- 2025-2-6
- イベントレポート, ティーチイン, ロッテルダム国際映画祭, 日本映画, 舞台挨拶

第54回 ロッテルダム国際映画祭(IFFR)
ビッグスクリーンコンペティション部門
映画『ゆきてかへらぬ』舞台挨拶/Q&A
根岸吉太郎監督が登壇!
「描きたかったのは若者たちの愛と格闘と葛藤」
1月30日(木)~2月9日(日)<現地時間>に開催の第54回ロッテルダム国際映画祭(IFFR)のビッグスクリーンコンペティション部門に映画『ゆきてかへらぬ』が正式出品。現地時間2月5日(水)に行われた上映後の舞台挨拶に根岸吉太郎監督が登壇し、観客とのQ&Aも行われた。
オランダ第二の都市ロッテルダムで開催されるロッテルダム国際映画祭は、世界三大映画祭に次ぐ重要な映画祭のひとつ。『ゆきてかへらぬ』がノミネートされたビッグスクリーンコンペティション部門は、一般の映画ファンから選ばれた審査員によってアワードを選出し、受賞作はオランダでの劇場公開やテレビ放映も見込まれるという画期的な部門。IFFRでの上映が海外初上映となった。
オーディエンスの大歓声に根岸監督は「この映画祭に参加できて光栄ですし、非常に誇りに思います」と感謝の言葉と共に深々としたお礼で答えた。
前作『ヴィヨンの妻』(2009年)以来、約16年ぶりの新作となる本作。前作同様、中原中也という日本の文豪にまつわる物語を創作した理由について聞かれた根岸監督は「詩人の中原中也は日本では大変有名な詩人で、この映画の中でも何度も“天才”と言われていますが、確かに非常に敬愛されている、日本人にとっては大切な詩人です。ただ、本作は彼が詩人として素晴らしいということを描いているわけではなく、才能あふれる詩人・中也、そして彼の才能を誰よりも認めていた評論家・小林、そして一人のミューズ(泰子)。ただ何かになろうと思っている10代20代という若者たちの愛と格闘と葛藤を描いた話なんです」と主人公が誰であれ本作が誰もが通る青春の葛藤と愛を描いた作品だとアピール。
また、主人公の中原中也が行動や態度ではなく詩を通して感情を表現している描写について「中也は8歳のときに自分の弟を亡くしているんですね。その幼いときの哀しみっていうのを、ずっと抱えながら生き続けたんだと思います。死もそうですけども、何かを失うということに、彼は非常に敏感で。彼はこの悲劇をバネに詩を紡ぎ出すんですね。言葉上は暗いわけではないんだけど、そういった哀しみみたいなものを称えているポエットなんだと思います」と、中原中也をこよなく愛する監督ならではの中也像について語った。
現地観客とのティーチン
そして、感動で涙ぐんだ外国籍の若い女性から、2人のアーティストから愛されることによって、あどけない少女から大人の女性へ変貌していく長谷川泰子の成長について聞かれると「この3人の奇妙な関係っていうのかな。特に泰子が中也のもとを去ってしまっても、彼はずっと彼女にこだわって追い続ける。追い続けるっていうことが彼の中で愛を確かめる行為だったと思います。でもその行為が泰子にとっては、また独特な。それを受け止めたいという気持ちと、拒否したいという気持ちが同時に表れてきている。それが彼女の色んな苦悩の要素の一つになり同時に女性として変わっていった要素だったと思います」と回答。
さらに「3人の中でも、この映画のタイトルが英題では『Yasuko Songs Of Days Past』と言っているように、映画は基本的には泰子という女性が2人のアーティストをどう受け止めていたかということを描きたかったんですよね。この話はトータルで15年ぐらいの話なんです。泰子の生き方は20代から、そのシーンごとに変化していく。この映画の中で一番観てほしいなと思っています」と一筋縄ではいかない男女3人の織りなす歪な関係と主人公・泰子の魅力について熱く語り、イベントは大盛況のうちに幕を閉じた。
イベント情報
第54回 ロッテルダム国際映画祭(IFFR)
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映画『ゆきてかへらぬ』予告篇🎞
映画作品情報
《ストーリー》京都。まだ芽の出ない女優、長谷川泰子(広瀬すず)は、まだ学生だった中原中也(木戸大聖)と出逢った。20歳の泰子と17歳の中也。どこか虚勢を張るふたりは、互いに惹かれ、一緒に暮らしはじめる。価値観は違う。けれども、相手を尊重できる気っ風のよさが共通していた。東京。泰子と中也が引っ越した家を、小林秀雄(岡田将生)がふいに訪れる。中也の詩人としての才能を誰よりも知る男。そして、中也も批評の達人である小林に一目置かれることを誇りに思っていた。男たちの仲睦まじい様子を目の当たりにして、泰子は複雑な気持ちになる。才気あふれるクリエイターたちにどこか置いてけぼりにされたようなさみしさ。しかし、泰子と出逢ってしまった小林もまた彼女の魅力に気づく。本物を求める評論家は新進女優にも本物を見出した。そうして、複雑でシンプルな関係がはじまる。重ならないベクトル、刹那のすれ違い。ひとりの女が、ふたりの男に愛されること。それはアーティストたちの青春でもあった。 |
TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開!
公式TikTok:@yukitekaheranu_movie