- 2017-11-1
- イベントレポート, 映画賞/アワード, 第30回 東京国際映画祭, 舞台挨拶
第30回 東京国際映画祭(TIFF)
第4回 SAMURAI(サムライ)賞授賞式
映画『Ryuichi Sakamoto: CODA』舞台挨拶レポート
坂本龍一、初のドキュメンタリー映画が完成。出演理由は?ひとえに監督のお人柄!
“SAMURAI(サムライ)”賞は、比類なき感性で「サムライ」のごとく、常に時代を斬り開く革新的な映画を世界へ発信し続けてきた映画人の功績を称える賞として誕生した。第4回そして記念すべき第30回を迎える東京国際映画祭(TIFF)では坂本龍一氏(以下、坂本)が受賞。11月1日(木)、第4回“SAMURAI(サムライ)”賞の授賞式が行われた。
同日、2012年から5年間という長期間に渡る密着取材により製作され、坂本が「全てをさらけ出した」 というドキュメンタリー映画『RyuichiSakamoto: CODA』が特別招待作品として先行上映された。舞台挨拶に坂本龍一氏とスティーブン・ノムラ・シブル監督が共に登壇した。
第4回“SAMURAI(サムライ)”賞の授賞式
TIFFマスタークラスの一つとして開催された「SAMURAI 賞授賞記念 坂本龍一スペシャルトークイベント~映像と音の関係~」の終了後、TOHOシネマズ六本木 スクリーン7に会場を移し、第4回“SAMURAI(サムライ)”賞の授賞式が行われ、坂本龍一氏(以下、坂本)が登壇した。
日本刀の形をしたトロフィーを贈られた坂本。受け取るとしげしげ眺め、にこにこと笑顔を見せた。写真撮影の際には、まるで刀のように振りかぶったり、自分自身を斬りつける真似をしたりと楽しげな坂本に、会場からどっと笑いが巻き起こった。
坂本は、トロフィーを見つめながら、映画音楽デビュー作『戦場のメリークリスマス』(1983年)について語った。
「『戦場のメリークリスマス』で、役者として居合いをするシーンがあります。撮影時は8回くらい道場に通い、付け焼刃ながら習ったなぁと思い出しました」「撮影現場では、軍人役がみんな振り回すので、刀が曲がってしまったりもしましたね」と目を細めると「こういうの(日本刀形のトロフィー、つまりは刀のようなもの)を持つと、人間って斬りたくなるものなんですね。皆さんは持たないようにしてくださいね(笑)」と笑いを誘った。
「(『戦場のメリークリスマス』撮影)当時はまだ環境に対する意識も高くなくて、ロケ地である南太平洋の島で、木をばっさばさときってましたよ(笑)」と自身の意識の変化も振り返る。「これ(受賞記念トロフィー)を見ていたら、思わず振り回したくなってしまいました(笑)。“SAMURAI(サムライ)”という名に私がふさわしいかは疑問がありますが、本当にありがとうございます」と授賞式を締めくくった。
特別招待作品『Ryuichi Sakamoto: CODA』舞台挨拶
授賞式に続き、ドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto: CODA』の舞台挨拶が行われ、同作のスティーブン・ノムラ・シブル監督(以下、シブル監督)が坂本と共に登壇した。
「この映画を作り始めたのは、2012年の夏でした」と5年かけて完成した映画だと語るシブル監督。「映画は監督のものだと、坂本さんはよくおっしゃってくださいますが、同時に映画は一人で作れるものではないとも思います。本当にありがとうございます」と各関係者に感謝の気持ちを述べた。「僕には自分の素顔を曝け出すという趣味はありません」と坂本。
では、なぜ今回の映画を作ることを承諾したのだろうか。「ひとえにシブル監督の人柄です。本当に日本人以上に腰が低く丁寧な方なんです。そんなシブル監督の人間性に惹かれて出演を承諾しました。この監督になら任せてもいいという気持ちになりました」と信頼する監督への思いを語った。「計画通りにいったものはなくて、自然と次々に起こることを追っていったら5年も経ってしまって。まとめるのが大変だったと思いますよ」とシブル監督を労った坂本に「当初から手探りで、かなり衝動的に始めた映画だったんです。坂本さんがおっしゃるとおり、それが、どんどんどんどん感覚的にならざるをえない状況の中、最終的には自然と今の形になっていきました」とシブル監督は頷いた。
