我ら自転車課へかせられた、時空を越えたミッション!
それは私の夢へと交差する!!
《ストーリー》
赤松雀(武田梨奈)は愛知県宇和島市の市立図書館にて「自転車課」の勤務についている。採算よりも人々の交流を大切にしようというコンセプトのもとにつくられた自転車で図書を市民に配達する係だ。彼女は夢であった小説家として1作目は出版したものの、2作目が書けず故郷に戻ってきた。挫折を味わったことから、前に進むことができず中途半端な日々を過ごしている。
街では「宇和島伊達400年祭」の準備が盛り上がっているが、その武者行列で復元させるお姫様の打ち掛けの刺繍図録が見つからず、大問題に。図書館あげての大捜索が始まった。さらに、自転車課の廃止が濃厚ということを上司から告げられる。同僚の岡崎賢一(小林豊)や原田ハナ(佐生雪)と共にこのピンチを乗り越えられるのか。そして雀は2作目を執筆することができるのか―。
《みどころ》
この映画が始まって、すぐに目を引くのが、雀を取り巻く宇和島市の心洗われるようなのどかな景色。そして疾走する自転車のスピード感。まずは、それを演出するカメラワークに注目したい。自転車を漕ぐという行為は、他のスポーツにくらべ、動きの変化がなく、単調になりやすい。しかし、飽きることなく、物語へすっと導入されていく。この映画では、終始誰もが感じたことがあるであろう等身大の悩みや嬉しさがあふれている。夢を叶えることって難しいな。親に認めてもらえないって悲しいな。友人に応援してもらえるって嬉しい。など、ささやかではあるが、自分には大きな想い。それは、一人では感じることができないものだ。
宇和島で、雀を取り巻く人間模様にも注目したい。自転車課の仲間として一緒に無理難題に挑む岡崎賢一や原田ハナがいるのも心強いが、母・京子(岡田奈々)や同級生(熊木陸斗)など初めから素直に応援してくれる人もいる。また、顔を合わせると怒ったり嫌味を言ったりしていまう父・武男(内藤剛志)や同僚・清家壮太(佐藤永典)も応援はしたいがどうしても素直になれない。そんな心情がところどころで垣間見える。そして、図書を配る中で触れ合う宇和島の人々がとても暖かく、雀の心を癒していく。
雀が勤めている図書館に置いてある自分の1冊目の本。他人からみたらそれは自慢すべきものに見えるかもしれない。けれど、2冊目が出せない雀にとっては、見るたびに心に重くのしかかるのだ。今のままじゃダメとは思っているのとは裏腹に、今のままも守りたいと思ってしまっている。「宇和島伊達400年祭」での騒動を切り抜けるためのヒロインの愚直なまでの頑張りはだんだんと周りの心を動かしていく。そして自分の心も動きつつあるのを感じている。
「あんたの新作はいったいいつでるんぞ?」雀でなくとも、このような期待に応えられていないことは誰にもあると思う。ずっと苦笑いをしてかわしていたこの言葉を雀とともに受け止めることができるようになりたい。
[ライター: 堀越 健介]
© 2016 「海すずめ」製作委員会」 製作委員会
映画『海すずめ』予告篇
映画作品情報
出演: 武田梨奈、小林豊、内藤剛志、岡田奈々、目黒祐樹、吉行和子ほか
監督・脚本: 大森研一
主題歌:「ただいま」 植村花菜(キングレコード)
企画・製作: ウサギマル
配給: アークエンタテインメント株式会社
2016年 / 日本 / カラー / 16:9 / 5.1ch / 108分
© 2016 「海すずめ」製作委員会」 製作委員会
2016年7月2日(土) 有楽町スバル座ほか全国ロードショー!