- 2022-10-24
- イベントレポート, セレモニー, 第35回 東京国際映画祭
第35回 東京国際映画祭 (TIFF)
オープニングセレモニー
東京宝塚劇場で宝塚OG4人が歌い踊るオープニング!
フェスティバル・アンバサダーの橋本愛も登壇!!
2022年10月24日(月)、第35回東京国際映画祭(35th Tokyo Inernational Film Festival / TIFF)が開幕し、東京宝塚劇場でオープニングセレモニーが開催された。
東京宝塚劇場が映画祭の会場になるのは、今年が初めて。柚希礼音、紅ゆずる、美弥るりか、七海ひろきという、男役として人気を博した宝塚OG4人が慣れ親しんだ舞台に立ち、オープニングアクトとしてパフォーマンスを披露した。
セレモニーには、フェスティバル・アンバサダーの橋本愛、コンペティション部門国際審査委員長のジュリー・テイモア、オープニング作品『ラーゲリより愛を込めて』の二宮和也、瀬々敬久監督らが登壇した。
宝塚男役OGによるオープニングアクト
映画原作舞台『オーシャンズ11』の楽曲を披露!
セレモニーでは暗転した舞台から、柚希礼音、紅ゆずる、美弥るりか、七海ひろきが黒を基調としたシックなパンツスタイルで歌いながら登場。いずれも宝塚歌劇団の男役スターとして人気を博し、退団後は舞台・コンサート・ドラマ・情報番組などそれぞれの個性を活かし、幅広いフィールドで活躍をしているメンバーだ。
オープニングアクトとして披露したのは、大ヒット映画を原作に宝塚歌劇で上演された舞台『オーシャンズ11』の「FATE CITY」。映画祭というテーマにふさわしい楽曲に合わせて、慣れ親しんだ舞台上を駆け回る4名のスペシャルな歌唱とダンスで客席を圧倒した。
司会から一言ずつの挨拶を促された柚希礼音は、「このような機会をいただき、映画祭と宝塚歌劇団関係者の皆さまに御礼を申し上げます」と感謝を表しながら、「配信をご覧の皆さまもお楽しみいただいてますか?」と、ファンへの気遣いも忘れない。
紅ゆずるは「私は3年前に退団したのですが、3年前に自分がこの舞台に立っていたことを懐かしいなと思う気持ちと、新たな一歩を踏み出している思い、そして古巣で切磋琢磨してきた豪華なメンバーとこの舞台に立たせていただくことを非常に楽しみにしてまいりました」と、退団後の貴重な機会を楽しんでいる様子。
美弥るりかは「映画を心から愛していらっしゃる皆さまとここにいられることを心から光栄に思っています。ここから始まっていく東京映画祭の成功を祈っています」と映画ファンと映画祭へ向けてメッセージ。
七海ひろきは「このような形で東京国際映画祭にセレモニーに少しでも関われたこと、尊敬する宝塚OGの方々とご一緒できたこと、大変光栄に思っています」と笑顔で挨拶した。
柚希と美弥は、11月20日(日)からシアター・クリエで上演が始まる舞台『ベルヴィル・ランデブー』で共演予定。作品について柚希が「映画づくりのために集められた女性たちが映画をつくる、というストーリー仕立てのショーイズムです。歌って踊って、とてもかっこいい舞台になっています」とPR。それを受けて美弥も「オール女性キャストで構成され、個性豊かなメンバーがそろっています。歌もダンスも最高にかっこいい作品、そして映画に向かっていく内容でもありますので、ぜひ皆さま劇場へ来ていただけたら嬉しく思います」と、映画にちなんだ舞台への自信をのぞかせた。
フェスティバル・アンバサダーの橋本愛
「日本映画の湿度が高いところが好き」
続いて岸田文雄首相からのメッセージVTRが流れた後は、フェスティバル・アンバサダーに就任した橋本愛から挨拶。橋本は2年連続でのアンバサダーとなり、今年は黒を貴重にモノトーンカラーのレースやスパンコールをあしらった個性的な衣装で登場。
司会から一年ぶりのレッドカーペットの感想を聞かれ「確か去年は屋内だったと記憶しておりまして、野外での華やかなレッドカーペットの場はコロナ以来なのかな、と思うと今年はなんだか感慨深いですし、特別な一年になるのかな、という気がする」と、久し振りに屋外でのレッドカーペットを歩けることを喜んだ。
世界に対しての日本の映画のアピールポイントを問われると、「日本という小さい島国は、世界の中ではどうしても閉鎖的な印象が強いな、と思うんです。でも、こうして比較的閉ざされた国の中で、これだけ豊かで繊細な感性が育っていることにしみじみと感慨深く感じます」と答えた。また、日本映画の好きなところとして「湿度が高いところ」を挙げ、「映像は平面的なのに、その場所の空気の匂いや湿度、自然の豊かさがダイレクトに肌に伝わってくるような生活感を感じる」そういった映画がとても好きだと嬉しそうに語った。
今年の映画祭のテーマが「飛躍」ということから、日本映画がもっと「飛躍」するためにはどんなことが必要かとの質問には、「私自身が思うのは、どんどん飛躍するために、まずは世界を見渡すこと、世界を知ることがいちばん大切なこと。世界を見回して自分に翻った時に、日本映画の自分の現在地を見つめて、これからどうしたら(世界との差を)埋め合わせていけるのか、はたまた世界を超えていけるのか、というのを日々地道に見つめていくことが大事」と答えた。
最後に観客へ向けて「今年は169作品という、去年(の123本)より3割り増しの作品が観られます。今は、自分で好きな作品を選んで家で観るような、主体性が個人にあることが増えているけれど、こうして映画祭で映画を観るという体験は、決まった時間に決まった作品が決まった場所で上映されるというある種の制約に自分が向かっていくことで出会える、とても特別なご縁になると思いますので、皆さんぜひ気軽に楽しんでいただけたら嬉しいです」と呼びかけた。
コンペティション部門国際審査委員長ジュリー・テイモア
「今、私たちは人や場所に対する共感が欠けてしまっている。映画を観ることでそれを取り戻してほしい」
部門紹介では、今年の世界の映画祭で話題になった作品や国際的に知られる巨匠の最新作などから日本未公開の作品を上映する「ガラ・セレクション 部門」、世界で話題になった新作の中から、まだ日本上映が決まっていない作品をピックアップした「ワールド・フォーカス 部門」の紹介があった。
また、この1年の日本映画を対象に、特に海外に紹介されるべき映画日本の作品をセレクトして上映する「Nippon Cinema Now 部門」の中で今年急逝した青山真治監督を追悼し、代表作2本を上映することが明かされた。
最後に「ジャパニーズ・アニメーション 部門」では、日本から世界をつくる、というテーマに添った最新映画を上映すると紹介された。
今年で2年目となる「Amazon Prime Video テイクワン賞」審査委員長は映画監督の行定勲が務め、同賞を受賞した作品は「Amazon Prime Video」で長編作品を放送する機会が得られると公表された。また、今年で10年目となる「アジアの未来 部門」では、長編3本目までのアジアの新鋭監督の作品計10本を世界に先駆けて上映する。
そして「コンペティション部門」では、2022年1月以降に完成した長編映画を対象に、世界各国・地域の応募作品の中から、厳正な審査を経た15本を上映。日本映画も昨年より1本増えている。
ここで国際審査委員として俳優のシム・ウンギョン、映画監督のジョアン・ペドロ・ロドリゲス、撮影監督の柳島克己、元アンスティチュ・フランセ館長のマリークリスティーヌ・ドゥ・ナヴァセル、そして審査委員長を務める演劇・オペラ演出家・映画監督のジュリー・テイモアらが登壇。
世界的なオペラ演出家・映画監督であるジュリー・テイモアは「ここに来られたのは本当に素晴らしいことです。現在、世界においてたくさんの人たちが一堂に会することはなかなかできない中、今回は世界中から多彩な国の審査員がそろった。韓国、ポルトガル、フランス、日本、そしてアメリカ。こうして集まれたのは本当に素晴らしいことです。なぜなら今、人間がみんなで集まって共通のことについて語るのは大切だと感じているからです。それは、自分が今まで行きたいとは知らなかった場所に、こうした映画祭を通じて出会うことができるということです」と、様々な国の審査委員が集まれたことの素晴らしさを強調。
また、世界中がコロナや戦争の影響下にあること、それに伴う様々なことで分断されていると懸念。「でもこうして映画を観る、映画祭に参加するということで、もう一度私達がクリエイティビティや想像力をもって、皆で一つになれるということを思い出すことが非常に重要。だからこそ、世界中の人たちに映画を観てもらって、私が今まで知らなかった人や場所を知り、共感していくことが重要だと思います。いま、私たちにいちばん欠けているもの。それは人や場所に対する共感だと思いますので、ぜひその共感を映画祭において得られたらと思います」と述べ、映画によって共感力を取り戻して欲しいと訴えた。
オープニング作品は瀬々敬久監督の『ラーゲリより愛を込めて』
主演の二宮和也「やっぱり日本の映画はいいな」
次にオープニング作品『ラーゲリより愛を込めて』が紹介され、瀬々敬久監督、主演の二宮和也が登壇。『ラーゲリより愛を込めて』は、第二次世界大戦終了後、60万人を超える日本人が捕虜となったリベリアの強制収容所が舞台で、実在の人物の壮絶な半生を描いた作品。死と隣り合わせの日々を送りながら、妻を想い、仲間を想い、希望を胸に生きた主人公・山本幡男を二宮和也が演じた。
