映画『ヘヴン・ウィル・ウェイト』(Heaven Will Wait) レビュー
【画像】映画『ヘヴン・ウィル・ウェイト』 (Heaven Will Wait / Le ciel attendra) メインカット

映画『ヘヴン・ウィル・ウェイト』
(原題:Le ciel attendra) 

中東へ、半人形化する少女たち

《ストーリー》

イスラム過激派組織による、少女たちの人拐いや洗脳が、欧州で多発、深刻化している。17歳のソニアは、家族に天国を約束すべく中東に旅立つ。音楽と友達を愛する16歳のメラニーは、ネットで出会った「王子」に恋をする。少女たちの洗脳を説く女性は実名で登場し、少女だけでなくその親たちにもセラピーを施すのだった。

【画像】映画『ヘヴン・ウィル・ウェイト』 (Heaven Will Wait / Le ciel attendra) 場面カット

《みどころ》

『奇跡の教室~受け継ぐ者たちへ~』(原題:Les heritiers / 2014年)のマンシオン=シャール監督が、現代欧州社会の抱える問題に真正面から向き合う。この物語は、フィクションである。しかし、半ノンフィクションと言ってもいいだろう。イスラム過激主義に昏倒する少女とその親たちに綿密な取材を行い、その体験を元にして生々しく描く。

【画像】映画『ヘヴン・ウィル・ウェイト』 (Heaven Will Wait / Le ciel attendra) 場面カット

「今、何をしている」「男と話すな」「祈りの時間だ」早く、早く、早くーSNSで次々と、息をつく間もないほどされるやり取り。少女たちが「王子様」と呼ぶ勧誘員からのメッセージはやがて、暴力的な命令に変わっていく。混乱していく少女たちが指示を待つ人形のようになる過程に、背筋が凍る。

【画像】映画『ヘヴン・ウィル・ウェイト』 (Heaven Will Wait / Le ciel attendra) 場面カット

遠く欧州の物語は、われわれの日常にひそむ問題でもある。情報の氾濫により、人は情報を受けとるだけでも息切れしそうだ。思考力停止に警鐘を鳴らすかのような作品である。

[ライター: 宮﨑 千尋]

 © Willow Films UGC IMAGES France 2 Cinéma 

映画『ヘヴン・ウィル・ウェイト』(Heaven Will Wait) 予告篇

映画作品情報

第41回 トロント国際映画祭(tiff) CONTEMPORARY WORLD CINEMA部門 出品作品
第29回 東京国際映画祭(TIFF) ワールド・フォーカス部門 出品作品
第21回 釜山国際映画祭(BIFF) ワールド・シネマ部門 出品作品
リュミエール賞2017 脚本賞&新人女優賞(ノエミ・メルラン) ノミネート
 
邦題: ヘヴン・ウィル・ウェイト(仮題)
英題: Heaven Will Wait
原題: Le ciel attendra
 
監督・脚本・プロデューサー: マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール
脚本: ミシェル・フレシュ
撮影監督: ミリアム・ヴィノクール
編集: ブノワ・キノン
 
出演: ノエミ・メルラン、ナオミ・アマルジェ、サンドリーヌ・ボネール、クローティルド・クロー、ジヌディーヌ・スアレム
 
2016年 / フランス / フランス語 / 105分 / カラー
© Willow Films UGC IMAGES France 2 Cinéma

第29回 東京国際映画祭(TIFF) 公式サイト

この記事の著者

宮﨑 千尋ライター

一番古い映画に関する記憶は、姉と「天使にラブソングを...」ごっこをして遊んだこと。
10代後半でひとり暮らしを始めてから、ひとり映画にどっぷりはまっている。
映画館の独特な雰囲気を好み、休みの日にはミニシアターや小さなカフェで行われる自主上映にも足を運んでいる。

★好きな映画
『天使にラブソングを...』 (Sister Act) [監督: Emile Ardolino 製作:1992年/米]
『アバウトタイム~愛おしい時間について~』 (ABOUT TIME) [監督: Richard Curtis 製作: 2013年/英]
『シックスセンス』 (The Sixth Sense) [監督: M. Night Shyamalan 製作: 1999年/米]

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