映画『50年後のボクたちは』公開記念トークイベントレポート
【写真】映画「50年後のボクたちは」公開記念トークイベント 辛酸なめ子 & 森直人

映画「50年後のボクたちは」(原題: Tschick)

公開記念トークイベント付き試写会開催!

私の中のインナー中2よさようなら!赤裸々トーク!

ドイツで220万部を超える大ベストセラー!世界26カ国で翻訳
世界中で愛される小説を名匠ファティ・アキンが映画化!

ドイツの大ベストセラー小説を、世界三大国際映画祭の全てで主要賞を受賞する名匠ファティ・アキンが実写化した映画『50年後のボクたちは』(原題:Tschick)が9月16日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほかで全国順次公開される。

映画「50年後のボクたちは」(原題: Tschick)

日本での公開に先立ち、8月21日に東京ドイツ文化センターで試写会が開催され、上映後に漫画家・コラムニストの辛酸なめ子氏と映画ライター森直人氏による、二人の黒歴史のフタを開けて14歳を振りかえる赤裸々トークイベントが行われた。

誰ものインナー中2を成仏させる作品

辛酸なめ子氏は、先駆けて「ダサさが一周して最高にCOOLな14歳。かつて14歳だった全ての人が、インナー中2を成仏させることができる作品です」とコメントを発表。この作品が中2病モノの王道で大好きだという映画ライターの森氏は、辛酸氏のインナー中2という名言に「これで全ていいじゃないっていうくらい名言だと思うんですけれども」と絶賛。

【写真】映画「50年後のボクたちは」公開記念トークイベント 辛酸なめ子(漫画家・コラムニスト)

『50年後のボクたちは』は、かつて14歳だった全ての大人たちへ贈るちょっと切ない忘れられない冒険ロードムービー!

「今回も本当に泣き所が満載で、見事にはまりました」という森氏に対して、「私は本当に観て、やっぱり童貞のパワーがすごいな!」「私も気になったのは、自分の中の思春期の色々とやりきれなかった、やり残したことが、この映画で疑似体験をして昇華できるという感覚を覚えました。それぞれの人間関係が適度な距離感で男の友情とか、ちょっとした恋愛が生まれるんですけれども、すぐ会わなくなってすごく淡々としているので、今のSNSなどいつまでも誰かとダラダラとつながっている人間関係ではない、本当に短い時間なんですけれども、一生に残る密度の濃い人間関係っていうのは観て良いなと思いました」と大人になっても忘れないひと夏物の歯切れの良い印象を語った。

【写真】映画「50年後のボクたちは」公開記念トークイベント 辛酸なめ子 & 森直人

「僕、男の子映画だという風に観たんですよ」という構成上主人公に感情移入するという森氏に、「確かに男の友情がメインで、あんまりイケメンの登場人物とかも出てこないですよね。(主人公が憧れるクラス一人気者の女の子)タチアナに感情移入するわけにもいかない感じもしますし。私もそうなんですけれども、そういう少年の群像が好きな人だったら、好きな作品だと思いますよ」と男子目線からも、女子目線からも楽しめる作品になっている。

【写真】映画「50年後のボクたちは」公開記念トークイベント 辛酸なめ子 & 森直人

キャストの少年たちの最近のインスタグラムを確認した辛酸氏は、「チックの役の方はすごい格好良くて、二人がわりと色々な映画祭で仲が良い感じで動画を撮ったりしていて、映画の友情は終わりましたけど、この二人は仲が良いなって思いましたね」と世界的にこの映画を観た後に女子のチックファンが増えており、辛酸氏もチックファンになったという。チック役のアナンド・バトビレグ・チョローンバータルは、適役を探すために連絡したモンゴル大使館の職員の息子で、本作でスクリーンデビューを果たしているという。撮影当時は13歳だったマイク役の主演トリスタン・ゲーベルについては、最近の声が野太くて男性的になってしまい、髪も伸び過ぎて14歳の旬が過ぎてショックと本音を語っていた。

 

Zwei Jungs und ihr geklauter Lada: Die Hauptdarsteller Anand Batbileg und Tristan Göbel bei der #tschick-#Weltpremiere in #Berlin!

Tschick – Ab 15.09.16 im Kino!さん(@tschickfilm)がシェアした投稿 –

劇中の子どもたちの誕生日パーティーについては、「やっぱり(誕生日に)呼ばれないと本気で嫌ですよね。毎回、誕生日会がくるたびにドキドキする。村八分の起こる怖い習慣」と主人公たちのドキドキと切ない気持ちを代弁する森氏に対して、辛酸氏は、「世の中でもいっぱいやっていますよね。誕生日パーティー、写真とかアップして。最近のウェイティング・バースデイケーキのロウソクを吹き消すときにすごい大量の菌が出るっていうのがニュースになっていましたね」と、一見羨ましそうに見えてもバイ菌だらけと辛酸節で会場の笑いをとっていた。

他にも辛酸氏は、アメリカ以上にドイツのインテリアセンスが良いと、主人公の部屋や彼らが通う学校の教室のお洒落さも女子目線でチェックしていた。

【写真】映画「50年後のボクたちは」公開記念トークイベント 辛酸なめ子(漫画家・コラムニスト)

二人のインナー中2時代

森氏は、バスケ部に一週間だけ入り、後は全てオール帰宅部でずっと家にいたという。和歌山県の「ビー・パップ・ハイスクール」全盛期のかなりざらついた公立中学校で典型的な中2病を発症したことから、14歳モノにはかなり弱いという。同じく14歳モノの『シング・ストリート 未来へのうた』(2016年)のように、洋楽にハマって学校の成績がきれいに落ちて行ったらしい。

森氏に「帰宅オーラがものすごいですよね」と言う辛酸氏は、女子学院時代の部活はバイオリンが買えなかったという理由でマンドリンギター部に所属。中2病的なエピソードとしては、ティディベアの様なぬいぐるみ作りにハマって、友だちになりたい子にプレゼントをして、ちょっと重たがられていたそうだ。「そういうものが色々積み重なって、当時はジャニーズの男闘呼組が好きだったんで、男闘呼組の歌が自分のことを歌っているみたいな小説を書いたりしていましたね。自分を私を迎え入れてくれるような、そういう思い込みで。そういうのが転落の一歩だったかもしれないですね」と中2時代を披露。

さらに森氏が「僕はもうなめこ子さんの長年の読者なんで、すっごい覚えているのが、スピードの5人目のメンバーになって踊り狂っていたというエピソードがすごい好きなんです」と中2病の根っこを指摘された辛酸氏は、「この作品もそうですけれども、黒歴史みたいなものを経ることで、人というのは成長できるという」という映画の重要なメッセージを話していた。

【写真】映画「50年後のボクたちは」公開記念トークイベント 森直人(映画ライター)

名匠ファティ・アキン監督も転落組⁈

原作「14歳、ぼくらの疾走」(小峰書店)をむさぼるように読んだという30代にして“世界三大国際映画祭”を制覇した名匠ファティ・アキン監督について、「わりと転げ落ちていった人として、この業界にくるひとのスタンダードだと思うんですね。14歳映画っていっぱい作られているし、このファティ・アキンっていう監督さんも似たような世代なんですけれども、そっち組かなって、今回バレたかな」と監督の転落組出身を予測。森氏は、ドイツで100万人以上を動員して大ヒットとなった『ソウル・キッチン』(2009年)で監督にインタビューをしたときの見た目やノリなどの印象は明るいお兄さんであったものの、監督がDJの顔ももっているという一面を聞いて、「音楽好きって怪しいですよね」と言及していた。

【写真】映画「50年後のボクたちは」公開記念トークイベント 森直人(映画ライター)

ヘルマン・ヘッセの国ドイツの推薦図書

ドイツで220万部の大ベストセラーの原作「14歳、ぼくらの疾走」について、辛酸氏は、「原作もすごくベストセラーになっているけれど、車を運転したり、飲酒したり、法律とかを考えると大丈夫なのかなと思ってしまう」とドイツと日本のお国事情を指摘。

