短編映画『Bon Voyage ボン・ ボヤージ 〜SMAの勇者、ここに誕⽣〜』完成披露プレミア上映イベントレポート
【写真】映画『Bon Voyage ボン・ボヤージ SMAの勇者ここに誕生』メイン

短編映画『Bon Voyage ボン・ ボヤージ 〜SMAの勇者、ここに誕⽣〜』完成披露プレミア上映イベント

中島広稀が神経難病SMA患者を熱演
「一人でも多くのひとにこの映画でSMAを知ってほしい」

6月13日(金)、国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2019」(SSFF & ASIA 2019)の上映プログラム「Branded Shorts 3」にて、神経難病の一つである脊髄性筋萎縮症(Spinal Muscular Atrophy/以下、SMA)を題材とした短編映画『Bon Voyage ボン・ ボヤージ 〜SMAの勇者、ここに誕⽣〜』のプレミア上映とトークセッションが行われた。

【画像】短編映画『Bon Voyage ボン・ ボヤージ 〜SMAの勇者、ここに誕⽣〜』メインカット

《ストーリー》

旅行会社に勤める大友和也(中島広稀)は、ある日突然転ぶようになり、筋肉がピクピクするなど、体の異変感じるようになった。やりがいを持ちながらもうまくこなせなくなっていく仕事。いくつもの病院で診察を受け、ようやく診断された病名は脊髄性筋萎縮症(SMA)だった。今後に不安を抱えるなか、同じSMA患者であるネイリストの上田菜々(上田菜々)と出会い、病気や自分との向き合い方を見直していく。

【画像】短編映画『Bon Voyage ボン・ ボヤージ 〜SMAの勇者、ここに誕⽣〜』場面カット (病院シーン)

SMAは運動神経に変化が起こり、次第に筋肉の力が弱くなる遺伝性の神経疾患で、生後18か月以降に発症するⅢ型SMAは進行が緩やかであることから、症状が病気として正式に診断されていない潜在的な患者が存在すると考えられている。本作は、SMAなどの神経難病の治療薬開発に特化したバイオテクノロジー製薬企業バイオジェン・ジャパン株式会社がSMAの認知向上と病識のある方の気付きとなるよう製作したブランデッドムービーだ。

【画像】短編映画『Bon Voyage ボン・ ボヤージ 〜SMAの勇者、ここに誕⽣〜』場面カット (検索画面)

本編上映後、作品の医療監修を担当した東京女子医科大学 臨床ゲノムセンター所長 齋藤加代子医師によるSMAの症状や病理についての講演が行われ、続いてスタッフやキャストによるトークセッションが行われた。

三ツ橋勇二監督はこの作品を作るにあたって「症状をいかに忠実に描けるかに注力した」と話した。中島を起用した理由について、「中島さんは内面を見つめる姿勢がある。診断がつくまでは自分の体と対話している孤独な状態。撮影の前からそういうのを体現してくれたと思う」と語った。

【写真】短編映画『Bon Voyage ボン・ ボヤージ 〜SMAの勇者、ここに誕⽣〜』完成披露プレミア上映イベント (三ツ橋監督)

主演の中島広稀は「15分と短い時間で和也の1年を凝縮するのは難しかったが、丁寧に表現しようと心掛けました。SMAⅢ型の症状である特有の歩き方は、演技指導していただいたが体の動きの問題なので難しかった」と演技面での苦労を明かした。苦労の甲斐もあり、その動きは「医学生に観せたいくらい、1シーンに所見が散りばめられている」と齋藤医師も絶賛する再現度となっている。

【写真】短編映画『Bon Voyage ボン・ ボヤージ 〜SMAの勇者、ここに誕⽣〜』完成披露プレミア上映イベント (中島広稀)

この映画には実際のSMA患者も制作に協力している。SMAⅡ型の上田菜々は、和也が前向きに病気に向き合うきっかけとなる重要な役柄で出演。演技指導としてSMAⅢ型の下島直宏が協力している。トークセッションにはこの2人も参加し、映画や自身のSMAと向き合ってきた経験を語った。

【画像】短編映画『Bon Voyage ボン・ ボヤージ 〜SMAの勇者、ここに誕⽣〜』場面カット (陸橋シーン)

上田は「女優というものを初めてやらせてもらいました。和也が私に自分もSMA患者であると告白し、うち解けるけるシーンはアドリブ。自然に見えるよう共通点を探していったら好きな歌手が一緒で盛り上がり、撮影が終わった後も話していました」と撮影を振り返った。ネイリストをしている上田は、病気の救いとなったのが“美容の力”だったという。

【画像】短編映画『Bon Voyage ボン・ ボヤージ 〜SMAの勇者、ここに誕⽣〜』場面カット (喫茶店シーン)

「映画の中で、和也と母親との葛藤が描かれるが、自分にも同じような経験がある。車いすを使用していることで自分に自信が持てず、人に見られたくない、家から出たくないという時があった。そんな時にメイクや服装をきちんとすることで少しずつ自信を取り戻していった。自分にとって自信を与えてくれた美容系の仕事をすることで、障碍を持っていても職業に就けるという道を示したい」と語った。

