SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025 映画『ひみつきちのつくりかた』ワールドプレミア レポート
【写真】SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025 映画『ひみつきちのつくりかた』ワールドプレミア (板橋知也監督、恵水流生プロデューサー、木寺響、廣末哲万、藤田健彦、佐藤貢三、もりたかお)

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025 
映画『ひみつきちのつくりかた』ワールドプレミア

“4つの人格”から生まれた主人公たちと、故郷あきる野市でのリアルDIY!
新鋭・板橋知也監督が初長編に込めた情熱と制作の裏側を激白!!

7月22日(火)、若手クリエイターの登竜門であるSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025コンペティション部門にて、映画『ひみつきちのつくりかた』ワールドプレミア上映された。

本作は、友人の突然の死をきっかけに再会した、全く違う人生を歩んできた初老の男4人組が、少年時代に夢見た「ひみつきち」作りに没頭するこの物語。長編映画デビューとなる板橋知也監督「何歳になっても、心の奥底に宿る子供の側面」という普遍的なテーマに挑み、全編を自身の故郷である東京都あきる野市で撮影。インディペンデント映画界で唯一無二の存在感を放つ廣末哲万をはじめ、藤田健彦佐藤貢三もりたかおといった実力派俳優が集結し、彼らの悲哀とユーモアに満ちたアンサンブルが、物語に深い味わいをもたらしている。

【画像】映画『ひみつきちのつくりかた』場面カット

上映直前、客席にいた板橋知也監督と、映画の門出を祝うため駆けつけていた主演の廣末哲万藤田健彦佐藤貢三もりたかおが司会から紹介され、その場で立ち上がり挨拶すると、サプライズに会場は大きな拍手で沸いた。

そして上映後には、板橋知也監督、プロデューサーの恵水流生、花梨役で出演の木寺響がステージに登壇し、観客とのQ&Aセッションが行われた

【写真】SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025 映画『ひみつきちのつくりかた』ワールドプレミア Q&A/舞台挨拶 (板橋知也監督、恵水流生プロデューサー、木寺響、MC:中西佳代子)

※上映後のQ&Aのため、記事の後半に一部ネタバレに該当する内容が含まれています。

「長編を撮りたいんです」
恵水プロデューサーが才能を認めた板橋監督の覚悟と二人の絆

Q&Aの冒頭、制作のきっかけについて問われた板橋監督は、「最初は本当に、友だちと遊んでいて『ひみつきち作りたいな』みたいなことから始まったんです。当初はドキュメンタリーか何かで撮ろうかと考えていたんですが、世の中が鬱屈とした空気の中で、自分自身も少し気持ちが落ち込んでいる時期に、『とにかく楽しい作品を作りたいな』という思いが強くなり、劇映画として本格的に企画を進めました」と、作品に込めた思いの原点を語った。

【写真】SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025 映画『ひみつきちのつくりかた』ワールドプレミア Q&A/舞台挨拶 (板橋知也監督)

その脚本を手に、板橋監督が相談を持ちかけたのが、8年以上の付き合いになる恵水プロデューサーだった。恵水プロデューサーは、その時の監督の並々ならぬ覚悟を、当時の心境を交えて鮮明に明かした。

「板橋さんとはもう8年以上、いろんな作品を一緒に作ってきました。本当に才能があるなと僕は思っています。でもある日、彼から初めて、頭を下げて呼び出されたんですね。僕の中ではすごく珍しいことで、『何事かな?』と思ったら、お食事の席が用意されていて。そこで『長編を撮りたいんです』と。『絶対にこれをやりたい。すぐに撮りたい』と。その熱意に、僕はまだちゃんと企画書を見る前でしたけど、『やろう』と即決しました」と、二人の深い信頼関係と監督の情熱が、企画を本格始動させる大きな力となった秘話を披露した。

【写真】SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025 映画『ひみつきちのつくりかた』ワールドプレミア Q&A/舞台挨拶 (板橋知也監督、恵水流生プロデューサー、木寺響)

板橋監督の“4つの人格”から生まれた主人公たち 
俳優陣との出会いがもたらした、想像以上のキャラクターの魅力

最初の質問者である観客の男性は、「めちゃくちゃ面白かったです。人生も後半に差し掛かった男として、すごく心に響きました」と感想を述べた上で、「監督はまだお若いのに、なぜ主人公を50代に設定したのか、またキャラクターをどう作り上げたのか」と質問。

