宮本瑠衣役 稲葉友インタビュー
宮本瑠衣は無邪気だけど周りに気が利く優しい人
土屋太鳳主演の映画『春待つ僕ら』がいよいよ12月14日(金)公開を迎えた。
原作はマンガ家あなしんが「月刊デザート」(講談社)で連載中の同名コミック。周囲に溶け込めず、寂しい思いをしてきた女子高生の春野美月が、バスケットボール部のイケメン男子4人と知り合い、大切なものを見つけていく姿を描く。
監督は丁寧な人物描写で定評のある平川雄一郎。キャストは主演の土屋太鳳をはじめ、北村匠海、小関裕太、磯村勇斗、杉野遥亮、稲葉友など、今を彩る旬の俳優が勢ぞろいした。
映画『春待つ僕ら』で清凌高校バスケットボール部の通称“四天王”の1人の宮本瑠衣役を演じた稲葉友さんに本作にかける思いや撮影時のエピソードを聞いた。
―― 完成した作品をご覧になっていかがでしたか?
少女漫画原作で映画化されている作品って沢山あるじゃないですか。僕が観たいろんな作品の中でも押し付けがましくない青春映画で、「ここ胸キュンするでしょ」という感じもなく、今青春を過ごしいてる方でも過ぎた方でも、淡い思い出や、青春みたいなものを引っ張り出してくれて、「これが青春だよ!」ではなく、映画を観た方が「あ、こんな青春あったな」と思えるすごく優しい青春映画だなという印象を受けました。
―― 稲葉さんが演じた宮本瑠衣に対する印象をお聞かせください。
原作あっての脚本なので、原作とは少し違うところは出てきますが、すごく周りに気の利く人物です。瑠衣はバス部でもポイントガードというポジションをやっています。最初にボールを持って、そこから味方にパスを展開して、パスをさばき、状況を見てゲームを作っていく役割なんです。そのポジション(役割)をやる人の性格をしているというか、プライベートでの人間関係でもよく周りを見ていて、人の考えてる気持ちの裏側とか、言葉にできないけど表情に出ているところを見て、「今こんなこと考えているのかもな」とか、「今この人が言ったことでこういうことを思っているかもな」とか、想像できて本当に優しい人です。優しさ押し付けるのではなくて、すごく気が利く優しい人というのが瑠衣の印象です。もちろんガキっぽく、無邪気なところもありますけど、その裏にしっかりしたところがあったので、演じていてすごく愛せました。
―― バスケットボールの練習はいつ頃から始めましたか?
今年の1月の初めから練習は始まっていて、撮影は3月頃から入っていたので、2ヶ月以上は練習していたと思います。撮影が入ってからも練習をしていて、合同練習だったり個人練習だったりいろいろと準備期間はありましたね。
―― 稲葉さんは、バスケットボールの経験があると伺っています。
バスケをやっていたのが中学3年間で10年以上前なので、当時バスケをやっていたときの目線、腰の低さ、手の置き所、何を目的にやるとか当たり前だったことをまず取り戻すというところの苦労は少しありましたね。ちょうど高校バスケの都大会が開催されている時期だったので実際に1人で体育館に試合を観に行って、試合で「みんなこういうとこ見てんだな」とか、「こういう声出すんだな」とか、必死に取り戻そうとしていた記憶はあります。
―― 本作は同年代の方が多く出演していますが、撮影現場でのエピソードをお聞かせ下さい。
いっぱいありますよ!基本的に同じシーンが多かった作中で“四天王”と呼ばれている北村(朝倉永久役)、磯村(若宮恭介役)、杉野(多田竜二役)、稲葉(宮本瑠衣役)の4人でいることが多かったのですが、笑えるエピソードだと、撮影期間中に4人で人狼ゲームをやっていて、そこに土屋太鳳がいる日は「一緒にやろう!」と言って一緒にやりましたが、「この子、嘘つくの下手そうだな」、「人狼ゲームとか絶対下手だろうな」と思って、実際やってみたら本当に下手くそで全然嘘つけないんですよ(笑)。芝居だと豊かにいろんな表情をする人がこんなに嘘つけないもんなんだと目の当たりにした時はすごく面白かったですね。みんなで大笑いしていました(笑)。
―― 映画のキャッチコピーは “大事なものなんて、見つからないと 思ってた”です。稲葉さんは大事なものを見つけましたか?