【写真】映画「50年後のボクたちは」公開記念トークイベント 辛酸なめ子(漫画家・コラムニスト)

森氏は、原作をマイクの一人称ではじまる書きっぷりが「ライ麦畑でつかまえて」(J・D・サリンジャー原作)に似ていて、映画にも書籍名が出てくるヘルマン・ヘッセを踏襲した内容であると言い、「推薦図書になっていますよね」「ヘルマン・ヘッセの国、教養小説の国だなって思うんですよ。成長にとって必要なものはOK」という姿勢が素晴らしいと、ドイツの教育の成熟さを賞賛していた。

【写真】映画「50年後のボクたちは」公開記念トークイベント 森直人(映画ライター)

原作小説作家のヴォルフガング・ヘルンドルフは、脳腫瘍が発見された直後から「14歳、ぼくらの疾走」の執筆に取りかかったという。森氏は、「原作者のヘルンドルフさんは2013年に(48歳で)亡くなられているので、50年後という設定を考えると、さらに複雑でビターな感じになっている」「死の影が隠し味としてこの作品にあるのかなって気がします」とただの爽やかな冒険ロードムービーだけに終わらない点も解説していた。

辛酸氏は、50年後には「人類はいないかもしれない」と、彼らが劇中で交わした約束について、「タイムカプセルみたいで、感動します」と世界中のインナー中2を成仏させる魅力を語っていた。

【写真】映画「50年後のボクたちは」公開記念トークイベント 辛酸なめ子 & 森直人

マイクとチックのひと夏の大冒険は、観た者が14歳だった頃の記憶を甦らせ、ノスタルジックな気持ちにしてくれます。時代や国籍を超えた冒険ロードムービー『50年後のボクたちは』をぜひお楽しみください。

[スチール撮影: Cinema Art Online UK / 記者: おくの ゆか]
 
 

イベント情報

<映画『50年後のボクたちは』公開記念トークイベント>

■開催日: 2017年8月21日(月)
■会場: 東京ドイツ文化センター
■登壇者: 辛酸なめ子(漫画家・コラムニスト)、森直人(映画ライター)

映画『50年後のボクたちは』予告篇

映画作品情報

映画「50年後のボクたちは」(原題: Tschick)

《ストーリー》

14歳のマイクはクラスのはみだし者。同級生からは変人(=サイコ)扱い、両親の仲もうまくいっていない。そんなある日、チックというちょっと風変わりな転校生がやって来た。夏休み、2人は無断で借用したオンボロ車ラーダ・ニーヴァに乗って南へと走り出す。旅の途中で訪れる、いつくもの出会いと別れ。やがて無鉄砲で考えなしの旅は、マイクとチックにとって一生忘れることのできないものになっていく――。

 
原題: Tschick
監督/共同脚本: ファティ・アキン
脚本: ラース・フーブリヒ
原作: ヴォルフガング・ヘルンドルフ(「14歳、ぼくらの疾走」小峰書店)
出演: トリスタン・ゲーベル、アナンド・バトビレグ・チョローンバータル、メルセデス・ミュラー
配給: ビターズ・エンド
2016年 / ドイツ / 93分 / ビスタ /  PG12
© 2016 Lago Film GmbH. Studiocanal Film GmbH
 
2017年9月16日(土)より、
ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー!!
 
映画公式サイト

公式Twitter: @50nengo_movie
公式Facebook: @FatihAkin.movie

この記事の著者

おくの ゆかライター

映画好きの父親の影響で10代のうちに日本映画の名作のほとんどを観る。
子どものときに観た『砂の器』の衝撃的な感動を超える映像美に出会うために、今も映画を観続けている。

★好きな映画
『砂の器』[監督: 野村芳太郎 製作: 1974年]
『転校生』[監督: 大林宣彦 製作: 1982年]
『風の谷のナウシカ』[監督: 宮崎駿 制作:1984年]
『硫黄島からの手紙』(Letters from Iwo Jima) [監督: クリント・イーストウッド 製作: 2006年]

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