第33回 東京国際映画祭(TIFF) 映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』Q&Aレポート
【写真】第33回 東京国際映画祭(TIFF)  ジャパニーズ・アニメーション部門 映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』舞台挨拶 (イシグロキョウヘイ監督)

映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』

第33回東京国際映画祭(TIFF) 
ジャパニーズ・アニメーション部門
映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』Q&A

2021年初夏、待望の新公開⽇が決定!
さらにイシグロキョウヘイ監督がYouTuberデビュー!?

11月3日(火)、第33回東京国際映画祭(33rd Tokyo Inernational Film Festival / TIFF)ジャパニーズ・アニメーション部門にて、劇場オリジナルアニメーション映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』が上映された。

物語は、⼈とのコミュニケーションが苦⼿な俳句少年と、コンプレックスを隠すマスク少⼥。何の変哲もない郊外のショッピングモールを舞台に出逢ったふたりが、⾔葉と⾳楽で距離を縮めていく、ボーイ・ミーツ・ガール Story。

【画像】映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』 メインカット

監督を務めたのは、テレビアニメ「四⽉は君の嘘」、「クジラの⼦らは砂上に歌う」などを⼿掛け、繊細で叙情的な演出に定評のあるアニメーション監督・イシグロキョウヘイ。バンドで活動した経歴を持ち、⾳楽にも造詣が深い彼が、⾔葉×⾳楽をキーワードに、少年少⼥の「ひと夏の⻘春」を描いたオリジナルアニメーションとなっている。

主⼈公であるチェリー役には、初映画、初声優、初主演となる歌舞伎界の超新星・⼋代⽬ 市川染五郎を起⽤!ヒロインのスマイル役は、若⼿随⼀の確かな表現⼒で⾼い評価を受ける杉咲花が担当。また、⼭寺宏⼀や藩めぐみ、花江夏樹、神⾕浩史、坂本真綾ら旬な声優陣も勢揃いし、フレッシュな競演が「ひと夏のできごと」を輝かせる。

⾳楽制作を務めるのは、「マクロス」シリーズをはじめ、アニメーションの劇伴やアニソン制作において第⼀線を⾛り続ける⾳楽レーベル・フライングドッグ。同社の10周年記念作品ともなる本作は、映画『聲の形』(2016年)などの劇伴制作で知られる⽜尾憲輔が担当。映画タイトルと同名の主題歌をnever young beachが、劇中歌を⼤貫妙⼦が書き下ろすなど、注⽬を集めている。

TOHOシネマズ 六本木ヒルズでの上映前の舞台挨拶に続き、上映後にもイシグロキョウヘイ監督がジャパニーズ・アニメーション部門プログラミングアドバイザーの藤津亮太と共に登壇し、トークショーと観客とのティーチイン(Q&A)が行われた。

【写真】第33回 東京国際映画祭(TIFF)  ジャパニーズ・アニメーション部門 映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』舞台挨拶 (イシグロキョウヘイ監督、藤津亮太プログラミング・アドバイザー)

元々はSF作品だった!?
ショッピングモール×⾳楽×俳句の三大要素を解き明かす。

藤津プログラミングアドバイザーから企画の発端を聞かれたイシグロ監督は「2015年の9⽉くらいにフライングドッグ経由でオリジナルアニメのお話をいただきました。その時から⾳楽ものというのは変わっていないのですが、元々はSFだったんです。どうしてこうなったかね(笑)」と笑いを誘いながら明かした。

物語の舞台はショッピングモール。イシグロ監督は「僕らの世代で⾔うところの町の駅前の盛場として、今の⼈たちの幼少期の記憶の根幹にはショッピングモールというのはある気がするんですね。⼩さな箱庭の中で物語を進めようというのが、脚本の佐藤⼤さんとのブレストの中から⽣まれたアイデアです」と語る。

【画像】映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』 場面カット

作品を形作る⼤きな要素として、ショッピングモール、そして⾳楽(レコード)と俳句があり、それが⾮常にうまく噛み合っている、この3⼤要素をどのように組み合わせていったのかという藤津の問いに対しては、「インスピレーション元が⾳楽であるということが⼤きいんです。俳句っていうのも、初めて⽇本語ラップを始めたいとうせいこうさんと俳⼈の⾦⼦兜太さんの対談本の中で、俳句と⽇本語ラップの関係性が語られていて、例えばライミングと韻を踏むとか。佐藤⼤さんから出たアイデアなんですけども、俳句には⾳楽的ルーツがあるということで作品に落とし込んでいきました」と話した。

