映画『ブルーハーツが聴こえる』(THE BLUE HEARTS) レビュー
映画「ブルーハーツが聴こえる」

映画『ブルーハーツが聴こえる』

色褪せることなく輝き続けるブルーハーツの名曲たちを豪華キャストと監督によって映像化!
これを観たあなたはきっとまたブルーハーツを聴きたくなるでしょうーーー

THE BLUE HEARTS(ザ・ブルーハーツ)の楽曲は、老若男女問わずきっと誰でも一度は耳にしたことがあるだろう。シンプルで力強いビート、親しみやすいメロディー、まっすぐなメッセージを投げかける歌詞は世代も時代も超えて多くの人の心に響き、多大なる影響を与えてきた。

そんなTHE BLUE HEARTSに衝撃を受けた6人の監督が、2015年のバンド結成30周年を機に、監督それぞれが思い入れのある楽曲「ハンマー(48億のブルース)」「人にやさしく」「ラブレター」「少年の詩」「情熱の薔薇」「1001のバイオリン」を選び、それぞれの自由な解釈で映像化した。それが映画『ブルーハーツが聴こえる』だ。
上映順に各作品を紹介する。

『ハンマー(48億のブルース)』(監督:飯塚健)

まず1作品目の『ハンマー(48億のブルース)』は尾野真千子と角田晃広(東京03)のテンポの良い台詞の掛け合いが見どころ。長年付き合った彼氏の浮気現場を目撃するところから始まる、恋愛に悩むアラサー女子のストーリーをポップに描く。彼女が職場の先輩と何故か職場に入り浸っている女子高生ふたりという謎の仲間たちと起こした行動とは・・・?! 観た後に前向きな気持ちになれる作品である。

映画「ブルーハーツが聴こえる」『ハンマー(48億のブルース)』

『人にやさしく』(監督:下山天)

次に2作品目の『人にやさしく』は市原隼人、高橋メアリージュンらによるアクションで繰り広げられる、極限下に置かれた人間模様を描いた本格SF作品。舞台は遥か未来、銀河の彼方で刑務所惑星を目指す囚人護送船という設定。しかしCGを使わず、昔ながらの特撮にこだわっているところも見どころのひとつである。「人にやさしく」という楽曲とこの作品とはどのように繋がってくるのか…それはラストシーンで明らかになる。

映画「ブルーハーツが聴こえる」『人にやさしく』

『ラブレター』(監督:井口昇)

そして3作品目の『ラブレター』は斎藤工と要潤が高校生にタイムスリップする役を演じる、ノスタルジックで甘酸っぱくも可笑しい初恋ファンタジー作品。プロの脚本家である主人公は自分の青春時代を題材にしたシナリオを書いていたが、何故かトイレから25年前にタイムスリップしてしまう。そしてその高校時代には過去に戻っても変えたいと願う”ある出来事”があった・・・。初恋の相手を演じる山本舞香のさわやかな演技が、観客のそれぞれの懐かしい青春時代の記憶を呼び起こすように光る。

映画「ブルーハーツが聴こえる」『ラブレター』

『少年の詩』(監督:清水崇)

4作品目の『少年の詩』は思春期に差しかかったばかりの息子を持つシングルマザーを優香が演じ、その母に想いを寄せる上司を新井浩文が演じている。母親と喧嘩して1人ぼっちの誕生日を迎えようとしていた鍵っ子の健(内川蓮生)は母親に関する”あること”を知って頭を悩ませていた・・・。1987年という舞台背景のもと、団地の空気感、デパートのアドバルーンや、看板やTVCMなど細かいところでその時代が再現されているのもみどころである。30年前の日本の団地を舞台に描かれる母と息子の絆に懐かしさを感じつつホロリと感動させられる作品だ。

映画「ブルーハーツが聴こえる」『少年の詩』

『ジョウネツノバラ』(監督:工藤伸一)

そして5作品目の『ジョウネツノバラ』は主演の永瀬正敏が自ら共同脚本を務め、水原希子がその恋人役を演じている。「死んでしまった恋人と、それでもずっと一緒にいたい」という愛する人への思いは、究極の愛の形となって男に驚くべき行動を起こさせる。全編台詞無しということを忘れさせる永瀬の細やかな演技が光り、さらに水原希子の美しさに目を奪われる。

映画「ブルーハーツが聴こえる」『ジョウネツノバラ』

『1001のバイオリン』(監督:李相日)

そして最後に『1001のバイオリン』。豊川悦司が元原発作業員の男を演じる本作は、“3.11”のそののちの、福島を故郷に持つ一家の姿を見つめた社会派ヒューマンドラマである。東京で暮らす元原発作業員の男とその家族、そして今も原発作業員として福島で生活する男とその男にできた新しい家族。それぞれに故郷を思う気持ちがあり、これからの生活に目を向けていきたいという思いもある。福島にそのままの姿で残されている我が家に久しぶりに戻ってきた男が立つその姿は、どうにもならない思いのやり場のなさと、それでも生きていくんだという思いが感じられる。さらに豊川悦司の味のある福島弁が観客の心を掴んでいく。これまでの5作品の流れの中にあった鑑賞者の時間軸がこの作品で「リアルな今現在」となり、2011年の3月11日以降のこと、そしてこれから先のことへと思いを巡らせることになる。

映画「ブルーハーツが聴こえる」『1001のバイオリン』

そしてラストに流れてくる『1001(1000)のバイオリン』を聴いた時、ブルーハーツの曲の持つ魅力に改めて気づき、その歌詞の力強さに心撃たれ、これらの作品のテーマとなっている曲はもちろん、様々なブルーハーツの曲達を改めて聴き返したくなることだろう。

[ライター: Sayaka Hori]

映画『ブルーハーツが聴こえる』予告編

映画作品情報

映画「ブルーハーツが聴こえる」

「ハンマー(48億のブルース)」
尾野真千子×角田晃広(東京03)の掛け合いに笑い、恋愛に悩むアラサー女子をポップに描く。
 
「人にやさしく」
市原隼人×高橋メアリージュンがアクションで魅せ、極限下の人間模様を描く本格SF作品。
 
「ラブレター」
斎藤工×要潤×山本舞香によるノスタルジックで、可笑しくも泣ける初恋ファンタジー。
 
「少年の詩」
優香×内川蓮生×新井浩文が挑むシングルマザーと思春期に差し掛かった少年の絆を描く。
 
「ジョウネツノバラ」
永瀬正敏×水原希子による、究極の愛を美しく壮大なビジュアルで描いた異色ラブストーリー。
 
「1001のバイオリン」
豊川悦司×小池栄子×三浦貴大×石井杏奈による、震災に翻弄された家族を描くヒューマンドラマ。
 
出演: 尾野真千子 角田晃広/市原隼人 高橋メアリージュン/斎藤工 要潤 山本舞香/優香 内川蓮生 新井浩文/永瀬正敏 水原希子/豊川悦司 小池栄子 三浦貴大
監督: 飯塚健/下山天/井口昇/清水崇/工藤伸一/李相日
配給: 日活 / ティ・ジョイ 宣伝協力: MUSA

© TOTSU、Solid Feature、WONDERHEAD/DAIZ、SHAIKER、BBmedia、geek sight

2017年4月8日(土)より、新宿バルト9ほか全国ロードショー!
 
映画公式サイト
 
公式Twitter: @thebluehearts_m
公式Facebook:
@thebluehearts.movie

この記事の著者

Sayaka Horiフォトグラファー/ライター

★好きな映画
『パリ、テキサス』 (Paris,Texas) [監督: ヴィム・ヴェンダース 製作: 1984年]
『マルホランド・ドライブ』 (Mulholland Drive) [監督: デヴィッド・リンチ 製作: 2001年]
『狂い咲きサンダーロード』 [監督: 石井 聰亙 製作: 1980年]

Sayaka SAPP Hori
http://horisayaka3.wixsite.com/mysite

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