ルーカス・ドン初来日!ジャパンプレミア開催!
“第2のグザヴィエ・ドラン” 衝撃のデビュー作
カンヌ国際映画祭3冠受賞!!
バレリーナになる夢に向かってひたむきに努力を重ね、傷つきながらも成長していくトランスジェンダーの少女ララの姿を描き、カンヌ国際映画祭をはじめ世界中で高い評価を得た衝撃作、『Girl/ガール』が7月5日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショーとなる。
ルーカス・ドン監督は、長編デビュー作ながら第71回カンヌ国際映画祭に選出されるや「奇跡のように完璧なデビュー作」とメディアから喝采を浴び、カメラドール(新人監督賞)を受賞。第91回アカデミー賞®外国語映画賞〈ベルギー代表〉選出、第76回ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞ノミネートという快挙を成し遂げた。評論家・観客からは“ニュー・ドラン”とも称される、今世界が最も注目する新鋭監督である。
主演のビクトール・ポルスターは、アントワープ・ロイヤル・バレエ・スクールに通う現役のトップダンサー。“性別を超越した美しさ”と絶賛され500人を超える候補者の中から選ばれた。初の映画出演でシスジェンダーでありながらララの繊細な表情や思春期の心の機微を見事に表現し、カンヌ国際映画祭・ある視点部門で最優秀演技賞を受賞。バレエシーンでは圧倒的なパフォーマンスを見せている。その息をのむほどに美しいバレエシーンの振付は、ベルギーが世界に誇る振付師でコンテンポラリー界の旗手、シディ・ラルビ・シェルカウイが担当している。
4月22日(月)、日本公開に先駆けて来日したルーカス・ドン監督が登壇するジャパンプレミアが新宿武蔵野館で開催された。
イケメン27歳の映画監督、白熱授業に会場が湧く!
本編上映後の会場は感動に包まれシーンと静まり帰っている。辺りを見回すと会社帰りの若い女性から男性までと幅広い層が固唾を飲みカンヌでカメラドールを受賞した若いルーカス・ドン監督の登壇を待ち焦がれている。司会者が「監督がこんなにイケメンだとは思わなかったよ!」の声で映画『Girl/ガール』のトークショーとQ&Aが始まった。
ドン監督: 皆さま、こんにちは!ルーカス・ドンと申します。この作品の監督を務めております。『Girl/ガール』は、映画学校を卒業して最初に作った僕の長編デビュー作になります。作品を日本に持って来ることができ、日本のお客様にご覧いただけることを大変嬉しく思います。
映画制作の理由とキャスティングの苦労
―― トランスジェンダーの女性が主人公の映画を、なぜ作ろうと思われたのですか?
ドン監督: この作品のきっかけは、9年、ほとんど10年近く前になります。2009年、僕が18歳の時、当時15歳だったノラさんの記事を見たことから始まりました。彼女は15歳のトランスジェンダーの女性なのですが、バレリーナを夢見ていました。この作品とちょっと違うのは、バレエ学校の男性のクラスから女性のクラスに、ポワントの授業を受けたいとクラス変更を願い出たことでした。学校に断られ、それが記事になり、目にしたのが最初の出会いでした。世間が自分のアイデンティティを変えようとしているのに、真の自分のままであろうとしたのです。その姿にインスピレーションを得ました。彼女が自分を取り巻く規範、「これが普通」みたいな考え方を壊そうとしていたのです。あるがままの自分を決して裏切ることなく闘っていました。僕は18歳でしたが、周囲からの「男の子はこうあるべき」というイメージに自分のエネルギーを全て注ぎ込み、合わせてしまっていたのです。だからこそ彼女のことを知った時、敬意を感じました。
―― キャスティングについてお聞きします。主演のララ役のキャスティングは、なぜジェンダーを問わずに募集をかけたのですか?
ドン監督: この映画の製作に当たって一番複雑だったのが、ララのキャスティングでした。必要な資質がたくさんあったのです。振り付けは名匠シェルカウイ*によるものなので、コレオグラフィ(振り付け)を踊れるレベルのダンサーでなければいけなかった。しかも年齢も15歳でありながら出ずっぱりの役なので、この役と作品を担える人物でなければいけない。カメラが彼ないし彼女の身体や顔をずっと追っているわけですからね。
それに加え、ララというキャラクターのアイデンティティをエレガントに敬意を持って表現できる方を求めていました。だからこそ、この役を演じてくれる人をジェンダーに拘らずに募集をかけたのです。ところが作品のモデルとなったノラさんのイメージが、僕の頭の中にこびりついていたのでキャスティングが難航したのです。また全ての資質を持っている人もいなかった。ララ役募集とは別にダンサーの募集も行っていました。その集団オーディションでビクトール・ポルスターと出会ったのです。1年半もの間ララ役が見つからなかった時期を経て出会いました。彼が部屋に入って来た瞬間、ノラを見ると僕が感じる磁石のような力を感じました。さらに必要な資質をすべて持っていたのです。
ドン監督: どうもありがとう。
*ベルギー出身の振付家・演出家で、日本では手塚治虫と浦沢直樹の「PLUTO」(森山未來主演)などを手掛けている。
客席から鋭い質問が次から次へ
―― 有名なシェルカウイさんに振り付けをしてもらったのに、カメラはララの顔ばかり追っていたように思います。この狙いは何ですか?
