宇宙大国アメリカの草創期―NASAで黒人女性が、静かに、そして力強く差別と戦った!
今明かされる三人の勇気あるパイオニアの愛と真実の物語!
《ストーリー》
1960年代、世界を自由主義圏と共産主義圏に二分したアメリカとソ連は、宇宙開発事業においても熾烈な競争を繰り広げていた。その中枢となるNASA(アメリカ航空宇宙局)では、優秀な頭脳を持つ黒人女性たちが複雑な計算を行う計算手として数多く働いていた。最新鋭の技術を開発するNASAだが、依然として黒人への人種差別は色濃く残る。飲み物やトイレや座る場所など…ありとあらゆるもので差別が公然と行われていた。
そうした環境に敢然と、そして毅然と立ち向かう三名の黒人女性がいた。キャサリン(タラジ・P・ヘンソン)、ドロシー(オクタヴィア・スペンサー)、メアリー(ジャネール・モネイ)は、それぞれの職場で差別と偏見による恥辱を受けながら、仕事の成果やキャリアを積み上げていき、徐々にその存在を認められるようになっていく。折しもNASAでは国の威信をかけたマーキュリー計画が進行中で、多様な才能と精度の高さが求められる時であった…
《みどころ》
2017年 第89回アカデミー賞®を賑やかした数々のノミネート作品。作品賞を受賞した『ムーンライト』(2016年)を始め、春先から次々と話題作の公開が続いたが、大トリをつとめるかのごとく秋口に公開されたのが映画『ドリーム』だ。まるで真打登場のようだが、そう言っても過言ではない。数々の話題作の締めを括るのに相応しい作品で、非常に力強いメッセージを発信してくれる。
前述のように本作は人種差別と闘った黒人女性の奮闘劇なのだが、目で見える差別制度とともに、潜在的な差別の風土も合わせて浮き彫りにし、非暴力で静かなる知性の闘いを挑んでいる。現代のアメリカ社会にも根強く残る偏見に、真っ向から立ち向かうキャサリンたちの姿は潔く、清々しく、その凛とした姿を観て惚れ惚れするばかりだ。
そして、彼女たちの上役として登場するケビン・コスナーやキルスティン・ダンストも出色の存在。ケビン・コスナー演じるハリソンはパワフルに成果を追求し、合理的思考をもつタイプで、差別などは前時代の遺物とでも言わんばかりに意にも介さない。対してキルスティンの演じたミッチェルは、偏見の固定観念から逃れられない当時の一般的なタイプの白人女性だ。奇しくもハリウッドを代表する名優たちが、それぞれの上席役として登場し、人種差別に対するアプローチが異なる役を演じたのは好対照で面白い。
人類初の有人飛行こそソ連に譲ったが、以降アポロ計画の月面着陸を始め、スペースシャトルの投入など常に宇宙技術のトップを走ってきたアメリカ合衆国。だが、その発展を裏で支えてきた立役者にこうした人たちがいたとは…技術の開発者としての素晴らしさと、平等社会への開拓者としての逞しさに、目を見張ってしまうばかりだ。今日を耐え、明日を切り開いた雄姿は、観る者すべてに勇気と希望を与えてくれる。心から先人たちに喝采を浴びせたい、そう思える作品だ。
[ライター: 藤田 哲朗]
映画予告篇
映画作品情報
原題: Hidden Figures
脚本: アリソン・シュローダー、セオドア・メルフィ
製作: ドナ・ジグリオッティ、ピーター・チャーニン、ジェノ・トッピング、ファレル・ウィリアムス、セオドア・メルフィ
音楽: ハンス・ジマー、ファレル・ウィリアムス、ベンジャミン・ウォールフィシュ
出演: タラジ・P・ヘンソン、オクタヴィア・スペンサー、ジャネール・モネイ、ケビン・コスナー、キルスティン・ダンスト、
ジム・パーソンズ、マハーシャラ・アリ
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