【画像】映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』 場面カット

また、⾳楽的ルーツというのは、実は本作の背景美術のスタイルにもつながっている。イシグロ監督は「⼭下達郎さんの『FOR YOU』というアルバムジャケット。鈴⽊英⼈さんという1980年代のポップカルチャーのアイコンのような絵を描かれている⼈が担当されているのですが、まさにそこが元ネタですね。作品の要素として⾳楽的なルーツを求めていたので、作品の中の美術のテイストを決める時に、シルエットを重視したイラストが僕⾃⾝の趣味嗜好の中にもずっと刺さっていて。ここは僕からの提案で「ヤマタツ、『FOR YOU』、この⾒た⽬でいきましょう!」と。まさにここからきていますね」と語った。

藤津が「当時は都会的というかアメリカ⻄海岸の空気感を描いていた絵で今の⽇本の郊外を描くというのがミソなのかなと」語ると、イシグロ監督は「そうですね。要素の組み合わせなんですよね。鈴⽊英⼈さん調の絵で美術を描くということだけではなく、今の⼦にとってショッピングモールというのが幼少期の記憶と紐づいていることとの組み合わせ。地⽅都市を選んだというのもそういう理由です。⽥んぼ、巨⼤なハコ、遠くには⼭の稜線。これって決して⻄海岸・東海岸のアメリカの要素はないんですが、インスピレーション元を辿っていって、今の時代にはめるとこうなる。僕は、若者に向かって作っているつもりなので」と語った。

【画像】映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』 場面カット

チェリー役の市川染五郎、スマイル役の杉咲花は思い通りのキャスティング

声優については、チェリーを市川染五郎、スマイルを杉咲花が務めているが、「声優は2⼈以外のキャスティングも提案させてもらうことが多いんです。チェリー役のキャスティングは難航しました。スマイルがチェリーの声を『かわいい』というシーンがあるのですが、『かわいいってどういう意味だ?』と⾃分で思ってしまって。変声期と⼤⼈の中間くらいのひっくり返ってしまうような声かなと思うんですが、そうなるとその年齢に近い⼈をキャスティングしないといけない。この作品の配給は松⽵さんにお願いすることが決まっていたので、『松⽵さんと⾔えば歌舞伎だよな』と。彼は当時まだ松本⾦太郎という名跡で中学1年⽣くらいだったかな。染五郎くんの歌舞伎のお芝居を観にいく機会があって、彼の声を聞いた時に『いたぞ!チェリーいたぞ!』となりました。杉咲さんは逆にシナリオ段階からイメージにあったんですが、僕は深夜アニメ上がりの監督だったので、現実味がなかったんですね。ただ染五郎くんがチェリーをやってくれることになって、彼⼥にアタックしました。思い通りのキャスティングができましたね」と語った。

本編鑑賞を終えた観客とのティーチイン
新公開⽇とイシグロ監督のYouTuberデビューも発表!!

観客とのティーチインでは、「コロナ禍で、映画館ではなく配信となる作品もある。制作において配信は意識していますか?」という質問が。イシグロ監督は「映画の場合は、劇場に⾜を運んで観ていただくので、⾳楽も含め⼤きなスクリーンでいい⾳で観ていただけることを意識して作っています。配信の場合はスマホやテレビなど⼩さい画⾯、必ずしもいい⾳ではない環境だということを念頭において作っていますね」と回答。質問した観客から「あと、『君嘘』(『四月は君の嘘』)より、僕は『Occultic;Nine -オカルティック・ナイン-』のほうが好きです」と言われると、「ガチヲタですね!(笑)」とコメントする一幕も。

【写真】第33回 東京国際映画祭(TIFF)  ジャパニーズ・アニメーション部門 映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』舞台挨拶 (イシグロキョウヘイ監督)

そして、本作の新たな公開⽇が2021年6⽉25⽇(金)に決定したことがイシグロ監督の⼝から発表されると、場内からは拍⼿が起こった。イシグロ監督は「夏の映画なので、夏に観て欲しいんです」と嬉しそうに語った。

続いて、「フジヤマさんの掘り下げた裏設定などはあるのか?」と聞かれると、「作中の劇中歌を⼤貫妙⼦さんにお願いしたんですが、この歌を歌っているサクラさんが⼤貫さんとイコールになるんですね。フジヤマさんとサクラさんの関係性がないと書けないんです。なので、前⽇譚となるプロットを書いているんですが・・・実は僕、公開に向けてYouTuberデビューしまして。「サイコトちゃんねる」というのを⽴ち上げました。ゲストを呼ぶとかはこのコロナ禍なのでできないんですが、企画から撮影、MA、納品まで僕がやってるんですけど(笑)。このプロットを朗読する回もあります。なので、皆さんが知りたい情報がアップされるかもしれません!」と、イシグロ監督がYouTuberデビューしていたことも発表された。

<イシグロ監督がホストを務める「サイコトちゃんねる」>

https://youtube.com/channel/UCIhfdxWGaK9SDyzS_dLJogg

以降、映画公開日まで毎週⽕曜⽇18:00頃にアップされる予定。2021年6月25日(金)の劇場公開まで待ちきれないという方や先んじて作品のことを知りたいというファンの方は毎週楽しみにしていただきたい。

イベント情報

第33回 東京国際映画祭(TIFF) 
ジャパニーズ・アニメーション部門
映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』Q&A

■開催日: 2020年11月3日(火)
■会場: TOHOシネマズ 六本木ヒルズ スクリーン9
■登壇者: イシグロキョウヘイ(監督) 
■MC: 藤津亮太(ジャパニーズ・アニメーション部門 プログラミング・アドバイザー)
■英語通訳: 深井紘子

【写真】第33回 東京国際映画祭(TIFF)  ジャパニーズ・アニメーション部門 映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』舞台挨拶 (イシグロキョウヘイ監督)

映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』予告篇🎞

映画作品情報

【画像】映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』 ポスタービジュアル

《ストーリー》

17回⽬の夏、地⽅都市――。

コミュニケーションが苦⼿で、俳句以外では思ったことをなかなか⼝に出せないチェリーと、⾒た⽬のコンプレックスをどうしても克服できないスマイルが、ショッピングモールで出会い、やがて SNS を通じて少しずつ⾔葉を交わしていく。

ある⽇ふたりは、バイト先で出会った⽼⼈・フジヤマが失くしてしまった想い出のレコードを探しまわる理由にふれる。ふたりはそれを⾃分たちで⾒つけようと決意。フジヤマの願いを叶えるため⼀緒にレコードを探すうちに、チェリーとスマイルの距離は急速に縮まっていく。

だが、ある出来事をきっかけに、ふたりの想いはすれ違って――。

物語のクライマックス、チェリーのまっすぐで爆発的なメッセージは⼼の奥深くまで届き、あざやかな閃光となってひと夏の想い出に記憶される。

アニメ史に残る最もエモーショナルなラストシーンに、あなたの感情が湧き上がる!

 

キャスト

市川染五郎、杉咲 花
潘 めぐみ、花江夏樹、梅原裕⼀郎、中島 愛、諸星すみれ、神⾕浩史、坂本真綾、⼭寺宏⼀

スタッフ

原作: フライングドッグ
監督・脚本・演出: イシグロキョウヘイ
脚本: 佐藤 ⼤
キャラクターデザイン・総作画監督: 愛敬由紀⼦
⾳楽: ⽜尾憲輔
演出: ⼭城智恵
作画監督: ⾦⽥尚美、エロール・セドリック、⼩澤 郁、渡部由紀⼦、辻 智⼦、洪 昌熙、⼩磯由佳、吉⽥ 南
原画: 森川聡⼦
プロップデザイン: ⼩磯由佳、愛敬由紀⼦
⾊彩設計: ⼤塚眞純
美術設定・レイアウト監修: ⽊村雅広
美術監督: 中村千恵⼦
3DCG 監督: 塚本倫基
撮影監督: 棚⽥耕平、関⾕能弘
⾳響監督: 明⽥川 仁
アニメーションプロデューサー: ⼩川拓也
劇中歌:「YAMAZAKURA」⼤貫妙⼦
主題歌:「サイダーのように⾔葉が湧き上がる」never young beach
アニメーション制作: シグナル・エムディ×サブリメイション
製作: 『サイダーのように⾔葉が湧き上がる』製作委員会
配給: 松⽵
 
© 2020 フライングドッグ/サイダーのように⾔葉が湧き上がる製作委員会
 
2021年6⽉25⽇(金) 全国ロードショー!  (公開延期)
2021年7月22日(祝・木) 全国ロードショー!
 
映画公式サイト
 
公式Twitter: @CiderKotoba
 

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