板橋監督は、「以前撮ったショートフィルムで、自分自身の人格を4つに分裂させるという試みをしたのですが、その手法を今度は自分の中ではなく別の人間に置き換えて発展させたいと思いました。4人にはそれぞれ自分の内面を投影しています。自分の嫌なところや、自分自身にムカつくこととか(笑)」と、極めてパーソナルなアプローチについて語った。

【写真】SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025 映画『ひみつきちのつくりかた』ワールドプレミア Q&A/舞台挨拶 (板橋知也監督、恵水流生プロデューサー、木寺響、MC:中西佳代子)

続けて年齢設定については、「脚本を書いていたのは20代の頃で、最初自分と同じくらいの年齢も考えました。“ひみつきち”を作ることで人生を振り返る物語にしたかったのですが、それだと人生を振り返るには少し早いなと。人生100年だとしたら、50歳はちょうど中間点。色々経験して苦悩もあって、さらに未来もある。思い切ってそういった人物に置き換えてみたら、すごく深みが出ました」と、テーマ性を深めるための設定であったことを明かした。

さらにキャスティングについて、「半分は当て書きで、半分はオーディションで出会った役者さんの魅力に合わせて変えていきました」と語る。「僕が書いた人物像よりも、演者の方々の魅力がはるかに素晴らしかった。その魅力を最大限に引き出すことで、キャラクターがどんどん膨らんでいき、ラストシーンは脚本とは全く違うものになりました。『この人たちならこうは動かないだろうな』と思って変えたんです」と、俳優陣とのセッションで作品世界が豊かになっていった制作過程を振り返った。

監督の原風景・あきる野市が舞台 
実家や祖母の家も登場した創作の源泉

続いて、ロケ地を自身の故郷である東京都あきる野市に選んだ理由を問われ、板橋監督は「単純に僕の地元で、あきる野市が好きなのでその魅力を伝えたかった。劇中の台風のシーンも、実際に僕の家の目の前で起きたことです」と郷土愛と原体験が創作の核にあると明かすと、恵水プロデューサーが「劇中に出てくる家も、板橋監督の実家だったり、おばあちゃんの家だったりするんですよ」と補足し、作品には監督の個人的な思い出が深く刻まれていることを伺わせた。

【写真】SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025 映画『ひみつきちのつくりかた』ワールドプレミア (板橋知也監督、恵水流生プロデューサー、木寺響)

草刈り、開墾から1カ月!
故郷・あきる野市でのリアル「ひみつきち」制作秘話

物語の中核をなす「ひみつきち」の制作は、想像を絶するものだった。「まず、作っていい場所を探すのが本当に大変で、ようやく見つかった場所も地面がガタガタだったので、整地から始めました。中学からの友人で、本作では録音を担当し、造園の仕事もしているスタッフの鈴木(貴之)くんが農機具みたいなものを持ってきてくれて。1カ月くらい、会社員の仕事が終わった後や休日に2人で通って、草刈りをして、開墾して…という作業をしました」と監督は苦笑い。

恵水プロデューサーも「キャストの皆さんにも木を運んでもらったり、本当にみんなで作りました」と、チーム一丸となって文字通り「ひみつきち」を作り上げた撮影裏話を披露した。

【写真】SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025 映画『ひみつきちのつくりかた』ワールドプレミア Q&A/舞台挨拶 (恵水流生プロデューサー)

「見たことない虫が…」コロナ禍の猛暑と虫との闘い

過酷な現場の様子に、観客からは「夏の撮影で虫は大丈夫でしたか?」と心配の声が。板橋監督は「虫はすごく多かったですね…」と遠い目をし、恵水プロデューサーも「見たことない虫とか出ましたね」と同意。板橋監督は「セミもすごくて、録音的にも大変でした。コロナ禍での撮影だったので、マスクをしながらの作業で本当に息苦しくて」と、猛暑と虫、そして感染症対策という三重苦の現場だったことを明かした。

この話に、秘密基地のシーンには参加していなかった木寺は、「私は虫が本当に苦手なので、(行かなくて)ちょっと良かったなと思っています」と正直に打ち明け、会場を和ませた。

