映画『流浪の月』㊗️大ヒット御礼舞台挨拶
広瀬すず「幸福感に満ちた時間を届けることができたらいいな」
松坂桃李「みなさんの心に触れ寄り添うことができたら幸いです」
5月24日(火)、映画『流浪の月』の大ヒット御礼舞台挨拶がTOHOシネマズ 六本木ヒルズで行われ、W主演の広瀬すずと松坂桃李、共演の横浜流星、多部未華子、そして李相日監督が登壇。本編を鑑賞した観客からSNSを通じて事前に寄せられた質問に回答した。
広瀬すず、周囲の反響の大きさに感謝💖
この日の舞台挨拶の模様は、全国305館の映画館へライブビューイングにより中継された。公開から10日ほどが経っての舞台挨拶となったが、監督、キャストにも周囲から多くの感想が届いているよう。本作を手掛けた李監督は「全国たくさんの人に観ていただき、多くの人の心の深い場所に届いているのを日々実感できて嬉しく思っています」と手応えを口にする。
広瀬も「いろんな方からご連絡いただいたり、会う人会う人に『いま観て来たよ』と言われるのが、私の中で過去一多いです。メールも長文で送ってくださったり、直接会って熱量をいただくけど『言葉で何て言っていいかわからない』という感想が多かったり、ここまで観てくれている人がいるんだなというのを身近でも感じられて、ありがたい毎日です」と周囲の反響の大きさに驚きつつ、感謝を口にする。さらに広瀬は「みんな、やっぱり流星くんのことを嫌いになりかけたと言ってました(笑)」と明かす。
広瀬演じる更紗をDVで苦しめる恋人の亮を横浜がリアルに熱演したからこその、ある意味で“称賛”とも言える反応だが、横浜は「嬉しいです。でも、僕ではないのでキライにはならないでほしいですね(苦笑)」と語り、笑いを誘っていた。
キャスト&監督が観客からの質問に回答!
最初の質問は、映画の中の少女時代の・更紗の“夕飯にアイス”を巡るエピソードにちなんだ「子どもの頃、やりたいけど周りに反対されてできなかったこと、反対されそうで言い出せなかったことは?」という質問。
「はい!」と最初に手を上げた松坂は「僕は昔漫画家を目指していて、小学生の頃に学習帳に好きな漫画の模写とかをしてました。それを机の中に溜め込んでたんですが、なぜか姉に見つかって、それを見た姉の一言が『絶望的にヘタクソだね』で…。その時に漫画家になる夢は捨てました(苦笑)」と告白。ノートは「泣きながらゴミ箱に入れました」と哀しい思い出を明かす。
一方、横浜は、そうした経験は「なかった」と正直に述懐。「『人任せではなく、自分で発信して、やりたいと思ったことはやれ』と尊重してくれる家族だったので、自分でやるしかないと思って空手を選びました」と明かす。
そんな横浜に松坂から「(もし選ぶのが)空手以外だったら?」と質問が。横浜は「マジで球技ができないので、サッカーとかバスケとかやってみたかったです。引かれるくらいできないんで…(苦笑)」と告白し、これには松坂も「意外!運動神経よさそうだから」と驚いていた。
広瀬は「『やれなかったこと』ではないんですが、末っ子なので、基本的に、全部おさがりだったんです。新品のものは全く買ってもらえなかったです。制服からリコーダーまでおさがりで、(リコーダーのおさがりは)さすがにイヤだったけど『お兄ちゃんじゃなく、お姉ちゃんのにするから』『3回消毒するから」と言われて納得した自分がいました(笑)」とふり返る。こうした経験からか「(新品で買った)洋服ひとつでもすごく嬉しかったし、大人になって自分で買えるようになった時の爆発力がすごかったです。止まんないですね(笑)」と“反動”を明かしていた。多部は「“ケーキの食べ放題”に小っちゃい頃に行きたかったけど行けなくて、大人になったら体型とか気にしちゃうので行けなくて、それは行きたかったですね…」と明かした。
続いての質問は「言い回しや表現が難しかったセリフ。言われてグッときた、ズシンときたセリフは?」という質問。横浜は、更紗から言われる「私もあなたにひどかったね」というセリフを挙げ「それを言われる前に更紗にキスをして、でもそのキスから何の反応も返ってこなくて、その言葉を言われて…。『あぁ、本当に無理なんだな』って、その言葉はすごく残酷だなと。あの近さであの目と表情で言われて『もう無理なんだな』と落胆しました。哀しかったです。自分が悪いことしているので仕方ないですが…」と少し寂しそうに語る。それを聞いた広瀬は「私だってつらかったです。私も難しくて、いろいろ考えながらやっていました」と明かした。
そんな広瀬が印象的だったシーンに挙げたのは、谷(多部)の文(松坂)の過去を知ってしまったシーンのやりとり。「文の谷さんを見る目が急に変わるというか、急にフィルタをかけたようなしゃべり方とトーンで声が跳ねる感じの言い回しに『うわっ!』と思いました。『そうだよ』みたいなひと言だけでも、感じられる感情がいっぱいありました」と語る。
