(原題/英題:Tully)
話を聞いてくれる誰かがいれば、苦労も乗り越えられる!
シャーリーズ・セロン主演『タリーと私の秘密の時間』が8月17日(金)に公開された。
仕事に家事に育児と、何ごとも完璧にこなしてきた”人に頼れない”3人の子供の母親マーロと、彼女の元に現れた夜だけのベビーシッター・タリーの不思議な絆を描く。
本作でシャーリーズ・セロンが演じたのは優秀なベビーシッターのタリーではなく、家事と育児で疲れ切ったマーロ。体重を18キロ増やし、どこにでもいるおばちゃん体型に肉体改造して挑んだ。2017年に『アトミック・ブロンド』でMI6の諜報員ロレーン・ブロートンとしてスタイリッシュなアクションを披露したときとは別人のよう。
マーロの姿を追うことで、育児に疲れた母親のリアルな現実とマーロがそれをどう克服したのかを考えてみたい。
生まれたばかりの赤ちゃんは昼夜の区別がなく、1日の大半を寝てばかり。数時間おきに起きておむつを替え、おっぱいを飲み、また眠るの繰り返し。マーロが夜中に何度も起きて、おむつを替えているシーンがあったが、まとまった睡眠時間が確保できず、親は辛い。
昼夜の区別がないのは赤ちゃんだけでない。実は母親の身体も同じ。赤ちゃんのために新鮮なおっぱいを24時間作り続ける。満タンだから製造休止ということはしない。そこで赤ちゃんが飲み残した古いおっぱいはしっかり絞り出しておく必要がある。これがけっこう面倒臭い。マーロは自動搾乳機を使って絞っていたが、眠かったのだろう、搾乳した母乳をテーブルにしっかり置かずに倒してこぼしてしまった。
それでもあまった母乳は自然に溢れ出てしまう。マーロがダイエットのためにランニング中、胸元が濡れたのはそのせい。しかも、溢れ出るより作る量の方が多いので、キャパを超えるとおっぱいはカチカチに固くなり、非常事態宣言とばかり痛み出す。物語後半でマーロがタリーと夜の街に繰り出したとき、トイレに駆け込んで苦しんでいたのはこの非常事態が起こったのだ。こうなると母乳を絞るのも痛い。母体というものは本当にデリケートにできている。
マーロには優しそうな夫がいるが、冷凍ピザをチンしただけの夕食にげんなりした顔をし、夜は1人ベッドでゲームに興じる。マーロが抱える負担を支えようする気配さえない。ワンオペ育児状態のマーロは肉体的な負担だけでなく、孤独という精神的な負担も負っていたのだ。
そこにタリーが登場。家事を完璧にこなし、マーロの悩みに耳を傾ける。ヘソ出しのショートタンク姿のタリーに戸惑っていたマーロも彼女に心を開いていく。やがてマーロは精神的にも肉体的にも余裕ができ、生き生きとした姿をみせるようになった。
「おれにはおっぱいがない」と思っている父親でも、話を聞いてあげることはできるだろう。父親でなくても、タリーのように、近くにいる誰かが耳を傾けてくれるだけで、孤独な母親の心はかなり軽くなる。しかも、搾乳した母乳は冷凍保存が可能。母乳育児にこだわっていても、夜中の授乳だって交代できるのだ。
もし、そばに悩めるマーロがいたら、あなたが彼女のタリーになってあげられるかもしれない。
映画『タリーと私の秘密の時間』予告篇
映画作品情報
《ストーリー》「わたし、ひとに頼れないの」 |
邦題: タリーと私の秘密の時間
日本語字幕: 中沢志乃
2018年 / アメリカ / 英語 / カラー / ビスタサイズ / 95分 / レイティング:G
配給: キノフィルムズ
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