【写真】SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025 映画『ひみつきちのつくりかた』ワールドプレミア Q&A/舞台挨拶 (木寺響)

実は監督も出演していた!?
観客の鋭い指摘に明かされた“ちょい役”の真相

自身も子供の頃に秘密基地を作っていたという観客からは、「監督、ちょい役で出ていましたよね」と鋭い指摘が。「あれは制作費削減ですか?それとも出たがり屋さんですか?」とユーモアのある質問が飛ぶと、会場には笑いが起こった。

板橋監督は照れながら「どちらかというと出たがり屋ではないんですが(笑)。あのグダグダした感じは、僕だったらできるかなと。僕、結構挙動不審なところがあるので、隣にいるのは友人なんですが、一切打ち合わせなしでああいう空気感が出せるかなと思いました。それに、あのワンシーンだけで役者さんを呼ぶのは申し訳ないなというのと、ちょっと出てみたら面白いかなというのもあって出ていました(笑)」と真相を明かした。

【写真】SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025 映画『ひみつきちのつくりかた』ワールドプレミア Q&A/舞台挨拶 (板橋知也監督)

イメージを裏切るハードロック!
ブロックバスター好きな監督の挑戦!!

司会から「本作は、監督ご自身のパーソナルな部分から生まれていますが、それを個人的なアートフィルムにすることもできたはずです。なぜ広く観客に届けるエンターテインメント作品として作ろうと思われたのですか?」という質問が。板橋監督は、「僕、結構根暗なんで(笑)、自分の内面に向き合うようなパーソナルな作品は、これまでショートフィルムで撮ってきたんです。今回は、とにかく観てくれる方に楽しんでいただくことを一番に考えました」と回答。

続けて、「僕自身、ブロックバスター系の映画が大好きで、そういうエンターテインメントも作ってみたかったんです。作品のノスタルジックな雰囲気から、しっとりした音楽を想像すると思うんですけど、そのイメージを裏切りたくて。湿気を吹き飛ばすようなハードロックな選曲にしました。ギターは青木(健)さんという方にお願いしたんですが、『こんなロックな感じで始まるんだ!』と観客を驚かせたかったんです」と、その狙いを明かした。

【写真】SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025 映画『ひみつきちのつくりかた』ワールドプレミア Q&A/舞台挨拶 (板橋知也監督、恵水流生プロデューサー、MC:中西佳代子)

「ハーレイ・クインみたいなハンマーで…」
核心を突く記者からの質問に
監督が撮影の“痛み”を激白!!

Q&Aの終盤、ある記者から核心を突く質問が投げかけられた。「あれだけ苦労して作った秘密基地を、物語上とはいえ無残に壊すシーンは心が痛みませんでしたか?」と問われると、板橋監督は「しましたね、やっぱり。ハーレイ・クインみたいなでっかいハンマーで仲間とバンバン壊したんですが、ちょっと泣きそうになりました。劇中で4人が寝ていたように、僕らもできた時に寝っころがって昼寝するくらい居心地のいい場所だったので…胸が痛かったです」と万感の思いを込めて答えた。

続けて「佐藤の葬式の日以降、再び4人が集まってから誰もタバコを吸っていませんが、何か意図はありますか?」との質問には、「単純に、やっぱり“大人をやめる”ということなので、タバコのシーンは無くしました」と答え、細部にまで込められた演出の意図に、会場からは感心の声が上がった。

【写真】SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025 映画『ひみつきちのつくりかた』ワールドプレミア Q&A/舞台挨拶 (板橋知也監督)

下北沢「K2」での劇場公開も決定!
駆けつけたキャスト陣と「がんばんベェ」
ポーズで記念撮影📸

最後に、板橋監督は満員の客席を見渡し、「本日はご覧になっていただいて、楽しんでいただけて、もうこれだけで本当にこの映画を作った甲斐があったなと思っております。スタッフの皆さん、キャストの皆さん、関係者の皆さん、そして今日来ていただいた観客の皆さん、本当にありがとうございました」と感謝を述べた。

続いて恵水プロデューサーから「この映画は8月1日(金)からシモキタ-エキマエ-シネマ『K2』で公開されますので、ぜひ今日の感想などを呟いていただけたら」と劇場公開が告知されると、会場は期待の拍手で沸き上がった。

