木村紅子役 石橋静河インタビュー
笑えると思っていたシーンが、
後で思い返すと笑えなくなる“怖さ”のある作品。
「ようこそデュード。これであなたも町の住人です。」
もしかしたら日本のどこかに本当に存在するかもしれない、ある「町」。出るのも入るのも自由だが、決して逃げることが出来ない「町」とは?
これまで多くのCM・MVを手がけてきた荒木伸二による初長編映画。第1回木下グループ新人監督賞・準グランプリを受賞したオリジナルストーリー『人数の町』が9月4日(金)より新宿武蔵野館ほか全国にて公開される。
新感覚のディストピア・ミステリーの世界で主人公・蒼山を演じるのは卓越した演技力で幅広いファン層を獲得し続ける中村倫也。力強い瞳が印象的なヒロイン・紅子役は近年話題作の活躍めざましい石橋静河。美しくも謎を秘めた住人・緑役にはViVi専属モデルで今作が映画デビューとなる立花恵理、チューター・ポール役に山中聡といった魅力ある実力派が「町」を構成する。
失踪した妹と姪を探すため、自ら「町」の住人となるヒロイン・木村紅子を演じた石橋静河に今作について話を聞いた。
—— 本作の脚本を読んだ際に受けた率直な印象をお聞かせください。
「ゾッとした」というのが第一印象ですね。「個人が人数だけでカウントされる存在になる」そんなのは嫌だなと思いましたし、個人を尊重する世界において、そんなことはあってはならないことなのに、リアルに実在しそうだなとも思えてしまう。だからこそ余計に怖かったですね。
—— ご自身が演じた木村紅子についてお聞かせください。
彼女は常識的な人で、他の人たちよりも正義感や責任感の強い女性なのだろうなと思いました。彼女自ら「町」の住人となるけど、なかなか「町」に馴染まない、「町」の住人達に染まらないというのは相当な頑固さを持っている証というか(笑)。 相当に意志の固い人で、体もまっすぐな感じがしたので、そういった印象を大事に演じました。
—— 監督とのお話で印象に残っていることはありますか。
撮影に入る前に監督とお話させていただいたのですが、役の細かいことは置いて、この作品が持っている雰囲気や、監督がこの作品を通じて伝えたいことを共有していただきました。おかげで特に不安もなく、「どういう風にこの役を私が解釈して現場でお芝居できるかな」ということを考えながら現場に入る準備ができました。実際に演じる前と後で、そこまで役の印象が変わったということはありませんでした。
—— 中村倫也さんをはじめ、共演者の皆さんとはいかがでしたか。ほとんどの方がとても癖のある役柄を演じていましたね。
中村さんはカメラが回っている時以外、おかしなことを言って笑わせてくださっていました。私に限らず現場の皆さんを和ませてくださる方でした。かたや、お芝居になれば一切迷いがなく、全体をリードしてくださる方で、おかげでとてもお芝居しやすかったです。皆さん本当に個性的な役柄でしたね(笑)。
—— 今後演じてみたい役柄はありますか。
役は出会ってみないとわからないと思っていますので、あまり「こういう役を演じたい」と思ったことがないんです。想像したことのない役と出会った時に、新しい視点、その役から見える世界があるはずで、「自分は今まで知らなかったけれど、この人から見る世界はこんな風に見えるのか」ということがあると思うんです。例えばある犯罪者がいたとして、はたから見ればその人は犯罪者だけど、本人からするとそうせざるを得ない何かがあったりして。倫理的なことや常識的な良い/悪いを考えずに演じる人の視点になることで自分の世界の見え方も変わると思うので、今後も色々な役に挑戦したいなと思っています。
—— あまり外に出られない日々が続いていますが、心境の変化はありましたか。
いろんなことに対する価値観、見え方がこの数ヶ月で変わったような気がします。きっと多くの方がそうなのではないでしょうか。全体的に一度壊れて、まさに現在進行形で色々なことが変わっていっているのを感じています。個人的には新しい発見がいくつかありました。こういう落ち着かない状況が過ぎ去ってからでないと、実際に何を感じていたのかはわからないと思うのですが、私が一番感じていることは、このお仕事が好きだということ。おかげさまですごく良い作品に出会えているなと感じています。そして何よりも自分の心と身体が健康でいなければお仕事をすることはできませんし、人と会うこともままなりません。お仕事を通じて人にメッセージを伝えることや、役が伝えたいことを自分の肉体を通して代弁すること。どれも身体だけでなく、心も健康でないとできないことですので、普段の生活をやはり大事にしていきたいと、この時期に改めて思いました。
—— 最後に、シネマアートオンラインの読者の皆様にメッセージをお願いします。
一体どんな作品なんだろうって印象を受けるかもしれませんが、映画館で観てもらえたらきっと想像していない世界を見られると思いますし、ゾワっとする怖さがあると思います。後味が悪いわけじゃなくて、「あれってどういうことだったの?」って。おかしさとして笑えると思っていたシーンも、「あれ、笑えないんじゃないか」「怖いな」と思うのではないかなと(笑)。まずは映画をご覧いただいて、その後いろいろな発見があると思いますので、それを楽しみながらご覧いただければ幸いです。
[ヘアメイク: 秋鹿 裕子(W) / スタイリスト: 吉田 恵]
プロフィール
石橋 静河(Shizuka Ishibashi)1994年生まれ。バレエ留学後、コンテンポラリーダンサーとして活動しながら2015年より役者としても活動を開始。2017年には初主演作『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』で、第60回ブルーリボン賞、第91回キネマ旬報ベスト・テンなどで新人女優賞を数多く受賞。近年の映画出演作に『きみの鳥はうたえる』(2018年)、『二階堂家物語』(2019年)、『21世紀の女の子』(2019年)、『いちごの唄』(2019年)、『楽園』(2019年)、『37セカンズ』(2020年)、舞台出演作に『ビビを見た!』(KAAT神奈川芸術劇場)、『神の子』(本多劇場他)などがある。2020年「東京ラブストーリー」(FOD・Amazon Prime Video配信)では赤名リカ役を務め注目を集める。 |
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※応募ページは、映画公開初日に公開予定です。
映画『人数の町』予告篇
映画作品情報
《ストーリー》借金取りに追われ暴行を受けていた蒼山は、黄色いツナギを着たヒゲ面の男に助けられる。 その男は蒼山 に「居場所」を用意してやるという。蒼山のことを “デュード” と呼ぶその男に誘われ辿り着いた先は、ある奇妙な「町」だった。「町」の住人はツナギを着た “チューター” たちに管理され、簡単な労働と引き換えに衣食住が保証される。 それどころか「町」の社交場であるプールで繋がった者同士でセックスの快楽を貪ることもできる。 ネットへの書き込み、別人を装っての選挙投票……。何のために? 誰のために? 住民たちは何も知らされず、何も深く考えずにそれらの労働を受け入れ、 奇妙な「町」での時間は過ぎていく。 ある日、蒼山は新しい住人・紅子と出会う。彼女は行方不明になった妹をこの町に探しに来たのだという。ほかの住人達とは異なり思い詰めた様子の彼女を蒼山は気にかけるが……。 |
脚本・監督: 荒木伸二
プロデューサー: 菅野和佳奈、関友彦
製作: 木下グループ
2020年9月4日(金)
新宿武蔵野館ほか 全国ロードショー!
公式Twitter: @ninzunomachi