ドン監督: シェルカウイさんに脚本を読んでいただいたら、振り付けをぜひやりたいとおっしゃっていただけました。とてもワクワクしてくださっていたのですが、初期の段階で僕の方からコレオグラフィは、あまり撮ることができないと申し上げました。彼ほどの才能の方と仕事をするのにもったいないという気持ちもありました。理由というのは、コレオグラフィをみせるよりも踊りが肉体にどんな影響をするのかを撮りたかったからです。
僕にとってこの映画は、ある意味踊りがララの体にどんな影響を及ぼしているのかという事についての映画でもありました。だからカメラは振り付けよりも、彼女の顔や身体の近いところから撮って、ララの感覚を捉えたいと考えていました。シェルカウイの振り付けは、劇場で観るに値するとても素晴らしいものだと思っています。ですが先ほど申し上げたように踊りが物理的に肉体にどんな影響があるのかを撮るのは、引きで撮影をするとその絵を維持するのが難しいのです。若いダンサーがシェルカウイの振り付けを繰り返し練習することでどんなことを感じるのか、肉体にどんな影響があるのかを解釈として捉えたいと狙っての結果だったのです。
―― なぜあのラストシーンを作られたのですか?賛否両論について監督はどう思われますか?
ドン監督: この映画は若い主人公の内なる葛藤に焦点を当てました。彼女を取り巻く環境に人々はどんなリアクションをするのかは、ニュース、SNS、インターネットを読めばわかることなので敢えて描写はしていません。逆に彼女の内なる世界、内面に抱えている葛藤を映像化したいと思いました。内に秘めているものをどうやって映像で表現するのかというのは、とても難しく、脚本でも長い間悩んだ箇所でした。
僕にとっては、ララが踊りを通して自分を型にはめる、自分の身体を操作してあるイメージに持って行こうとする姿を見せることで、彼女の内側でどんなことを感じているのかを表現しようと考えました。この映画は自分にとっても、誰にとってもそういう経験をしていると思いますが、目立つよりも、目立たなくなり皆と同じようになりたい、そこの型にはまっていきたいと思う瞬間についての映画でもあるのです。
ララの場合は、目指している本人が作った「完全な女性らしさ」というイメージです。そこに向かって自分の身体を操って、はめていこうとしているわけです。「完全な女性らしさ」をバレリーナにメタファ(暗喩)として象徴させたと観て欲しいのです。ララが自分の身体を操り、どんなところまで辿り着こうとしていたのかは、ショッキングな部分も含めてメタファとして考えていただければと思います。つまり彼女の内なる葛藤を表現しようと思った時に、そういった表現に至ったというわけなのです。
―― 音と照明の使い方に惹かれました。どんなところに力を入れたのかポイントを教えてください。
ドン監督: まず照明ですが、シーンにより異なります。自分が今まで手掛けてきた短編もそうですが、シーンによって光、照明の使い方で何かを伝えようと心掛けています。この作品の脚本を書いている時のインスピレーションのひとつが、ギリシャ神話イカロスの翼の話でした。太陽になるべく近い所まで高く飛ぼうとするイカロスを父親が止めようとする物語で、大きなインスピレーションになっています。
照明を考えた時に、実際の太陽の光を取り入れたいと考えて使っているシーンがあります。また物語がドンドン加熱するに従い、青のネオンっぽい色彩を照明に取り入れています。これは身体が誇張されるからなのです。肉体が照明で誇張されるララの踊りのシーンは、自分自身の肉体と闘っていることが浮き彫りになります。また赤い光を使っているシーンもあります。たとえば部屋の中にいる時や隣人の少年と仲良くなったりするシーンです。肉体的に触れ合いそうになるシーンで赤を入れているのは、実は彼女にとってまだ危険だからという意味で使っています。カメラマンと話し合いを重ねて作っていきました。
それから音の方で特に重要だったのは、トゥシューズの雑巾をひねるような動きのシーンでした。何かギュッとひねられているようなララが自分を他人が作った型のイメージにはめようとするところです。トゥシューズに足をはめようとするのは、またやはりメタファです。どんどんあの中に足を入れていこうとするその音が重要な効果音になっています。実際の楽器も何か斬り込んでくるようなハードなヴァイオリンの音だったりします。そういう音と同時に身体に直接訴えかけてくるような、ララの考えていることを柔らかい音で表現する瞬間も作りました。ララと観客とが一緒に居られるように、チームで話し合いをしながら制作しました。音響効果はストーリーを綴るのに役立ったと思います。
ドン監督への質問が途切れることなく続き、ジャパンプレミアが終わるのがもったいない雰囲気ができあがっていました。ぜひ映画館に足を運び感動の続きを体感してください。
[スチール撮影&記者: 花岡 薫]
《イベント情報》映画『Girl/ガール』ジャパンプレミア■開催日: 2019年4月22日(月) |
映画『Girl/ガール』予告篇
映画作品情報
《ストーリー》バレリーナを夢見るトランスジェンダーの少女ララ。 イノセントな彼女がたどり着く、映画史上最も鮮烈でエモーショナルなクライマックスに心震える感動作 15歳のララの夢はバレリーナになること。しかしそれは簡単なことではなかった。彼女は男の体に生まれてきたから。それでも強い意志と才能、娘の夢を全力で応援してくれる父に支えられ、難関のバレエ学校への入学を認められる。夢の実 現のためララは毎日厳しいレッスンを受け、血のにじむような努力を重ねていく― だが、初めての舞台公演が迫る中、思春期の身体の変化により思い通りに動けなくなることへの焦り、ライバルから向けられる心ない嫉妬により、彼女の心と体 は追い詰められていく― |
第76回ゴールデン・グローブ賞 外国語映画賞ノミネート
新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー!