第12回 TAMA映画賞 授賞式レポート
【写真】第12回 TAMA映画賞 授賞式 (フォトセッション2)

第12回 TAMA映画賞 授賞式

今年も開催!各賞を受賞した映画人が登壇💐
それぞれが受賞の喜びと今後の抱負を語る!!

東京都多摩市で毎年晩秋に開催されている映画ファンの祭典「第30回映画祭TAMA CINEMA FORUM」が今年も11月21日(土)から11月26日(木)、多摩市内の2会場で開催。そして、国内映画賞のトップバッターとして注目を集める「第12回TAMA映画賞」の受賞作品及び受賞者が決定し、11月29日(日)に府中の森芸術劇場 どりーむホールで授賞式が行われた。

TAMA映画賞は、2009年にスタートし、前年10月から当年9月に一般劇場で公開される作品及び監督・キャスト・スタッフを対象に、市民ボランティアの実行委員が選考。「明日への元気を与えてくれる・夢をみせてくれる活力溢れる<いきのいい>作品・監督・俳優」を、映画ファンの立場から感謝を込めて表彰している映画賞である。

【写真】第12回 TAMA映画賞 授賞式

例年は多摩市の会場で行われていたが、現在パルテノン多摩が大規模改修工事中ということもあり、今年は府中市の協力を得て、府中の森芸術劇場 どりーむホールでの開催となった。

竹内昇委員長による開会宣言、阿部裕行名誉会長(多摩市長)、高野律雄府中市長、両名による挨拶に続いて、各賞を受賞した監督、俳優、プロデューサーら映画人が順次登壇し、受賞トロフィーの授与が行われた。

各賞の受賞結果と授賞式の模様は下記の通り。

最優秀新進監督賞
2020年度最も飛躍した監督、もしくは顕著な活躍をした新人監督を表彰

 ふくだももこ監督
『君が世界のはじまり』

初長編映画『おいしい家族』(2019年)に続いて、2作連続で松本穂香を主演に起用した映画『君が世界のはじまり』で最優秀新進監督賞を受賞したふくだももこ監督が登壇。

先週出産を終えたばかりのふくだ監督は、受け取ったトロフィーを赤ちゃんのように抱きかかえてスピーチ。自身の原作小説を脚本家の向井康介が脚本を手掛けたことについて聞かれると、「まず“最高”としか言葉が出てこなかった。憧れの脚本家だったので光栄でした。プロってすごいと思いました」とコメント。

また、個性が輝く若手俳優たちについては、「ほんまに素晴らしい。新しい映画界、演劇界、音楽界、映像界全部で活躍していくであろう素晴らしい俳優の子たちと仕事をさせてもらって本当によかったです」と語った。

今後の抱負については、自身が出産したことを述べ「子どもがほしかった一番の理由は“子どもに会いたかった”ということですが、映画界、映像界で出産や育児をしているスタッフが少しでも働きやすくなるように保育部を創りたいとずっと思っていました。多分、監督に子どもがいることは結構な圧力になるのではないか、切実にみんなが考えてくれるのではないかという思いがあって、早く子供がほしかったという理由もありました。少しでもいろんな人が働きやすくしていけたらいいなと思っています。皆さんも応援して下さい」と思いを述べた。

 

 HIKARI監督
『37セカンズ』

ロサンゼルスからリモート参加のHIKARI監督に代わって山口晋プロデューサーが登壇。トロフィーを受け取ると、トロフィーを高々に掲げてカメラの向こうのHIKARI監督に向かって「HIKARIちゃん獲ったよー」と喜びのメッセージ。

続いて、受賞を受けたHIKARI監督は「しっかりと愛を受け止めました。ありがとうございます。本当にうれしい限りです」とスクリーン越しにコメント。

映画『37セカンズ』が完成するまでの間、障害を持った方々からたくさんの学びを得て、「映画を通じて見えない壁を無くせれば」と語っていたHIKARI監督は、「私たち人間は自分と違う状況や環境の中で生きる人たちと出会った時にどうしても色眼鏡で見てしまう。一人ひとりさえお互いに理解できれば、見えない壁は無くなっていくと思います」と改めて思いを述べた。