そして、この日が初めての舞台挨拶だったという木寺は「私も、さっきそこで皆さんと一緒に観ていていました。皆さんの笑い声を聞いたり、私自身もふっと笑える部分があったり、そういった作品に携わることができて本当に嬉しく思います。ありがとうございました」と締めくくり、イベントは温かい拍手に包まれた。

 

上映とQ&Aを終えた後には、会場ロビーで登壇した3名がポスターパネルへサインを書き入れ、フォトセッションを実施。

【写真】SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025 映画『ひみつきちのつくりかた』ワールドプレミア (板橋知也監督、恵水流生プロデューサー、木寺響)

さらに、客席で鑑賞していた廣末哲万佐藤貢三もりたかお高良万春美萱沼愛佳(現:美喜あい圭)いわたまありといったキャスト陣も合流し、サインと記念撮影が行われ、チームの温かい絆が感じられる特別な一夜となった。

[スチール撮影&記者: Cinema Art Online 編集部]

フォトギャラリー📸

スライドショーには JavaScript が必要です。

イベント情報

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025 コンペティション部門 
映画『ひみつきちのつくりかた』ワールドプレミア Q&A

■開催日時: 2025年7月22日(火)
■会場: SKIPシティ 映像ホール
■登壇者: 板橋知也(監督)、木寺 響(花梨役)、恵水流生(プロデューサー)
■司会進行: 中西佳代子(SKIPシティDシネマ国際映画祭 プログラミング・ディレクター)

【写真】SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025 映画『ひみつきちのつくりかた』ワールドプレミア (板橋知也監督、恵水流生プロデューサー、木寺響)

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025 (第22回) 開催概要

■会期: 2025年7月18日(金)~7月26日(土)(9日間)
■会場: SKIPシティ 映像ホール、多目的ホール、HDスタジオ 他(埼玉県川口市上青木3-12-63)
■主催: 埼玉県、川口市、川口商工会議所、SKIPシティ国際映画祭実行委員会
■公式サイト: https://www.skipcity-dcf.jp/

【画像】SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025 メインビジュアル

映画『ひみつきちのつくりかた』予告篇🎞

映画作品情報

【画像】映画『ひみつきちのつくりかた』

《ストーリー》

大人になってしまった僕たちは、もう子供の頃には戻れないのかもしれない。

都内アパートの一室、50歳を迎えた佐藤がスパゲッティに頭を突っ込み急死を遂げる。佐藤の小学校時代からの旧友である山上は葬式に参列するため地元へ帰省すると、同じく旧友の御手洗(みたらい)、工藤、豊永と再会する。同じ町で少年時代を過ごしながらも、全く違う人生を歩んだ4人の初老たち。

葬式の合間に昔話に花を咲かせていると、工藤が1冊の大学ノートを取り出す。そこに描かれていたのは、佐藤が小学生の頃に書いた『ひみつきち建設計画』。その夏、彼らは忘れていた子供心を取り戻そうと、あの頃に夢見た“ひみつきち”を建て始める。しかし、彼らの目の前には様々な“大人の事情”が立ちはだかり……。

 
出演: 廣末哲万、藤田健彦、佐藤貢三、もりたかお、木寺 響、惣角美榮子、白畑真逸、萱沼愛佳、高良万春美、いわたまあり、石川翔鈴
 
監督・脚本: 板橋知也
プロデューサー: 恵水流生
撮影・編集: 板橋知也
録音・MA: 鈴木貴之
メイク: 香坂寛子
音楽: 石川泰昭
製作・配給: emir heart Inc.
 
2025年 / 日本 / 109分 / カラー / 4:3 / ステレオ
 
2025年8月1日(金)より
シモキタ-エキマエ-シネマ『K2』にて公開!
 
映画公式サイト
 
公式Instagram:@himitsukiti_official
 

映画『ひみつきちのつくりかた』SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025 観客賞受賞!

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025 オープニング・セレモニー レポート

この記事の著者

Cinema Art Online編集部

本記事を読んでくださりありがとうございます。

この著者の最新の記事

関連記事

カテゴリー

アーカイブ

YouTube Channel

【バナー画像】日本アカデミー賞
ページ上部へ戻る