- 2025-11-2
- イベントレポート, トークショー, 日本映画, 第38回 東京国際映画祭

第38回 東京国際映画祭(TIFF)
ガラ・セレクション部門
映画『君の顔では泣けない』トークショー
坂下雄一郎監督&原作者・君嶋彼方が登壇!
原作者が「ずるい」と唸った映画ならではのラストシーンとは?
11月2日(日)、第38回東京国際映画祭(TIFF)ガラ・セレクション部門にて、映画『君の顔では泣けない』が丸の内ピカデリーで上映され、上映後に行われたトークショーに坂下雄一郎監督と原作者の君嶋彼方が登壇した。
本作は、同じ高校に通うふたりの男女の身体が入れ替わってしまい、そのまま15年の月日を過ごすという不思議な出来事を描いた物語。原作は、君嶋氏による同名小説。この日は、映画化にあたり監督が意識した点や、完成した映画を観た原作者が「ずるい」と唸ったという映画ならではの演出についてなど、ここでしか聞けないトークが繰り広げられた。

坂下監督が映画化の企画で意識した“2つのこと”
まず、原作を映画化する上でどのような点を意識したか問われた坂下監督は、企画書を出版社に提案した段階で決めていたこととして2つのポイントを挙げ、「1つは、2人の恋愛の話にはしないこと。もう1つは、入れ替わりものはコメディの題材になりがちですが、大げさな身振り手振りで中身の人格を表現するようなコメディにはしない、ということでした」と、作品の根幹となるテーマについて語った。

原作者の君嶋氏は、完成した映画を観て「その2点は、まさに僕が(映像化の際に)唯一お願いした部分でした。監督にお伝えしたら、『もちろん、わかっています』とおっしゃっていただけた。実際に映画を観て、本当に真摯に原作に向き合って映像化してくださったのだと感じました」と、監督への信頼と感謝を述べた。

映画ならではの表現を、原作者が「ずるい」と絶賛!
「僕がお伝えしたかったものをあのワンシーンで表現していた」
完成した映画の中で特に印象的だったシーンについて聞かれた君嶋氏は、ラストシーンを挙げた。「映画では、最後に原作にはない(2人が情報交換を重ねる喫茶店)『異邦人』のシーンが差し挟まれていて、これずるいなあと(笑)。小説は一人称なのでああいうシーンはできない。僕がお伝えしたかった『最後どちらの結果になっても2人は大丈夫』という意図を、あのワンシーンで体現してくださった。これは映画でしかできない素晴らしい表現。さすがです」と、映画オリジナルの演出を絶賛した。

この言葉を受け、坂下監督は「君嶋先生から企画段階でお話を聞いて、今の意図を芯に据えながら本作を描いていこうと決めました。その想いを最後まで貫き通した形です」と、創作の裏側を語った。

主演二人の絶妙な演技のバランス
坂下監督が興奮したのは、髙橋海人が唯一“噛んだ”シーン
主演を務めた髙橋海人と芳根京子の演技について、坂下監督は特に印象に残っているシーンとして髙橋のあるセリフを挙げた。「彼が(芳根に向かって)『戻りたくないわけないでしょ』というセリフで、少しつっかえたというか、噛んだテイクがあったんです。今回の撮影で髙橋さんがセリフを噛むことはほとんどなかったのですが、あの瞬間だけ出てきて、言い直すというお芝居が、すごくリアリティというか…。ハプニング的ではありながら、すごくいいものが見られたなと現場で興奮したのを覚えています」と、髙橋の想いが伝わってくる貴重な瞬間を振り返った。

君嶋氏は「冒頭に監督からお話いただいた“コメディっぽさ”をどこまで抑えられるかが少し心配だったのですが、お二人が『完全に排してはいないけれど、すごく大げさにも表現しない』という絶妙なバランスで演じられていた。かなり難しいことをされていたのではないかと思いました。どんな演技指導をしたのだろうと」と、主演二人の演技の巧みさに感心した様子で語った。
これに対して坂下監督は「僕はほとんど(指導を)していませんね。お二人のインタビューを読むと、実際は結構悩まれていたようですけど、スタッフ側から見たらリハーサルの初日からほぼ完璧で、微調整をした程度。素晴らしい2人にきてもらえてよかったです」と明かし、同様に主演2人の演技力の高さを評価した。

最後は、君嶋氏が「映画を観て原作が気になった方は、また違った感想や視点が見られると思いますので、ぜひ手に取っていただけると嬉しいです」と語り、坂下監督も「気に入っていただけたら嬉しいです」と観客にメッセージを送り、イベントは幕を閉じた。

イベント情報
第38回 東京国際映画祭(TIFF)
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映画作品情報

《ストーリー》高校1年生の坂平陸と水村まなみは、プールに一緒に落ちたことがきっかけで心と体が入れ替わってしまう。いつか元に戻ると信じ、入れ替わったことは二人だけの秘密にすると決めた二人だったが、“坂平陸”としてそつなく生きるまなみとは異なり、陸はうまく“水村まなみ”になりきれず戸惑ううちに時が流れていく。 もう元には戻れないのだろうか。“自分”として生きることを諦め、新たな人生を歩み出すべきか――。迷いを抱えながらも二人は、高校卒業と進学、初恋、就職、結婚、出産、そして親との別れと、人生の転機を経験していく。 しかし入れ替わったまま15年が過ぎた30歳の夏、まなみは「元に戻る方法がわかったかも」と陸に告げる…。 |
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