【写真】映画『Bon Voyage ボン・ボヤージ SMAの勇者ここに誕生』上田菜々

下島は「体育の授業で走るのが遅いことなどで気づいたが、運動不足かと思って自分を責めることもあった。何度か病院で診断を受けたが病名ははっきりせず、たまたま読んだ本でSMAを知り、もしやと思って再度病院に行って初めて病名が確定した。病名さえわかっていれば対策もできる。この映画を観て、受診してみようという人がいればいいなと思う」と、自らの経験と物語を重ね合わせた。

【写真】短編映画『Bon Voyage ボン・ ボヤージ 〜SMAの勇者、ここに誕⽣〜』完成披露プレミア上映イベント (下島直宏)

上田、下島ともに、和也が雄叫びをあげるシーンに“これから病気と向き合って頑張るぞ”という気持ちを感じて感動した、と見どころを語った。「病名が分かっているかいないかは全然違う。病名が判明することでこれからの道筋ができる」という。

【画像】短編映画『Bon Voyage ボン・ ボヤージ 〜SMAの勇者、ここに誕⽣〜』場面カット (屋上シーン)

齋藤医師も「SMAは、神経系の難病の中でも目覚ましく研究が進んでいる病。治療を受けながら活躍する人もたくさんいる。周りや本人、そして医療の現場が気付くことが大切」と、少しでもおかしいと思ったら早めに診断してほしいと呼びかけた。

【写真】映画『Bon Voyage ボン・ボヤージ SMAの勇者ここに誕生』齋藤加代子医師

最後は中島から、これから作品を観る人へ「一人でも多くの人に観てもらいたい。SMAと診断された人にも、この映画を観ることで、希望を持って前に進んでほしい」とのメッセージでイベントは締めくくられた。

【写真】短編映画『Bon Voyage ボン・ ボヤージ 〜SMAの勇者、ここに誕⽣〜』完成披露プレミア上映イベント (中島広稀)

SMAは厚生労働省が平成27年に告示(施行)した指定難病のひとつで、罹患率は10万人に1~2人と希少な疾患である。しかし、指定難病は計333疾病あり(平成31年度第1回厚生科学審議会疾病対策部会/平成31年4月4日開催にて新たに追加された2疾病を含む)、難病に苦しむ人は多い。希少な疾患も自分や周りの人もかかりうる病であるという意識をもって、ぜひこの作品を観てほしい。

[スチール撮影: Cinema Art Online UK / 記者: 金尾 真里]

イベント情報

ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2019(SSFF & ASIA 2019)
上映プログラム「Branded Shorts 3」

映画『Bon Voyage ボン・ ボヤージ 〜SMAの勇者、ここに誕⽣〜』
完成披露プレミア上映イベント

■開催日: 2019年6月13日(木)
■会場: アンダーズ東京 51F アンダーズスタジオ 
■登壇者: 斎藤加代子、三ツ橋勇二監督、中島広稀、上田菜々、下島直宏
■主催: バイオジェン・ジャパン株式会社 / ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 

【写真】映画『Bon Voyage ボン・ボヤージ SMAの勇者ここに誕生』メイン2

映画『Bon Voyage ボン・ ボヤージ 〜SMAの勇者、ここに誕⽣〜』予告篇

https://www.youtube.com/watch?v=E4IHZtXxLaI

映画『Bon Voyage ボン・ ボヤージ 〜SMAの勇者、ここに誕⽣〜』本編

https://www.youtube.com/watch?v=ID_VIHeAa6M&t=36s

映画作品情報

【画像】映画『Bon Voyage ボン・ボヤージ SMAの勇者ここに誕生』ポスター

《ストーリー

新卒で旅行代理店に入社し3年目を迎える大友和也は、新プロジェクトにやりがいを持ちながらも身体に異変を感じていた。何の病気かわからないまま、仕事との折り合いをつけられず、心配する母にも素直になれない。そしてようやく診断されたのは、脊髄性筋萎縮症(SMA)という初めて耳にする病気だった。

 
出演: 中島広稀、滝沢涼子、上田菜々、松田リマ、竹森千人
 
監督: 三ツ橋勇二
脚本: 米内山陽子
製作・著作: バイオジェン・ジャパン株式会社
 
作品時間: 約15分
公開情報: 2019年6月13日(木)よりYouTubeにて配信
 
映画公式サイト

この記事の著者

金尾 真里ライター

神奈川県横浜市生まれ。
「うつし世はゆめ、夜の夢こそまこと」(江戸川乱歩)を座右の銘とし、エンタテインメント全般を愛好。作品の規模、ジャンル問わず、自分が「面白い」と感じる映画の紹介をしたいと映画ライターの活動を行う。キャスティングと物語が好きな映画は『ベニスに死す』、好きな映画音楽は『ロシュフォールの恋人たち』、総合して一番好きな映画は『GSワンダーランド』

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