- 2022-10-28
- アニメ, イベントレポート, トークショー, 日本映画, 第35回 東京国際映画祭
第35回 東京国際映画祭(TIFF)
ジャパニーズ・アニメーション部門
映画『ぼくらのよあけ』トークショー
日本のドメスティックな文化“団地”を描いた作品が世界へ
今はなき阿佐ヶ谷住宅がスクリーンに蘇る!!
10月28日(金)、第35回東京国際映画祭(TIFF)ジャパニーズ・アニメーション部門で現在公開中の劇場アニメーション映画『ぼくらのよあけ』が上映された。
TOHOシネマズ シャンテでの上映後にはトークショーが行われ、黑川智之監督と脚本を担当した佐藤大が登壇。大胆な解釈で行われた制作秘話が明かされた。
司会は東京国際映画祭 ジャパニーズ・アニメーション部門プログラミング・アドバイザーの藤津亮太が務めた。
原作コミックスを大胆に解釈!?
黑川智之監督と脚本の佐藤大が制作秘話を明かす!!
全2巻の原作コミックをアニメーション映画化するにあたり、黑川監督は「原作にあるすべてのエピソードを2時間の映画に収めることは難しいので、何を守って何を削るのか、エピソードの取捨選択に時間を費やしました」と制作秘話を回想。
団地マニアのためのトークユニット・団地団メンバーでもある佐藤は、「“団地”という日本のドメスティックな文化を描きつつ、世界共通の“未来”や“宇宙”をテーマにした作品なので国際映画祭で上映されることは感激です」としながら、「原作の持ち味を変えずに、漫画を読み終えた後に感じる爽快感や多重性を映画に持たせるためにはどうすればいいのか?原作者であり団地団メンバーの今井哲也さんにも脚本チームに参加してもらい、黑川監督と3人で熟考していきました」と脚色の経緯を明かした。
佐藤曰く「阿佐ヶ谷住宅は団地の中の団地といえるほどの初期の貴重な団地」だが、2013年にすでに解体されている。
それを本作の時代設定である2049年に出現させるうえで黑川監督は「外装については2049年なりのものにするか美術チームと話し合ったけれど、最終的には在りし日の阿佐ヶ谷住宅の姿のまま2049年にもあるということにしました。それが本作においては大事なポイントで、昭和の匂いがまだ残る阿佐ヶ谷住宅として再現しました」とこだわりを持ってデザインしたという。
そして佐藤は「原作ではコミックスが発売された当時の2011年を舞台に(本作の主人公である)悠真の親世代たちが“二月の黎明号”と出会う設定となっているので、映画では2022年に出会わなければ原作の味を損ねてしまう」とコミックスから時代設定を変えたことを明らかにし、「(2013年に解体された)阿佐ヶ谷住宅が2022年にあるなら、本作のメインの舞台になる2049年にあってもいいだろうと大胆な嘘をついたわけです」と更なる制作秘話も語った!
悠真家のお手伝いロボット・ナナコの可愛いビジュアルも話題の本作。黑川監督はデザインについて「今のロボット技術の延長線上にあるリアル感と、親しみを抱ける柔らかいデザインとしてアニメーションに落とし込みました」と紹介。佐藤もナナコを本作の見どころに挙げて「最初は悠真の目線で映画を観る方も多いと思うけれど、再度観る際にはナナコがいつから悠真に嘘をついていたのか、いつからお父さんとお母さんに話をしたのか?そんな点に注目して観ると、ワンカットしかないシーンの意味がグッと変わってくる。ナナコと二月の黎明号がいつお父さん世代にアプローチしていたのかなど、原作を読んだうえでナナコと二月の黎明号の動きを見てもらえたら嬉しい」とアピールした。
黑川監督も、再度『ぼくらのよあけ』を観ていただける際には「悠真がナナコをどのように呼んでいるのかをストーリーを追いながら観ていただくと、その変化がわかっていただけるはずです。また全体の話や各キャラクターのパーソナリティを理解した上で、女子側のストーリーやその関係性、お姉さんと弟などの周りのキャラクターの物語やそれぞれの感情の起伏に注目してもらえたら」と呼び掛けていた。
イベント情報
第35回 東京国際映画祭(TIFF)
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映画『ぼくらのよあけ』予告篇🎞
映画作品情報
《ストーリー》「頼みがある。私が宇宙に帰るのを手伝ってもらえないだろうか︖」 ⻄暦2049年、夏。阿佐ヶ谷団地に住んでいる小学4年生の沢渡悠真は、間もなく地球に大接近するという“SHIII・アールヴィル彗星”に夢中になっていた。 そんな時、沢渡家の人工知能搭載型家庭用オートボット・ナナコが未知の存在にハッキングされた。 「二月の黎明号」と名乗る宇宙から来たその存在は、2022年に地球に降下した際、大気圏突入時のトラブルで故障、悠真たちが住む団地の1棟に擬態して休眠していたという。 その夏、子どもたちの極秘ミッションが始まった― |