今までお仕事させてもらった人や、その人との経験が積み重なって今の自分になっています。今まで仕事をご一緒した人との再会が新しい仕事につながったりと、キャストでもスタッフさんでも、こうやってインタビューしていただいている事もそうなんですけど、人との繋がりですね。対人でどれだけコミュニケーションをとれるかというところでやっています。
―― 土屋太鳳さん演じる主人公の美月は“脱ぼっち”を目指すも、当初何をやっても上手くいかない状態でした。稲葉さんは物事が上手くいかない時、どのように対応しますか?
「上手くいかないな」って思うようにします。いろんな物事が上手くいかない時はそういう時期なんだと自覚して、上手くいかないのは理由がきっとあるから、どうしたら改善されるか順序立てて1人でコツコツと考えます。でもたまに「まぁいいや」ってなりますね(笑)。
―― 美月は亜哉と永久という2人の間で気持ちが揺れ動きます。稲葉さんがもし美月の立場なら、どちらを選びますか?
僕は亜哉ちゃんを選んであげたいな。物語においてという話ですけど、僕は報われない人が好きなんです。亜哉ちゃんは小さい頃から、アメリカに行った後も帰ってきた後もずっと思い続けていて、長年の思いがあるのに報われないこの亜哉ちゃんがすごく好きです。でも逆に亜哉ちゃんと美月が付き合ってたら僕は多分永久が好きだってなると思います。報われない人が好きという理由で亜哉ちゃんです。
―― 今後何か挑戦してみたいお仕事はありますか?
割となんでもやりますというタイプなんですが、お芝居以外にもラジオのレギュラーをやらせてもらっていて、その関係で音楽の仕事のお話もあったりして、来年は怯えながらも手を出せるところは手出していってみようかなと思っているところです。あとは個人のイベントでやっている落語ですとか、僕が今やれることをやりたいなっていう感じです。強いてあげるなら音楽かな。
―― 最後に、シネマアートオンラインの読者の皆様へメッセージをお願いします。
[インタビュー: 井上 綾乃 / スチール撮影: 坂本 貴光]
プロフィール
稲葉 友 (Yu Inaba)1993年生まれ、神奈川県出身。2010年にドラマ「クローン(半角スペース)ベイビー」で俳優デビュー。以降、ドラマ「仮面ライダードライブ」(2014年〜2015年)などでも注目を集め、「ひぐらしのなく頃に」(2016年)ではドラマ初主演、『N.Y.マックスマン』(2018年)では映画初主演と、映画、ドラマ、舞台と多数の作品に出演。『小河ドラマ 龍馬がくる』が12月15日より劇場公開、12月30日に時代劇専門チャンネルで一挙放送するほか、12月28日24:20~民放初主演ドラマとなる「平成ばしる」(脚本・監督 : 松居大悟)がテレビ朝日にて放送。また、2019年1月11日より映画『この道』が公開予定。現在J-WAVE『ALL GOOD FRIDAY』(毎週金曜11:30〜16:00生放送)ではナビゲーターを務めている。 |
映画『春待つ僕ら』予告篇
映画作品情報
《ストーリー》高校入学を機に“脱ぼっち”を目指す美月だが、何をやっても上手く行かない。そんな美月のバイト先に、校内で人気のバスケ男子4人が突然現れ、美月の平凡だった日常をひっかき回す。一見チャラいが実はバスケに真剣で、仲間を大事にする4人の素顔を知り、次第に心を許していく美月と、「大事なものがきっと見つかると思うよ」と美月を励ます永久。お互いが気になり始めた時、美月は幼なじみの亜哉と再会、高校バスケ界期待の選手に成長していた亜哉は「僕の気持ちは変わらないよ」と告白する。 全国大会で対戦する永久VS亜哉!全てを賭けた勝負が始まる。美月は複雑な気持ちを抱えつつ、一方で弱い自分を乗り越えるため、ある挑戦をするが――。 |
© あなしん/講談社 © 2018 映画『春待つ僕ら』製作委員会