフとの関わりの中では「20年くらい毎年新しいことがある」と振り返り、「こちらが傷つけてしまったり、傷つけられたりの繰り返し。マニュアルはほとんどつくれません。(アニメーターの仕事も)昔はどうしてもやりたい人が多かったけど、今は間口が広がっていて、絵を書きたい以外で入って来る人も多いので挫折も多い。根拠が薄いと感じるのはそういう意味なんです。でも、自分で選んだ道。入社させている以上会社も一定の評価をしている。どのみちウイスキーと一緒で結果が出るには時間がかかる。『成功しているってどういうこと?』というのを見せられればと思った。『実はこういうこと』というのを作品では描ければと」と同作に込めた想いを吐露した。
小野賢章、30代になって仕事観が変わったと告白
「仕事について“知る”ことで、仕事自体が楽しくなる」
そんな同作への参加を通して、仕事に対して思うことを問われたキャストたちは、「大きな質問ですね」と思案するも、各自がそれぞれの経験を交え、仕事観について告白した。
トップバッターの早見は、質問を聞いてまず「ウイスキーづくりはすごく時間がかかることが頭に浮かんだ」と前置きし、「他の仕事もそうかもしれないけど、今日したことがすぐ成果になって返ってくることってあんまりない。忘れたころにやってきたり、返ってこなかったりする。100%、120%力を注いでも予期せぬトラブルでくじけそうになったり、映画で描かれているのは自分の人生にも起こることだと思う。でも、時間がかかっても『あの時頑張ったから今があるのかな』と何年か後にでも思えるように、種まきしたいと思いました」と自身のこの先へ思いを寄せた。
続く小野は、「30代になって責任感がどんどん伴ってきたなと実感している」と告白。「20代は、本当に楽しいが先行していたけど、人前に立つ機会が増えて、ちゃんと作品についても語れないとなと思うようになってきました。長くやってきているからこそ、そうした変化は感じる。この作品観て感じたのは、『知っている』ことの大切さ。仕事には、大抵他の人が関わっています。(仕事にまつわることを)知っていくことによって、仕事自体が楽しくなっていく様子が本作では丁寧に描かれています。知っていく喜びみたいなものを皆さんにも感じていただけるのでは」と、10代から声優業を続けてきた自身ならではの仕事観を披露した。
さらに内田も「自分の仕事は基本的にはスタジオにこもって陽を浴びずに(作品を)つくっています。先日のレッドカーペッドの前も、一人で2畳くらいの部屋にこもって一生懸命せりふしゃべっていました(笑)。それが、いろんな方の手を通って皆さんの元に届く。仕事にはいろんなパターンがあるけれど、どれも一つ一つ大事で、どれも手を抜いてはいけないことを、この幅広いジャンルに関わる仕事をしているとすごく思いますね」と声優ならではの、仕事への向き合い方を語った。
内田真礼「鑑賞後、さわやかな風が吹くような作品」とアピール
吉原監督は「今夜はウイスキーで乾杯して」と粋な一言
最後の挨拶では、早見が「今の皆さんのお話を伺って、正直私も今から客席に座って観たいと思った。ぜひ楽しんでいただいて、胸に残るものがあればいいと思います」、小野が「仕事に対する向き合い方とかがとても丁寧に描かれている作品。本当にいろんな方に楽しんでいただける、これを観て仕事をもう少し頑張ってみようと思える作品になっていると思います」、内田が「観終わった後にさわやかな風が吹くような清々しい作品です。どんな気持ちなるかを楽しみにしていただければ」とそれぞれの思いを伝えた。
最後に吉原監督が「今晩は、ウイスキーで乾杯してください」と粋な一言でしめくくり、フォトセッションを経て舞台挨拶は幕を閉じた。
フォトギャラリー📸
イベント情報
第36回 東京国際映画祭(TIFF)
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映画『駒田蒸留所へようこそ』予告篇🎞
映画作品情報
《ストーリー》駒⽥琉⽣は若くして駒⽥蒸留所の社⻑となり、ウイスキー業界では気鋭のブレンダーとしても注⽬されている。華々しい活躍の⼀⽅で、社⻑に就任するまでは波乱の連続だった。災害による蒸留所施設の倒壊で、ウイスキーの原酒造りを断念。兄・圭は会社を去り、先代の⽗・滉は悪化する経営の⽴て直しに尽⼒するも、過労で亡くなってしまう。 倒産⼨前だった蒸留所を引き継いだ琉⽣は、再建を図るとともに、原酒を失い製造できなくなった、駒⽥蒸留所を代表するウイスキー《KOMA》の復活も考えていた。《KOMA》は琉⽣にとって、家族の絆の象徴でもあった。 ある⽇、広報担当の朋⼦がプロモーションとしてニュースサイトに体験記事の掲載を提案する。ところが派遣されてきたのは、転職を繰り返し、やりたいことも、やる気もない⾼橋光太郎という記者だった……。 |
キャラクターデザイン・総作画監督: 川面恒介
音楽: 加藤達也
アニメーション制作: P.A.WORKS
製作: DMM.com
配給: ギャガ