ダブルのタキシード姿で登場した二宮は、「この度は『ラーゲリより愛を込めて』を東京国際映画祭のオープニングに選出していただきありがとうございます。僕らはオープニングに見合うような作品ができたと自負しておりますので、ぜひご覧になってください」と、作品の出来栄えに自信をのぞかせた。
瀬々監督は、「コロナの中で映画祭を開催するのは大変なご苦労があると思います。日比谷が会場になって二年目で、今年はレッドカーペットを無事に再開することができたと聞いています。こんな状況の中でも、エンターテインメントの力が皆さんのお役に立てたらと思っています」とコメント。
レッドカーペットの感想を聞かれると二宮は、「やっぱり緊張しますし……最後に歩かせてもらったのですが、最後って華やかに大所帯で歩くのかと勝手に思っていたんですけど、今日現場に来たら二人でした(笑)。ちょっと皆さんご想像とは違う最後になってしまったんではないかという気持ちがある」と報道陣を笑わせる。「でもレッドカーペットを歩けて、沿道に見に来てくれた人たちに声をかけていただいて、反対側では取材を受けて……という光景が3年ぶりにできているんだな、という実感がふつふつとこみ上げてくるものはありましたね。本当に嬉しかったです」と続け、喜びを語った。
アーティストや俳優、タレントとしてなど多彩な活動を続ける二宮に、改めて映画という存在は?と司会が問いかけると、「作品や役者の技術、撮影技術、どんどん前に進んでいるエンタテインメントの一つが映画だと思いますし、いろんな国の映画を観ますが、やっぱり僕は日本の映画っていうのはいいな、と回顧できる。おもしろいエンタテインメントだな、映画は、と。いくら最新技術やお芝居を目の当たりにしても、それを日本の人たちがつくっているというふうに見ると、“いいな、やっぱり日本の映画はこれだよな”って。(映画は)日本のエンタメの顔というか、その一つになっているという気がします」と、日本映画に対する愛の強さを見せた。
続けて今回の作品を通して伝えたいことを聞かれ、「今回の映画は戦争がもたらした後遺症を描いた話ではあるんですけれど、人間らしさ、人間の感情のすべてが詰まっていると思うんですけれど……」と考えながら言葉を選び、瀬々監督に「どこが伝えたいですか?」と逆質問。
瀬々監督は、「二宮くんは、どんな状況でも希望を捨てなかった男・山本さんを演じたわけであります」となぜか報告口調。二宮は「そうであります」と笑顔で監督の言葉を受けながら、「辛くて苦しくて重たい状況が続くんですけど、だからこそその先にある希望や愛、日本人の絆というものがより深く刺さるのではないかなと思う」と続け、「時間があれば多くの方に観ていただきたい」とコメント。
瀬々監督は、「実際にウクライナで戦争が起こっていて、平和って当たり前だと思っていたけれど、今のこの状況でどうやって生きてけばいいのか、というのを……映画は日本の77年前から始まった話ですが、少し前の過去を見直すことで今をとらえ直すことができたらと思ってつくりました。遠い世界のことではないと思って観ていただけたら」と制作の真意を述べた。
さらに「コロナや戦争で辛い状況ですが、そんな中でも生きるという希望を捨てなかった、二宮くん演じる山本幡男という人物を描いた作品です。最後には愛の奇跡も待ち受けています。エンタテインメントの力を皆さんに感じてもらって、明日をまた生きようと思っていただけたらと思います」と力強く語った。
最後に二宮が「たくさんの国の素晴らしい作品が集まったお祭りです。色んな映画を一気に観られる機会を楽しんでほしい」と、映画祭全体をアピールした。
第35回 東京国際映画祭 開会宣言
安藤裕康チェアマン「“飛躍”を目指して頑張っていきたい」
そしてセレモニーのラストは、安藤裕康チェアマンの開会宣言。
「“待てば海路の日和あり”という言葉があります。私達映画祭もこの2年間、ずい分コロナに苦しめられて辛いことがありましたが、ようやく通常通りの映画祭開催が可能となりつつあります。レッドカーペットは3年ぶりに屋外での開催になりまして、なんとか雨に降られずに済みました。今回の映画祭は“飛躍”というテーマを目指して頑張っていきたい。まずはこれからの10日間、さまざまな映画の上映やイベントがあります。ぜひ皆さまに足を運んでいただきたい」と延べ、第35回東京国際映画祭が開幕した。
フォトギャラリー📸
イベント情報
第35回 東京国際映画祭(TIFF)
|
第35回 東京国際映画祭(TIFF) 開催概要■主催: 公益財団法人ユニジャパン(第34回東京国際映画祭実行委員会) TIFFCOM2022 開催概要■主催: 公益財団法人ユニジャパン |