広瀬の絶賛に対し多部は「多部目線で言うと、はじめ(谷が文に愛情を)求めるじゃないですか? あんなに何も返してくれない男、どうしていいかわかんないよ!って。谷さんは、それでも献身的に、心と心が触れ合いないかって求めるけど、あんなに何もリアクションしてくれないと、多部だったら『どうして? 言いたいことあるなら言って!』と言っちゃうタイプなので(笑)。ラストシーンも、ずっと私一人でしゃべってて、何も言ってくれなくて、そこにあのフィルターのかかった、死んだような目で…『もうどうしたらいいの?』って。ずっと一人で何も返ってこない人と戦う谷さんで、多部からしたら『なんてことだ!』という。今日、もう最後だからハッキリ言いますけど(笑)、『何なんだ!』って思ってました」と文への“怒り”を思い切り爆発させる。
これには松坂もタジタジで「松坂からしたら、本当に申し訳ない。谷さんがバーッと言って、文が答えるところも、谷さんが言ってくる言葉が全部刺さってくる感じでした。松坂的に言うと…トータル的に谷さんへの向き合い方、『本当に申し訳ございません。代わりに僕が謝ります』という感じです(苦笑)」と平謝りだった。
李監督は、お芝居の中での俳優陣のアドリブについて尋ねられると「アドリブじゃないけど、延長で出てきたものでいうと、桃李くんが最後に警察に羽交い絞めにされた時、台本には『やめろ』とかって言葉がいくつかあったけど、『もうやめてくれ』という最後の一押しは桃李くんというか文から吐き出た言葉だったので、現場で見てて『すごいものが出てきたな』という驚きがありました。更紗が文のところに逃げ込んでから、文が更紗を撫でて、バーッと彼女が自分の気持ちを言うところも、使われているテイクは4回目か5回目なんです。最初のうちは、更紗が言い終わった後に文が手を添えるというのをやってたけど、何か届き切らないなという時に、僕と桃李くんだけで話をして、更紗のセリフが終わらない内にやってみたら、更紗のほうからボロボロセリフがこぼれてきました。そういう、“あふれでる”感じはいくつかありましたね」と明かした。
松坂はこれらのシーンを振り返り「撮影の順番が、順撮りに近い感じでやってくださったおかげで、実感みたいなものを積み重ねやすくて、それはすごく大きかったです。文の中で、経験している、過去にできない記憶、体験、真実みたいなものが地続きで続いているからこそ、似たシチュエーションのことが目の前で巻き起こった時に、自分の中からポッと出てくるものがありました」と語った。
キャスト&監督から観客に向けてメッセージ
最後の挨拶では、多部は改めて本作に出演できたことへの喜びを口にし「私自身、この中では短いシーンでの登場でしたが、とても濃密な時間を過ごさせていただきました。監督、ありがとうございました。共演してくださったみなさん、広瀬さんも横浜さんもお会いできて嬉しかったです。桃李くん、いつも本当にありがとうございます」と感謝を伝えた。
横浜は「僕も周りの方の連絡が多くて、感想を聞くとみんな全然違う感想が返ってくる。それが“答え”だと思います。この作品を観て、どう感じてどう受け取るか、みなさん次第だと思うし、その感性、受け取ったものを大事にしてほしいと強く思います」と呼びかける。
松坂も、横浜の言葉にうなずき「感想がメールやLINEで来るけど、全員長文なんです。どんな言葉を紡ごうと、言い表すことができないけど、伝わってくるものがあったんだなと。この作品、登場人物たちを通してちゃんと伝わるものがあったんだなと思うと、つくづくこの作品をやれてよかったと思うし、このチームでできたことが、僕の一番の宝物――そんな時間だったなと思います。少しでもみなさんの心に触れること、寄り添うことができたら幸いです」と語りかけた。
広瀬は「私が更紗として、文からもらった言葉と『更紗は更紗だけのものだ』と言ってもらえた時のように、少しでもみなさんが感動されて帰っていくような、幸福感に満ちた時間を届けることができたらいいなと思っています」と言葉に力を込める。
そして、李監督は「なかなか言葉にできない感想が多いんですけど、我々も言葉にできないものを何とか作ろうとしていました。だからこそ、俳優の一挙手一投足、息づかいや目線、映像も言葉以上に雄弁で、音も繊細で音楽もダイナミックさがあって、わかりにくいけどこれは大事なものなんだというものを届けよう、形にしようとしていた作品だと思います。そういう意味で、映画館で体感し、味わう映画として、そういう要素に満ちている作品だと思います。みなさんの大事な一本になると嬉しく思います」と語り、会場は温かい拍手に包まれた
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イベント情報
映画『流浪の月』大ヒット御礼舞台挨拶■開催日: 2022年5月24日(火) |
映画『流浪の月』予告篇🎞
映画作品情報
《ストーリー》雨の夕方の公園で、びしょ濡れの10歳の家内更紗に傘をさしかけてくれたのは19歳の大学生・佐伯文。引き取られている伯母の家に帰りたがらない更紗の意を汲み、部屋に入れてくれた文のもとで、更紗はそのまま2か月を過ごすことになる。が、ほどなく文は更紗の誘拐罪で逮捕されてしまう。それから15年後。“傷物にされた被害女児”とその“加害者”という烙印を背負ったまま、更紗と文は再会する。しかし、更紗のそばには婚約者の亮がいた。一方、文のかたわらにもひとりの女性・谷が寄り添っていて… |