映画『ちはやふる -上の句- 』
「競技かるた」に全てを懸け、青春を駆け抜ける高校生たちの純真
ストーリー
小学校の頃から小倉百人一首を使った「競技かるた」に夢中だった千早(広瀬すず)は、入学した瑞沢高校で新たに「競技かるた部」を創ることを決意。何とか部創設に必要なメンバー5名を集めようと学校中を奔走する。初めはノリ気でなかったが千早の情熱に心を動かされた幼なじみの太一(野村周平)を初め、何とか部員を集めることに成功。かるたの聖地「近江神宮」で行われる全国大会出場を目標に、まずは東京都予選に挑むもうと、千早の指導のもと猛特訓が始まった―
若さが詠じる一途な歌
映画『ちはやふる』は、元々は末次由紀による少女漫画が原作で、単行本の発行はすでに30巻を超えているベストセラーだ。若者を中心に多くの人から支持されてきた名作といっていい。何がそんなにも人々の心を惹きつけるのか。その答えは、この映画をご覧になれば一目瞭然。主人公・千早を初めとする登場人物たちの一途な行動と無垢な情熱に、高校生は今の自分たちの姿をダブらせ、大人たちは昔の自分を思い出しながらノスタルジーに浸るのだろう。あまり馴染みのない「競技かるた」という題材を使ってひとひねり入れているが、堂々たる王道の青春物語だ。
「ちはやふる」とは、平安時代の歌人・在原業平が詠みあげた有名な短歌の枕詞のこと。「神」という言葉に掛かる常套句 ―言うなれば決まり文句なのだが、別に「勢いの強いさま」という意味も含まれている。その名のとおり、夢に、恋に、勢いよく無我夢中に向かっていく千早の“さま”は実に爽快で、そのひたむきさは、まさに胸のすくような名歌といっていい。
みどころ
2015年、映画『海街diary』で新人賞を総ナメにしてきた広瀬すずを始め、野村周平、上白石萌音など若さあふれるフレッシュなメンバーが、瑞沢高校かるた部員として登場する。個性あふれるユニークな仲間たち。
みんなで映画さながらの合宿や猛特訓をつんできたそうだが― だからだろうか。抜群のチームワークというか、百年の知己というか・・絶好のコミュニケーションがマブしく目に映る。「あの頃は皆あんな風だったなー」などと懐かしく思うのと同時に、少しうらやましく感じる人もいるのではないだろうか。成人した大人にとって、決して戻ることのできないステージ。ティーンズの力溢れんばかりのエネルギーが、スクリーンから所狭しと飛び出てくる。
学校の日常も見事なまでに正統派な演出で描かれていて、等身大の高校生活をのぞくことができる。授業を受け、部活をし、とりとめもないバカ話を繰り返す。そしてほのかな恋心を、なすすべもなく独りしまいこんで…それは不格好で未熟なことかもしれないが、間違いなく10代の高校生でしか体現できないものだ。こうした魅力ある「不完全さ」をストレートに受けとることができるのも、本作の醍醐味だろう。
映画『ちはやふる』は、まさに若人たちの花模様。古(いにしえ)の大和言葉を織り交ぜながら、現代の青春を謳歌するいくつもの快首が並ぶ。観る人それぞれの“一首”も、きっとその中にあるに違いない。
[ライター: 藤田 哲朗]
映画『ちはやふる -上の句- 』予告篇
映画作品情報
原作: 末次由紀 「ちはやふる」(講談社「BE・LOVE」連載)
監督/脚本: 小泉徳宏
音楽: 横山 克
主題歌:「FLASH」 Perfume(UNIVERSAL MUSIC)
出演: 広瀬すず、野村周平、真剣佑、上白石萌音、矢本悠馬、森永悠希、清水尋也、松岡茉優、松田美由紀、國村隼
2016年 / 日本 / 日本語 / カラー / 111分 / 映倫区分: G
配給: 東宝株式会社
© 2016 映画 「ちはやふる」 製作委員会 © 末次由紀/講談社
<下の句>は 2016年4月29日(金・祝) 公開!
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★