撮影時印象的だった言葉や出来事を尋ねられたシブル監督。「たくさんありすぎる」中でも、震災直後の陸前高田での撮影は、カメラを回しながら震えるような気持ちでいたという。
映画音楽とは?と尋ねられた坂本は「映画にはルールはないし、必ずしも音楽が映画に必要なわけではないと思う」とし「必要とされる場所に音楽があればいい、それが一番幸せなことだと思います」と思いを語った。
最後に、映画をこれから観る人に向けて、シブル監督からメッセージが送られた。
「5年間もかかった映画です。ありすぎるくらいの思いがありますが全て、スクリーンに込められていると思います。一つ言えるのは、音で感じられる映画であってほしいということです。スタッフは耳で編集を繋ぎました。観客の皆さんも耳を開いて、この映画を感じていただければと思います」
坂本が最後「観客に判断を任せる」と言った映画『Ryuichi Sakamoto: CODA』は11月4日(土)より公開される。
《イベント情報》<第4回“SAMURAI(サムライ)”賞授賞式><『Ryuichi Sakamoto: CODA』舞台挨拶> ■開催日: 2017年11月1日(木)
■会場: TOHOシネマズ 六本木ヒルズ スクリーン7
■受賞者: 坂本龍一
■舞台挨拶登壇者: 坂本龍一、スティーブン・ノムラ・シブル監督 |
《坂本龍一 プロフィール》1952年東京生まれ。1978年「千のナイフ」でソロデビュー。同年「YMO」を結成。散開後も多方面で活躍。『戦場のメリークリスマス』で英国アカデミー賞を、『ラストエンペラー』の音楽ではアカデミーオリジナル音楽作曲賞、グラミー賞他を受賞。常に革新的なサウンドを追求する姿勢は世界的評価を得ている。環境や平和問題への言及も多く、森林保全団体「more trees」の創設、「stop rokkasho」、「NO NUKES」などの活動で脱原発を表明、音楽を通じた東北地方太平洋沖地震被災者支援活動も行っている。2013年は山口情報芸術センター(YCAM)10周年事業のアーティスティック・ディレクター、2014年は札幌国際芸術祭 2014のゲストディレクターとしてアート界への越境も積極的に行っている。2014年7月、中咽頭癌の罹患を発表したが、1年に渡る治療と療養を経て2015年、山田洋次監督作品『母と暮せば』とアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督作品『レヴェナント:蘇えりし者』の音楽制作で復帰を果たし、2016年には李相日監督作品『怒り』の音楽を担当した。2017年3月には8年ぶりとなるソロアルバム「async」を発表。 |
映画作品情報
映画『Ryuichi Sakamoto: CODA』とは?「全てをさらけ出した」 2012年から5年間という長期間に渡る密着取材によって実現。
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監督: スティーブン・ノムラ・シブル
プロデューサー: スティーブン・ノムラ・シブル、エリック・ニアリ
エグゼクティブプロデューサー: 角川歴彦、若泉久央、町田剛雄
撮影: 空 音央、トム・リッチモンド、ASC
編集: 櫛田尚代、大重裕二
音響効果: トム・ポール
製作/プロダクション: CINERIC BORDERLAND MEDIA
製作: KADOKAWA、エイベックス・デジタル、電通ミュージック・アンド・エンタテインメント
制作協力: NHK
共同プロダクション: ドキュメンタリージャパン
配給: KADOKAWA
2017年 / アメリカ・日本 / カラー / DCP American Vista / 5.1ch / 102分
公式Twitter: @skmt_coda
公式Facebook: www.facebook.com/ryuichisakamoto.coda/