主人公・ユマと同じ境遇の佳山明をオーディションで主演に抜擢したことについては、「実際に車いすの女性をキャスティングすることは重要でした。佳山明さんと出会えたことでこの映画がさらに素敵な作品になったので、感謝の気持ちでいっぱいです」、「彼女のかぼそい声にハートを射止められました。映画はキャスト次第ですべて変わっていく。彼女に一番惹かれた理由は、すべての状況に対して反射的に素直に状況をキャッチして、その中で自然に演技としてやってくれたことです。それが映画の魅力の一つになっているのは事実です」と語り、「素晴らしいキャストの方たちに恵まれて、彼女自身もその中で学んで、どんどん成長して輝いていった。皆さんの力でこの作品は出来上がったと思います。明ちゃんもすごく頑張ってくれました」と称えた。

最後に、長編映画の2作目(オリジナル作品)を撮影をしていくことを明かし、「監督だけではなく、クリエイターとしてもプロデューサーとしても、たくさんの方々と世界が平和になる作品を手掛けていきたい」と今後の抱負を語った。

最優秀新進女優賞
2020年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活躍をした新人女優を表彰

 森 七菜
『ラストレター』『青くて痛くて脆い』『地獄少女』『最初の晩餐』

話題作への出演が続き、躍進の1年になった森七菜が登壇し「この度はこの栄えある賞をいただいたこと、本当に嬉しく思います。ありがとうございます」と感謝を述べた。

『ラストレター』では松たか子演じる裕里の少女時代と娘の1人2役を熱演。2役を演じる上での難しさについて、森は「初めての1人2役だったので難しさはありました。特に裕里は、少し松さんの真似をする部分と自分の気持ちで動くことを意識した部分があって」とコメント。

数々の名作を生み出した岩井俊二監督を“経験豊富なキャストに囲まれてもアドリブを入れる余裕があるのがすごい”と驚かせたという森は、アドリブについて「1番最初に少しだけやってみたら意外と怒られなかったので、だったらもっと楽しいことを自分から提案できたら良いなと思って」と語り、持ち前の度胸を感じさせた。

最後に、今後について語った森は「今年は皆さんに驚いてもらうことが多かった1年だと思います。この賞の受賞や初めて映画とドラマの主演をやらせていただいたことで、初めて私のことを知って「いきなり現れたこの小娘はなんだ?」って「?」が浮かんだ方もいらっしゃると思うんですよ。だから来年は、その「?」を「!」に変えて、「なるほど!」と思ってもらえる1年にしたいと思います」と、“森七菜らしさ”あふれる抱負を語った。

 

 松本 穂香
『君が世界のはじまり』『わたしは光をにぎっている』『酔うと化け物になる父がつらい』『his』ほか

最優秀新進監督賞を受賞した、ふくだももこ監督作品での受賞となった松本穂香が登壇した。受賞について松本は「ふくだももこ監督と(ご一緒するのが)2作目となる作品で、ふくださんと一緒に受賞できたことが本当に本当に嬉しくてたまりません。また違う作品でふくだ監督と一緒にこの場に立てるようにこれからも頑張っていきたいと思います」と感激した様子でコメント。

大阪の高校生たちの群像劇を描いた『君が世界のはじまり』。自身の学生時代と重なる部分について松本は「縁は、私の学生時代よりも大人びていましたね。「業平くんがここにおってよかった」というセリフがあって、“大切な人がそこにいてくれるだけで嬉しい”ということを人に伝えることを、私自身は学生時代には出来なかったので」と語った。

さらにふくだももこ監督が再度登壇し、前作に引き続き松本を起用した理由について「松本穂香ちゃんのことが単純に好きなんです。この映画祭で「豊かな情熱を持っている」と彼女が紹介されていましたが、言葉通りの子です。“とても芯が強くて、声がよくて、度胸もあるが、それを見せない。だけど芝居をしたらわかる”っていう最高の俳優です」とベタ褒めした。

これに対して松本は「日頃からこの気持ちを伝えてくれているんです。映画を通してみても、みんなの撮り方とかの1つ1つに愛情を感じるんですよ。ここまで愛情を持って撮ってくださる監督さんはなかなかいないと思います」と同じくラブコールを送った。

最後に松本は今後の抱負について「様々な方に純粋に楽しんでいただけるものをたくさん作っていけたら良いなと思っております」と語った。

最優秀新進男優賞
2020年度最も飛躍した男優、もしくは顕著な活躍をした新人男優を表彰

 北村 匠海
『サヨナラまでの30分』『思い、思われ、ふり、ふられ』『影踏み』ほか

会場に来られなかった北村からはビデオメッセージが届いた。

北村は「“新進”男優賞ということで、“新しく進む”と書く、名誉ある賞をいただけたこと本当に嬉しく思います。様々なことが1年で起こりますが、とにかく今はエンタメ、そして映画という世界が前に進んで、色々な作品を打ち出したり、盛り上げていくしかないと思います。僕自身、そこに少しでも関われているならばとても嬉しく思いますし、この“新進”という言葉がさらに似合う俳優として2021年も頑張っていきたいと思います。ありがとうございました」と意気込みと共に感謝を語った。

 

 宮沢 氷魚
『his』

映画賞初受賞となった宮沢氷魚は「僕は役者を初めて3年近くになるのですが、賞をいただくのは今回が初めてなので、この賞は一生忘れられない賞になると思います。この3年間で出会った全てのスタッフ、キャスト、皆さんに本当に感謝したいです」と語る。

初主演作品でプレッシャーを感じていた宮沢を支えてくれたという、藤原季節との共演について「10日間の共同生活を送ったのですが、本当に変わっている子で。10日間白川に行くということをもちろん本人は知っているのですが、Tシャツ1枚と下着1枚くらいしか持ってきていなくて。「氷魚、タオルかして」というところから始まった関係なのです。季節くんが自分を開いて僕を受け入れてくれたことに本当に感謝しているし、季節くんじゃなければこの作品は成立しなかったと思います」と称賛した。

特別賞
映画ファンを魅了した事象に対し表彰

 岩井澤健治監督、及びスタッフ・キャスト一同
『音楽』

7年かけて長編アニメーションを個人製作した岩井澤監督は「素晴らしい賞をいただき、大きい会場で表彰していただけて大変嬉しく思います」とまず感謝を述べた。

実際に人に演じさせた実写を撮ってからアニメーションを起こすという制作上の工夫について岩井澤監督は「動きがあるから普通に作るより楽にできるんです。長編アニメーションを個人制作するために必要な工夫のひとつです」 と語った。さらに7年という長い時間をかけて製作されたことで、制作開始時と完成後で変わったところについて問われると「影響という面では、キャスティングの時に“7年かかっている作品からのオファーは断れない”ということで豪華な方々に声優をしていただくことができました」と特有のエピソードを披露。さらに3作にわたってコンビを組んでいる原作漫画家の大橋裕之について「僕の中では総監督ぐらいの立ち位置にいます。大橋さんがいたからこそできた映画です」とコメントした。

最後に岩井澤監督は「アニメーション表現は多様性がなかったりするので、僕が長編アニメーション製作するように、作家性の強い作品が出てくれば良いですね。7年も1人でアニメーションを作ってるから“面倒くさいやつだ”と思われて仕事のオファーとかは無いですが、個人的に企画して作っていければ良いなと思います」と今後の抱負を語った。

城定秀夫監督、及びスタッフ・キャスト一同
『アルプススタンドのはしの方』

城定監督は今回の受賞を受けて、キャストやエキストラ、原作となった兵庫県立東播磨高校演劇部の名を挙げて感謝を述べた。

コロナ渦に公開され、口コミでバズったことを受けて「制作した頃は世の中がこのような状況になり、まさか甲子園が中止になるとは想像もしていなかった。コロナの自粛期間と上映のタイミングか重なってしまって。強引に1カ月公開期間を伸ばすなどの工夫をしましたが、試写を開いても10人も集まらないし、宣伝もされないという状況でした。でも上映が開始されてから口コミで広がっていったので、この時期に公開されたことに何か運命的なものを感じますね。観客の皆さんの応援で大きくなった映画だと思います」と振り返った。

どんなジャンルでも傑作に仕上げることから“映画料理人”と称される城定監督。原作の名作戯曲を映画化する上での工夫について「誰がそんなふうに呼んでいるのかは知りませんが(笑)。僕自身原作に感動したので、料理に例えるのならば“素材の味を生かそう”ということで。あまり自分の味を押し付けようとするのではなく、素の状態でなるべく良いものを差し出したいという意識でしたね」とコメントした。

途中、小野莉奈、⻄本まりん、中村守里、平井亜門、目次立樹らキャスト陣も登壇。それぞれが受賞への感謝と今後の抱負を述べた。

最後に城定監督は「小さい作品から中くらいの作品まで色々と準備はしております。“映画料理人”の名に恥じないように頑張っていきたいと思います。またこの舞台に呼んでいただけると嬉しいです」と抱負を語った。

最優秀女優賞
2020年度最も心に残った女優を表彰

 長澤 まさみ
『MOTHER マザー』『コンフィデンスマンJPプリンセス編』

登壇者コメント
 

 水川 あさみ
『喜劇 愛妻物語』『グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇』『ミッドナイトスワン』

登壇者コメント

最優秀男優賞
2020年度最も心に残った男優を表彰

 濱田 岳 
『喜劇 愛妻物語』『グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇』『コンフィデンスマンJPプリンセス編』ほか

 

 福山 雅治
『ラストレター』『マチネの終わりに』

登壇者コメント

最優秀作品賞
2020年度最も活力溢れる作品の監督及びスタッフ・キャストに対し表彰

『ラストレター』
  岩井俊二監督、及びスタッフ・キャスト一同

登壇者コメント
 

『海辺の映画館-キネマの玉手箱』
 大林宣彦監督、及びスタッフ・キャスト一同

登壇者コメント

2時間半におよぶ授賞式の最後には恒例の登壇者全員での記念撮影。新型コロナウィルス感染防止対策としてソーシャルディスタンスの確保と飛沫防止パーティション設置のため、今年は総勢30名を15名ずつ2組に分けてフォトセッションを行い、第12回TAMA映画賞授賞式は終了した。

【写真】第12回 TAMA映画賞 授賞式 (フォトセッション)

[スチール撮影・記者: Cinema Art Online UK]

フォトギャラリー📸

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イベント情報

第12回 TAMA映画賞 授賞式

■開催日: 2020年11月29日(日)
■会場: 府中の森芸術劇場 どりーむホール
■登壇者:
★プレゼンテーター(TAMA映画フォーラム実行委員会): 竹内昇(委員長)、阿部裕行(名誉会長/多摩市長)、高野律雄(府中市長)、牧田和久(公益財団法人多摩市文化振興財団 代表理事)
★受賞者: 大林恭子プロデューサー、奥山和由プロデューサー、常盤貴子、厚木拓郎、細山田隆人、細田善彦、吉田玲、岩井俊二監督、福山雅治、濱田岳、水川あさみ、大森立嗣監督、城定秀夫監督、小野莉奈、西本まりん、中村守里、平井亜門、目次立樹、岩井澤健治監督、宮沢氷魚、北村匠海(ビデオメッセージ)、松本穂香 、森七菜、HIKARI監督、ふくだももこ監督
■司会者: 宇佐美瞳、片野晴道

TAMA映画賞 公式サイト

http://www.tamaeiga.org/award/

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